Point
暗黒物質の候補の一つとして、未だ検出されていない仮想の粒子、アクシオンがある
・偏光面が回転している光の向きによって、アクシオンが異なった作用を及ぼすという理論がある
・蝶ネクタイ状のキャビティを使って両サイドから回転の向きの異なる光を通すことで、差異を検出できるとする実験法が提唱される

暗黒物質の理論は、新たな理論を掻き立てる素晴らしいものです。ただ、その正体を知るには高価な実験施設が必要だと考えられています。

感度の高いアクシオン検出器については、ナゾロジーでも以前紹介しています。しかし、今年10月に“Physical Review Letters”で発表された論文では、その風潮に逆行する、ダークマターの候補であるアクシオンを安く検出できる方法が提案されました。その方法は、「対称的に回転する光を、蝶ネクタイ状の光路に向かい合わせで通す」というものです。

暗黒物質の候補となる素粒子はいくつかありますが、アクシオンはその有力候補の一つです。この素粒子はわずかな質量を持つ可能性がありますが、現在の方法では低質量アクシオンに対する感度がとても低いため、現在は「高い質量を持つアクシオン」の検出が試みられています。しかし、未だに検出されていません。

アクシオンの検出にはいくつか方法があります。アクシオンは強い磁場において光の場を変化させることができるため、ときどき光子となります。アクシオン探索の線源としては、太陽光、宇宙線、研究室内で作られた放射源が使われますが、研究室内で作られた線源に関わる面白い説があります。東京大学などの日本の研究者によって提案されたその説は、アクシオン時計回りの光を反時計回りの光よりも遅くする効果を持つというものです。

光は電磁波であり、電磁場を波打ちながら進みますが、その波の向きは回転させることが出来ます。回転の向きは時計回りと反時計回りの2タイプ。もしアクシオンが右向きと左向きで異なる作用を及ぼすのであれば、方向の異なる光を両端から通したものの間に差が生まれるはずです。

提案されている実験では、まず鏡で蝶ネクタイ状の光路を作り、その中を対になる回転する光を両端から入射し、出てきた光を検出器で調べます。アクシオンの影響がなければ、蝶ネクタイに入射した光と出てきた光に位相の違いは生まれないはずです。もしアクシオンから何らかの影響をうければ、位相の変化として検出できるのです。この方法は、重力波の測定で使われた方法と原理的には同じものです。蝶ネクタイ状の光路で受ける雑音による影響は両方向の光で同じものとなるため、打ち消し合え、測定の精度が上がります。

この蝶ネクタイ状の光路を大きな規模で、高精度の鏡をつかって行うことができれば、その感度は驚くほど高いものとなるでしょう。

 

この実験方法でのアクシオンの検出の計画はまだありませんが、アクシオンが光の種類によって及ぼす影響に違いがあるのであれば、非常に有望な方法のように思えます。暗黒物質の謎を解くために、実験に手を挙げるところはないでしょうか…?今後の展望に期待です。

 

暗黒物質の正体といわれる「アクシオン」を検出可能な測定装置が完成

 

via: ars Technica/ translated & text by SENPAI

 

光を「蝶ネクタイ」状にひねるとダークマターが見つかる!?