米中間選挙で生まれたねじれ議会が、金融危機の引き金になるのか?これまでどおりにいかなくなったトランプ政権のもと、為替にどんな影響がありそうかを解説します。(『高梨彰『しん・古今東西』高梨彰)
※本記事は有料メルマガ『高梨彰『しん・古今東西』』2018年11月15日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。
日本証券アナリスト協会検定会員。埼玉県立浦和高校・慶応義塾大学経済学部卒業。証券・銀行にて、米国債をはじめ債券・為替トレーディングに従事。投資顧問会社では、ファンドマネージャーとして外債を中心に年金・投信運用を担当。現在は大手銀行グループにて、チーフストラテジスト、ALMにおける経済・金融市場見通し並びに運用戦略立案を担当。講演・セミナー講師多数。
米下院、金融危機の引き金となりえる存在に
ねじれ議会が円の市場金利の低下要因にも作用
米下院にて野党民主党が多数を占めたことにより、下院金融委員会の委員長も民主党から選出される運びです。このため、トランプ政権が求めた金融規制緩和の動きも止まりそうです。そして、円の市場金利にも低下要因として作用しそうです。
民主党、というかオバマ政権時代の金融行政といえば「脱リーマン」でした。金融機関がおカネの貸し借りを拡大してリスク取り放題、損したときもドッカン、そんな動きを防ぐ規制が作られました。
ドッド・フランク法はその筆頭です。端的に言えば、「ドルの貸し借り、やりっ放しはダメ」です。銀行はドルの貸出を渋ります。特に海外に対してのドル貸しには高いコスト、金利が掛かります。
この影響で、日本も含む海外からドルを借りるコストが上昇しました。反対に米ドルを持っている人々はこのコストを手数料収入として、安いコスト(というかおカネを貰って)円を借りることが可能です。
所謂マイナス金利での円調達です。ただマイナス金利で円を借りても放置するわけにはいかないので、何か買います。代表は日本国債です。
ドル貸し・円借りにより得た手数料収入の範囲内で済めば国債利回りはマイナスでも問題ありません。大切なのは「何か買う」「資産として持つ」ことですから。
これにより、日本国債、特に短期債や中期債には利回り低下圧力が強まります。
ドル借入の難しさは着実に上昇していく
日銀の金融研究所からはマイナス金利に批判的な論文が出てきているようですが、日銀がマイナス金利をゼロに戻したところで、米ドルを借りるときのコストが高いままだと、結局市場金利はマイナスのままです。
スポットの為替レートに劇的な変化をもたらすことはないでしょうけど、ドル金利自体がFedの利上げにより上昇している中で、ドル借り入れの難しさは着実に上昇します。
日本国債利回り低下の裏側で、せっかく割安感の出て来た米ドル建て社債や新興国債には再び試練です。民主党がどこまで金融規制に力を入れるか分かりませんが、リキが入るほど、信用度の低い企業や新興国には重石となります。
もし、金融不安が顕在化するとすれば、この辺りが候補の上位に来るのではないでしょうか。
<今回のまとめ>
・米下院、民主党が多数を占め、金融委員長も民主党、規制緩和にブレーキ
・円の市場金利には低下圧力も
・ドル借り入れが益々大変になり、金融危機の呼び水にも
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2018年7月配信分
・「曖昧過ぎる」日銀(7/31)
・「お客様は神様です」という弱点(7/30)
・第三の矢「ガイアツ」(7/27)
・FANGに振り回されるだけ(7/26)
・朝三暮四(7/25)
・「金利上げちゃダメ」により金利上昇(7/24)
・「黒田タンカー」(7/23)
・政治の緊張感欠如が生む酷い相場(7/20)
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・貿易戦争でも利上げは続く(7/18)
・錯覚してしまいます(7/17)
・米国、服はお安く(7/13)
・「識者」と市場のズレ(7/12)
・過熱感とトランプ(7/11)
・買戻し一巡のサイン(7/10)
・自律反発でしょうか(7/9)
・原油高懸念が各方面から(7/6)
・「売れる投信は、売りやすいから」(7/5)
・6日までは我慢でしょうか(7/4)
・損切りを遅らせるだけ、日銀の株ETF買い(7/3)
・短観、慎重なのも仕方ないけど(7/2)
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2018年6月配信分
・もう梅雨明け(6/29)
・コスト転嫁の可否と国のB/S(6/28)
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・あみんじゃないのよハーレーは(6/26)
・日銀審議委員さま、銀行員研修を勧めます(6/25)
・心理悪化よりカネ余り(6/22)
・NYダウに制裁?(6/21)
・銀行強盗と仮想通貨のハッキング(6/20)
・想定通りのシナリオ、想定外の値動き(6/19)
・時間切れ、かも(6/18)
・ECB、市場に「僕は嫌だ」とは言わせない(6/15)
・Fedとドルと30年債(6/14)
・解像度の進歩に驚く米朝首脳会談(6/13)
・米朝首脳会談、何に期待しますか(6/12)
・何処でも元気にツイートです(6/11)
・投資家、債券知るべし(6/8)
・「骨太の方針」と国債(6/7)
・相場も梅雨入り(6/6)
・いつになったら海外投資家は(6/5)
・トランプ好みのデータと市場(6/4)
・豊洲の画像と売り仕掛け(6/1)
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2018年5月配信分
・芸能人とIT企業社長のゴシップと市場(5/31)
・100万円の2年定期、いきなり「97万円でーす」(5/30)
・歴史は長めに(5/29)
・新興国、インフレ・財政・政治の安定(5/28)
・「金妻」と『バブルへGO』(5/25)
・関学QBに#metoo(5/24)
・ビットコインとポテト(5/23)
・株の参考に2組の金利(5/22)
・人民日報英語版の勧め(5/21)
・「マルキュー」、どう発音しますか(5/18)
・同じ相場でも異なる表現(5/17)
・GDP、どうやって好景気を実感しろと(5/16)
・地政学リスクが株価を支える(5/15)
・北朝鮮の潜在的な力って…(5/14)
・久しぶりの(5/11)
・安倍さん三選、株買いですか(5/10)
・ヘッジファンド盛り返し(5/9)
・ガソリンスタンドの看板を気にする(5/8)
・誤解に対する誤解(5/7)
・米製造業に陰り(5/2)
・瀬戸内捕物帳に思う(5/1)
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2018年4月配信分
・求む「嘘のプロ」(4/27)
・新入社員の傾向今昔(4/26)
・「鉄人」不在(4/25)
・ドル買戻し「もういっかい」(4/24)
・ムーンウォークな動き(4/23)
・CPIで「営業トーク」(4/20)
・原油は買われ、逆イールドが視野に(4/19)
・バーバラさんからの贈り物(4/18)
・マラソンも政治経済も市場も(4/17)
・等加速度運動に置いてけぼり(4/16)
・ロシアにケチ付け、ロシアを利する(4/13)
・チョッピーな動きに評価損増えやすく(4/12)
・政治の停滞が市場価格に反映されつつ(4/11)
・習近平に見せつけられる(4/10)
・目先の値動き、大人しくなるのでは(4/9)
・トランプと半沢直樹との違い(4/6)
・報復関税と豚さん(4/5)
・強で売って甘で買う(4/4)
・株安と支持率上昇(4/3)
・インバウンド需要も一極集中(4/2)
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2018年3月配信分
・転換点は来月半ば以降でしょうか(3/30)
・スローパンクチャーな昨日今日(3/29)
・検索しても日本が出てきません(3/28)
・証人喚問、警戒すべきは…(3/27)
・アフリカンシンフォニーも良いけれど(3/26)
・「理論値」には大らかに(3/23)
・FOMCへの複雑な反応(3/22)
・金利、3つの要素(3/20)
・1,000兆円の根雪(3/19)
・アベさんのいない世界(3/16)
・財務省の強かな管理、なのに…(3/15)
・クビ差アタマ差、爪噛む相場(3/14)
・扱いが小さい日本(3/13)
・森友問題とアベノミクスの因果関係(3/12)
・アベクロよりアバクロ(3/9)
・処分売り、峠を越したのでは(3/8)
・ニュースよりチャート(3/7)
・切らされるばかり(3/6)
・円高エイリアン(3/5)
・決算対策の季節(3/2)
・黒田総裁のやる気度(3/1)
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【関連】日本は消費増税もキャッシュレス化も失敗する? 韓国「年間30万円還附」を模倣せよ=岩田昭男
【関連】世界で加速する米国離れと多極化、その中心は日本~日中韓ロの一大貿易圏が生まれる=高島康司
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『高梨彰『しん・古今東西』』(2018年11月15日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による
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