演出・脚本:福田雄一日本テレビ系「今日から俺は!!」日曜22:30〜)日曜22:30〜)第5話。原作

90年台初頭のツッパリという軸は変わらないが、毎話のように話のテイストが変わる。ストレートなヤンキー物、恋愛者、そして第5話はまるでパニックムービーのツッパリ版みたいだった。

遊び半分の中村倫也
原宿で買い物をしていた佐川(柾木玲弥)は、東京の不良・ユタカ(平埜生成)から田舎者刈りにあってしまう。そこで言い残した「お前なんか三橋さんと伊藤(伊藤健太郎)さんに殺されるぞ」という言葉から、東京のヤンキー紅野(中村倫也)、ゴロー(池田純矢)、岩田(そいつどいつ・市川刺身)は、千葉遠征を行うことに。

この東京ヤンキーは、スタンスがちょっと目新しい。三橋・伊藤が高校デビューヤンキー、千葉最凶開久高校の智司(鈴木伸之)・相良(磯村勇斗)らがガチヤンキーなら、紅野らは遊び半分ヤンキー。意地も矜持もなく、ただただ楽しいからケンカを行う。適度なスリルを求めるだけで、紅野は「ケンカはレジャー」と言い切っている。

戦い方も今までのキャラと違うから面白い。三橋は軽やかな動きと卑怯と言われる奇襲、伊藤が身体能力と根性、今井が馬鹿力と耐久力、理子(清野菜名)が合気道、それぞれ自分の戦い方を持っているのだが、紅野らの武器はコンビネーションだ。

決まった形のフォーメーションで相手を追い詰めるのだが、それは洗練された動きというには少し雑で、どちらかというと“慣れ”という言葉のほうがしっくりくる。「練習はしてないけど、いつもやっていることなんです」と言わんばかりに、ヘラヘラしながら人を蹴っていた。

同じヘラヘラでも、開久の相良はヘラヘラに狂気を滲ませていたが、紅野らはまた別のヘラヘラ。ただケンカを楽しみ、本当にレジャー施設のいるかのようにキャッキャとはしゃぐ。相手を心底見下す姿は、悪党というよりは“嫌な奴”だ。プライドや信念が無いぶん、やられる側の悔しさは倍増だ。今井をボコるとき、ポリバケツを被せてホウキでペチペチ叩いていたが、あれは勝つための最善の方法ではなく、楽しむための最善の方法にしか見えなかった。

仲間が一人また一人と減っていく
そんな紅野らを倒すために主人公である三橋・伊藤、さらには舐められてしまった開久軍団は奮闘する。だが、視点は倒されるべき紅野らがやや多め。ことの発端となったユタカが、紅野らのあまりにも卑怯なやり方についていけなくなり、最低限の男気を見せるなど、ストーリー展開の中心が紅野側に寄っていく。

仲違いを起こし、伊藤にタイマンを申し込んだユタカ。不意に開久に捕まってしまったゴロー。「東京に帰ればいい」という気楽なスタンスだったにもかかわらず、紅野の仲間たちは一人また一人と減っていく。街中どこにでも現れる大量の開久ツッパリ集団から追われる紅野らの姿は、パニックムービーさながらだ。千葉という魔境から、ツッパリというゾンビから、なんとかして逃げ帰らなければならない。

どんなピンチでも、レジャー気分の紅野だったが……
しかし、追いかけられる紅野は、「とうとうクライマックスだねぇ〜岩田ちゃ〜ん!」となんだか嬉しそう。岩田も「こりゃ逃げられないっしょ〜!」とどこか軽い。ボッコボコにされたゴローも、血だらけの癖にひょうひょうとしていた。必然のピンチを自ら招き、それをギリギリで切り抜ける。切り抜けられなかったらそれはそれ。紅野らにとってケンカは、どこまで行ってもレジャーだった。

ゴローを裏切ることで、なんとか千葉からの脱出に成功した紅野。もうただ追いかけてくるだけのゾンビ共はいない。紅野にとってのレジャーは終わり、本来の秀才高校生生活に戻る。

しかし、脳を使えない開久は振り切れても、魔境の大ボスである三橋は違った。紅野を上回る知略で高校までこぎつけ、紅野を社会的に抹殺しようと画策する。千葉でのピンチをスリルと表現して楽しんでいた紅野だったが、東京でのピンチにはあっさりと狼狽する姿を見せていた。

(沢野奈津夫)

今日から俺は!!
日曜:22:30〜23:25(55分) 日テレ系
キャスト:賀来賢人伊藤健太郎清野菜名橋本環奈、太賀、矢本悠馬、鈴木伸之、ムロツヨシなど
脚本:福田雄一
演出:福田雄一、鈴木勇馬
主題歌:今日俺バンド「男の勲章」