女優・新垣結衣と脚本家・野木亜紀子タッグが話題の『獣になれない私たち』(日本テレビ系/毎週水曜22時)。各キャラクターたちのこじれた恋模様や謎が謎を呼ぶストーリー展開も気になるが、何気ない描写にも脚本家・野木の視点や社会分析が盛り込まれていて見逃せない。

【写真】“路チュー”を発端に伊藤沙莉がヒートアップ! 『獣になれない私たち』第6話フォトギャラリー

 第6話。晶(新垣)と恒星(松田龍平)のキスを見ても動じない呉羽(菊地凛子)は2人を夫・橘カイジのパーティーに誘うが恒星は晶との約束を理由にそれを断る。そんな中、京谷(田中圭)が働く樫村地所のECサイトを、晶が務める会社が制作することに。晶は樫村地所との親睦会の席で、恒星との路上キスを目撃していた京谷と再会することに…。

 親睦会の席で酔っ払った京谷の後輩・筧(吉村界人)は“人目につくところでキスするカップルの気持ちがわからない”と切り出すと、やさぐれた雰囲気で「どんな事情で路チューすんだよ! しなきゃいけない事情ないでしょ!?」と憤慨。さらに呆れた様子の筧が「いるんだよなぁ〜そういうの喜ぶ女」と言い捨てると、彼の目の前にいた松任谷(伊藤沙莉)は、冷めきった表情で「ねぇ、それなんで女の問題になってんの?」と返す。そんな彼女は諭すように筧に「キスは2人でするもんでしょう?」と語りかける。そしてヒートアップした彼女が「だいたいさぁ! どうして女の浮気はダラしないとか言われて、男の浮気は甲斐性みたいに言われんの!」と言い放つと、隣にいた晶は口論を止めるどころか思わず「ある…それある」と納得する。

 ドラマの中では軽快なBGMも相まってコミカルなシーンとして描かれているものの、松任谷が口にした“キスは2人でするもの”という言葉や“社会では、女の浮気=ダラしない、男の浮気=甲斐性”と捉えられるという指摘は、男性と女性の非対称な関係性を軽妙な会話で見事にあぶり出している。

 これまでも晶の仕事ぶりを通じて、ブラック企業問題やパワハラについても視聴者に問題提起をしてきた本作。ヒロインの恋の行方も気になるが、気鋭の脚本家・野木が社会をどのように見つめているのかにも注目して見続けたい。(文:スズキヒロシ

『獣になれない私たち』に出演する新垣結衣 クランクイン!