討論会「人はどのようにして死刑囚とされ、解放されるのか?」が10月30日東京都内で開かれた。元死刑囚で、冤罪の被害者でもある台湾の徐自強さんが来日し、「明日があるかわからない、とてもつらい毎日だった」と自らの経験を語った。

討論会には、死刑や冤罪をテーマにしたドキュメンタリー映画を手がける映画監督・金聖雄さんや、田鎖麻衣子弁護士(日弁連「死刑廃止及び関連する刑罰制度改革実現本部」委員)も出席し、冤罪と死刑をめぐり議論をかわした。

●7回の死刑判決、「無罪」が確定するまで21年

徐さんは、友人のうその証言によって、誘拐殺人の犯人に仕立て上げられた。死刑囚として16年間、3畳にもみたない監獄で過ごし、希望を失いかけていたという。

「だれを信じてよいのかわかりませんでした。裁判官も私を信じてくれず、司法に対してあきらめかけていた」と徐さんは当時をふりかえる。

しかし、徐さんの母はあきらめることなく、無実を信じつづけた。支援者も集まり、徐さんは「おかげで、もちこたえられました。人間を信じられるようになった」と話す。そして、「冤罪事件の背後には、家族の苦労があることを知ってほしい」と強く語った。

徐さんは、7回の死刑判決と9回の裁判を受け、「無罪」が確定するまで21年かかった。「判決をくだすのは人間です。でも、人間はまちがえる可能性があります。死刑になれば、とりかえしがつかない」と徐さんは死刑制度を批判した。

●冤罪は「永遠の課題」

駐日フランス大使のローラン・ピックさんは、開会の挨拶で「犠牲者、遺族、世論のいたみもわかります。しかし、死刑を正当化することはできません。人間が運用している以上、まちがいは起こりうる」と死刑制度に反対した。

金さんは、「どんなに悪いことをしたとしても、『人を殺す』ということを正当化していいのか」と疑問を投げかけた。また、田鎖弁護士は、「冤罪の可能性をゼロにすることはできない。冤罪は永遠の課題」と指摘した。

東京都新宿区の「アンスティチュ・フランセ東京」に集まった来場者は、100人を超えた。討論会が始まる10分前には満席となり、入場できない人もいた。

(弁護士ドットコムニュース)

獄中16年、台湾の元死刑囚「人間は間違える」 冤罪被害の過去生々しく、死刑討論会