寒い季節は、ホカホカの「肉まん」を食べたくなるものだ。コンビニやスーパーなど、さまざまなお店で気軽に購入できるが、その中身は、豚肉をはじめ、玉ねぎ長ネギタケノコシイタケなどが定番。しかし「豚まん」は異なるのだろうか。加えて、よく添えられている「カラシ」を付けて食べるべきなのだろうか。「肉まんと豚まんは何が違うんですか?」 や、「豚まん(肉まん)にカラシって当たり前ですよね?!」などと「教えて!goo」にも質問が寄せられていた。今回は、それらの謎を紐解くべく、長年、肉まんを販売している老舗、新宿中村屋に問い合わせてみた


肉まんの歴史

まず、肉まん豚まんの違いについて聞いてみた。

「呼び名の違いであり地域性があるようです。主に、関東では『肉まん』、関西で肉といえば『牛肉』のイメージが強い地域もあるため、『豚まん』と呼ばれることが多いようです」(新宿中村屋

中身も味付けも違いのない両者は、地域によって呼び名が異なるだけのようだ。歴史についても伺ってみた。

肉まんの起源は諸説ありますが、中国の三国時代(西暦220年頃)、名将 諸葛孔明が作らせたことで知られています。孔明は南蛮征伐の帰途、川を渡ろうとしましたが、風雨のため川が氾濫し渡れません。当時、風雨を鎮めるためには、『人頭を水神に捧げ祀るという信仰に従わなければならない』とされていたのですが、戦いで失われた人命をこれ以上犠牲にすることが出来なかった孔明は、小麦粉を水で練って作った皮に羊と牛の肉を包み、人頭に似せた饅頭を作りました。これを水中に投じたところ、見事に風雨が静まったそうで、この饅頭が肉まんの始まりとされています」(新宿中村屋

なんともドラマチックな発祥だ。孔明は人命を救った上、肉まんの発明まで行ったことになる。では、新宿中村屋で取り扱うようになるまでは、どのような経緯があったのだろう。

「創業者の相馬愛蔵・黒光(こっこう)夫妻が中国へ旅行に行き、『包子(パオズ)』に出合ったことがきっかけです。その時の包子は中国人向けの味付けで、夫妻にとっては油っぽく、美味しいと感じなかったようです。ですが、『日本人好みのあっさりとした味付けにすれば売れる』と確信した愛蔵は、帰国後、開発に取りかかり、昭和2年天下一品 支那饅頭』という名称で発売に至りました」(新宿中村屋

当時は、1個6銭で販売されていたそう。90年以上もの間、改良を重ね販売し続けられてきた、新宿中村屋肉まんの長い歴史に驚かされる。

カラシは付けるもの?

よく添えられている「カラシ」は、付けた方がより美味しいのだろうか。

「関西以外では何も付けずに食べる人が多いようです。弊社の肉まんも、そのままの味を楽しんで頂きたいです」(新宿中村屋

更に地域問わず、醤油やポン酢を付ける人もいるらしく、プラスアルファの味付けはお好みで……ということだろう。では、「そのまま食べて欲しい」という新宿中村屋ならではの肉まんの特徴はどのようなところだろうか。

百貨店などに入っている直売店で販売している『天成肉饅』は、国産のSPF豚肉や野菜(筍、しいたけ長ネギ)の素材感を味わって頂くため、具材は大きめにカットし、弾力のある生地で包んでいます。素材の風味を最大限感じて頂けるよう、鍋で蒸して召し上がって頂くことをお勧めしています。スーパーで販売している肉まんは、豚肉や野菜をバランスよく使用し、食べやすい大きさ、味付けの具材をふんわりとした生地で包んでいます。電子レンジで温めて、お手軽に召し上がって頂けます」(新宿中村屋

SPF豚とは、特定の病原体を持っていない、病気になりにくい豚のこと。新宿中村屋のラインナップはもちろん、その他の肉まん豚まん)も、具材や味付けなどにそれぞれの特徴やこだわりがあるはず。食べ比べてみたり、カラシ以外の調味料でアレンジするのも、新しい発見があってよいかもしれない。

●専門家プロフィール:株式会社 中村屋
1901年、本郷の東京大学正門前にパン屋として創業。その後、新宿に移転し、和洋菓子の製造・販売やレストラン開設など事業を拡大。爾来百有余年にわたり、お客様に豊かな生活をご提供すべく、多くの商品や料理を世に送り出している。

教えて!goo スタッフ(Oshiete Staff)

「肉まん」と「豚まん」の違いとは?