ベネズエラに1-1ドロー、森保新体制4連勝ならず

 日本代表は16日、国際親善試合でベネズエラ代表と対戦し、1-1と引き分けた。前半39分にセットプレーからDF酒井宏樹マルセイユ)が先制点を奪うも後半36分にPKを決められ、史上初の新体制4連勝とはならなかった。

 この試合を、かつてアジアサッカー連盟の機関紙「フットボール・アジア」の編集長やPAスポーツ通信のアジア支局長を務め、ワールドカップを6大会連続で取材した英国人記者マイケル・チャーチ氏はどのように見たのだろうか。

  ◇   ◇   ◇

 金曜日の夜、試合終了間際にトマス・リンコンにPKを決められたが、それでも森保一監督が楽観的でいられる理由がある。

 ウルグアイ戦のようなミスがいくつか表面化したものの、活気に満ち溢れたパフォーマンスと攻撃陣のカルテットの相互理解が順調に深まっていることは、森保監督を大いに満足させていることだろう。森保監督はアジアカップ開幕に向け、現時点で大迫勇也ブレーメン)、中島翔哉ポルティモネンセ)、堂安律フローニンゲン)、南野拓実ザルツブルク)がファイナルサードの有力なオプションとなることを明確化させた。

 チームの変更は非常にシームレスだった。新体制の下、これまでの日本代表を牽引してきた本田圭佑メルボルン・ビクトリー)や香川真司ドルトムント)、乾貴士(ベティス)、岡崎慎司レスター)らは過去の存在として引導を渡されている格好となっている。未来は、ベネズエラ戦でも先発したエキサイティングなカルテットに懸かっている。

 この攻撃陣のなかで、ロシアワールドカップ(W杯)決勝トーナメント1回戦のベルギー戦(2-3)を経験したのは大迫だけだ。その試合で先発し1得点を決めた原口元気ハノーファー)は序列を落とすことになったが、パフォーマンスが乏しくなっているわけではない。


堂安&中島の迫力、冨安の成長にも称賛

 堂安は主戦場となっている右サイドだけでなく左へのシフトも可能で、日本に高い柔軟性をもたらしている。大迫の強靭さと判断力は他の選手をコントロールすることができ、その舵取りへの信頼は厚い。また、中島はドリブルとカットインからの右足の一撃により、オン・ザ・ボールで刺激的なものを生み出すことができる。南野の狭いスペースでの精密なコントロールは周りの選手にチャンスをもたらす。遠藤航シント=トロイデン)と柴崎岳(ヘタフェ)の巧みなサポートを受け、日本は再び攻勢に出ることができた。

 しかし、この試合では長友佑都ガラタサライ)の不在を猛烈に痛感することになった。佐々木翔(サンフレッチェ広島)には、ベテランDFが備えている無尽蔵なハードワークが欠けており、2011年に日本がアジアカップ優勝を成し遂げた時の左サイドバックの攻撃参加という武器が損なわれてしまっていた。佐々木はベネズエラ戦で、左サイドバックの主力ではなく、サブの立場であることを示してしまった。

 冨安健洋シント=トロイデン)はセンターバック(CB)として成長していく姿勢を強調し、若さに反して試合を読むペースと能力を備えている。足の速さと素早い反応、さらにゴールライン際で見せたクリアはスコアレスを保った試合序盤のハイライトシーンであり、チームへの貢献度は高かった。パートナーの吉田麻也サウサンプトン)が狡猾さと経験値を提供しているが、このままいくとW杯でレギュラーだった昌子源鹿島アントラーズ)は、CBのポジションを取り戻すことが難しくなるかもしれない。


日本の課題も浮き彫り「より良いチームが相手だった場合…」

 一方、自陣では日本の守備陣が中盤でのボールロストによって不必要なプレッシャーを受けることになり、特に前半30分の場面のように、危険なエリアで安易にFKを与えすぎていた。A代表デビューのGKシュミット・ダニエル(ベガルタ仙台)はそれらの危険を回避すべく高さを買われたが、より良いチームが対戦相手だった場合、もっと大きな問題が起こっていただろう。

 酒井のパフォーマンスと素晴らしいゴールは、ベネズエラへのPK献上で台無しとなった。酒井と日本の双方にとって、強いインパクトをかき消す残念な終わり方になってしまった。


マイケル・チャーチ/Michael Church)

森保体制発足後3連勝中で臨んだベネズエラ戦だったが、試合終盤に同点に追いつかれ史上初の4連勝とはならなかった【写真:Getty Images】