アナログな業界に残るFAX注文を減らして受注業務効率化
ヘアケア製品の総合メーカーであるビューティーエクスペリエンスは、サロンで利用されるプロ向け製品の提供を主力事業とするモルトベーネが、1975年の創業から40周年を迎えた2015年に社名変更して誕生した企業だ。

現在サロン向けにパーマ剤やヘアカラー剤、シャンプー、トリートメント等を展開。一般向けにも、ドラッグストア等で購入できる製品のほか、ECでの販売も充実させている。11月には女性美容師とともに開発した、大人の女性に向けた新ブランド「mm(ミリ)」をスタートさせるなど、ニーズに対応した新製品開発にも注力している。

同社では、残業削減や業務効率化を目指し、業務改革を開始した。取り組んだのは、経費精算システムの刷新などだ。この取り組みは、マネーフォワード主催の「クラウドサービスワード2018」において、「日経FinTech賞」を受賞している。

「社名変更に伴って組織変更なども行いました。これを機会に業務改革をしたいと考えたのです。美容業界というのはアナログなところが多く、取引先からの発注も、相手によっては未だに手書き書類のFAXを受け取って、システムに入力しているような状態でした。これをEDI対応してもらうことで効率化を目指しました」とビューティーエクスペリエンス 業務システム部 部長である石川亮氏は、働き方改革へのきっかけを語る。

同社は、元々代理店との間にEDIを整備しており、すでに7割は対応済であったが、残り3割は、古くからの取引先が多く、IT対応が遅れていた。

「小規模なところだとPC自体使っていないところもあります。われわれとしては費用対効果の大きさなどを訴えて、改めてお願いしました」(石川氏)

結果として、2018年10月時点ではある程度の代理店が対応し、FAX注文を1割以下に減らすことができたという。これにより、受注業務に関しては入力件数の削減、注文時の確認のための問い合わせ等が削減され、効率化が進められた。
○経費精算業務効率化のため「MFクラウド経費」で電子帳簿保存法に対応予定

業務改革で大きな効果を得たのは、経費精算システム刷新だ。同社は商品の販売自体は代理店を通して行っているものの、サロンへの製品紹介やデモンストレーションを直接行うことも多いという。拠点は全国7カ所にあり、営業担当者約60名は、遠隔地をまわる関係上、数日間外出したままになることもあるという。

「従来は経費の入力自体は外出先からでも可能でしたが、領収書は台紙に貼り付けて提出することになっているため、オフィスパソコンで作業をしている人が大半でした。自動車移動が多いため経費精算のためにオフィスへ向かう移動時間が、週あたり2.5時間ほど必要で、その残業時間も問題になっていました」(石川氏)

営業拠点で作成された書類は、月に3度の締め日に合わせて本部へ送られる。本部ではそれをバインダーにまとめて保管していたが、ボリュームが多いため毎月3冊のバインダーが増える状態にあったという。

この状態を改善するためには、実物の領収書を送付する処理自体を改めなければならない。そこで同社では、電子帳簿保存法(電帳法)への対応を決めた。電帳法に対応すれば、現場は手持ちのスマートフォンで領収書を撮影して送付することで経費清算を完了でき、オフィスへの移動は不要になる。

実現にあたっては、従来のNotesを利用したシステムから電子帳簿保存法に対応できるクラウド経費清算システムへの乗り換えが行われた。

「経費精算システムは、10製品くらいを候補に比較しました。サポート面を考えるとメジャーな製品がいいだろうということと、コスト面を考えて4つ程度に絞り、具体的な機能比較表を作成したほか、ユーザーの意見も聞きました」(石川氏)

また、経理部門と情報システム部門では外部システムとの連携機能やユーザーにとってのUIも重視した。選択されたのはマネーフォワードの「MFクラウド経費」だ。

2018年5月の新システム導入時には、NTTデータイントラマート「Accel-Mart」のAPI活用で既存システムと連携させることで、営業現場での入力簡便化に加えて、経理部門での後処理も効率化。最終的な確認作業等は人の手で行っているものの、工数は大きく削減できたという。

●事前教育と外部連携活用で残業時間21%減を実現
残業が多かった営業部門でも、21%の残業時間減を実現するに至った経費精算システムの刷新だが、導入にあたって社員教育にも注力した。

「基本的に拠点を訪問して直接教育を行いました。特に電帳法に対応するために、3日以内の領収書撮影だけは行うようにお願いしました。まとめて処理している人が多いのですが、申請は後でも構わないから領収書の撮影だけはすぐにして欲しいと伝えました。今ではほとんどパソコンは利用していないと聞いています。特にETCの履歴を直接取得できる連携機能は大きな効果が出ていると感じています。これまではプリントしたものを出力していたので、手間はかなり少なくなりました。一方、交通系ICカードの連携機能は、1日の移動が多すぎて自動取得できる件数を超えてしまうことが多く、あまり使われていないようです。こちらは画面上に移動経路を入力するだけで金額が出るようになったので、そちらが便利だと聞いています」(石川氏)

経費申請のための移動時間削減はもちろん、こうした入力支援機能のおかげで作業時間自体も半減したことが、残業時間削減に大きな効果をもたらしたと言えるだろう。

結果として、マネーフォワード主催の「クラウドサービスワード2018」において、日経FinTech賞を受賞するに至った。

○在宅勤務の試験導入も実施

ビューティーエクスペリエンスでは、これに加えて2018年7月から試験的に在宅勤務制度も取り入れた。対象は全社員で、申請により、週に一定日数を在宅勤務できるようにする制度だ。

「今のところは試験的に5人が利用しています。パッケージや販促物などのデザインを行う部門から3名、マーケティングと研究の部門から1名ずつです。在宅でも成果に変化がないということで、デザイン部門は利用しやすいと思います」と石川氏は語る。

月45時間までの残業を基本報酬に含んでいることもあり、特に在宅での働きぶりを評価することへの難しさなどは感じることなく新たな一歩を踏み出せたようだ。

そして、同社は今後取り組みとして、営業部門の改革に目を向けているようだ。

「ちょうど2018年10月から新しい中期経営計画の3年間が始まりました。これからは営業活動におけるデジタル化によるサポートに力を入れたいということで、顧客データベースを活用した営業活動などを考えています。すでにSalesforceは利用しているのですが、そのデータをさらに活用したいですね」と石川氏は語る。

代理店を通しているビジネスであるため、既存ユーザーであるサロンでも他社製品と併用しているのか、どのような使い分けがされているのかなどは見えづらいという。業務改善と顧客データベースの活用により、そうした部分を把握したり、サロンへの提案を行ったりといった展開を目指していくという。
エースラッシュ

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