NHK大河ドラマ「西郷どん」の収録が終わり、主演の俳優・鈴木亮平さんが「ダイエット宣言」をしたと報じられています。巨漢の西郷隆盛の役作りのために、体重を大幅に増やしたので、元に戻すためだそうです。

 鈴木さんは、2015年放送のTBS系ドラマ「天皇の料理番」で闘病の末に亡くなる役のために20キロ減量、その直後に映画「俺物語!!」で屈強な高校生を演じるために30キロ増量するなど、役に合わせた体重増減で知られています。

 鈴木さんをはじめ、俳優が役作りで体重を増減させることがよくありますが、身体にはどのような影響があるのでしょうか。医師の市原由美江さんに聞きました。

Q.頻繁に体重の増減を繰り返すと、体に影響はあるのでしょうか。

市原さん「頻繁に体重を増減させることには、さまざまなリスクがあります。仕事とはいえ、体重の増減を繰り返すことは、体にとってかなりの負担になっていると思われます」

Q.具体的には。

市原さん「体重の増減に重要なのはカロリーです。『消費カロリー+基礎代謝』と『摂取カロリー』のバランスで太ったり痩せたりします。

意識して体重を増やすには、摂取カロリーを増やすことになります。カロリーの高い食事は脂肪分や塩分が多いため、脂質異常症や高血圧に直結します。また、余分なカロリーは脂肪として体中に蓄積されます。内臓脂肪や皮下脂肪だけでなく、肝臓にも蓄積して脂肪肝を引き起こします。

内臓脂肪の増加は、糖尿病や高血圧、脂質異常症脳梗塞狭心症心筋梗塞などの心臓の病気のリスクを上げます。また、脂肪肝は糖尿病や肝臓がんのリスクを上げます。食事の量や頻度が増えるので、逆流性食道炎のリスクも上がります。逆流性食道炎には食道がんのリスクもあります。肥満の人は、そうでない人よりがんになりやすいことも分かっています。体重を増やすことにメリットはありません」

Q.逆に、体重を減らすのは。

市原さん「摂取カロリーを減らし、運動などで消費カロリーを増やすことになります。運動をせずに摂取カロリーだけを減らすと、確かに体重は減りますが、脂肪と一緒に筋肉も減るので基礎代謝が落ちます。すると痩せにくい体になっていきます。

また、特に糖質を制限しすぎるとケトン体という酸性の物質が体内にたまるので、頭がボーッとしたり吐き気がしたりすることがあります。さらに、偏った食生活によってビタミンやミネラル、食物繊維などが不足し、貧血や便秘、倦怠(けんたい)感など、さまざまな症状が現れる可能性があります」

Q.影響を最小限に抑えるためには、どの程度の期間をとって体重を増やす、あるいは減らせばよいのでしょうか。

市原さん「減量する場合は、月に1キロのペースで、ゆるやかに、かつ運動を並行して行うことが大切です。体重を増やすことは、そもそも体に良くないのでお勧めしません」

Q.健康的に体重を増やす方法というのはあるのでしょうか。

市原「定期的な運動、筋トレで筋肉量を増やして体重を増やすのであれば問題ありません。カロリー摂取を増やした結果、脂肪で体重を増やすことはお勧めできません」

Q.体重を減らす際に注意すべきことはありますか。

市原「前述のように、偏った食生活にならないよう、炭水化物、タンパク質、脂質、ビタミン、ミネラルなど、バランスよく食べましょう。食事だけで体重を減らすと筋肉量が減ってリバウンドしやすくなるため、運動を並行して行いましょう」

Q.鈴木亮平さんなど体重の増減を繰り返す俳優さんは、一般人とどこか違うのでしょうか。

市原さん「体重の増減を繰り返す俳優さんが、一般人と異なる点はないと思います。仕事に対するプロ意識から、体重コントロールのための厳しいトレーニングや食事のプログラムをこなしていると思います。運動や筋トレに関してはトレーナーが必要ですし、できれば健康状態をチェックする主治医がいるとより安心です」

オトナンサー編集部

鈴木亮平さん(Getty Images)