コンデジだからこそ実現できた「月まで届く」f=3000mm相当ズーム!!

【詳細】他の写真はこちら

2010年に発売された光学26倍ズーム機『COOLPIX P100』の流れを組む、ニコン製ウルトラズームカメラの最新鋭機。3年前に発売された『COOLPIX P900』(光学83倍ズーム)を大きく越える、光学125ズームを実現した。もちろん、単なる一芸カメラではなく、本格的なマニュアル撮影対応(RAW記録にも対応)や、高速AFなど、撮影機能も水準以上となっている。

ニコン
COOLPIX
実勢価格:13万7700円

【SPEC】
サイズ:W146.3×H118.8×D181.3mm
本体重量:1415g
撮像素子:1/2.3型原色CMOS
有効画素数:1605万画素
ズームレンズ:光学125倍(f=24~3000mm相当)
レンズ明るさ:F2.8-8
EVF:0.39型有機EL(236万ドット)
モニタ:3.2型バリアングル液晶(92万ドット)
動画撮影機能:4K/30p
連続撮影枚数:約250枚

Front
Rear
Top
Bottom
Left
Right

使いこなしが難しいものの、その圧倒的なズーム力は唯一無二!!

では、さっそくその自慢のズーム性能を試してみよう。『COOLPIX P1000』のズーム性能(焦点距離)は35mmフィルム換算値でf=24〜3000mmに相当する。その圧倒的なズーム力は作例で一目でご理解いただけるはず。他社製ウルトラズーム機はもちろん、プロ機材でもここまでの望遠撮影はできない。遠く離れた被写体を撮影するという点において、これほど頼りになる製品は存在しないだろう。

ただし、もちろん全く弱点がないわけではない。まず、とにかくデカい。本体サイズ、重量とも、一眼レフとなっており、持ち歩きにはかなり骨が折れた。

また、いかに高度な手振れ補正機構を内蔵しているとは言え、超高倍率ズーム時には手ぶれを吸収しきれない。手持ちでまともにフレーミングできるのはせいぜい光学30〜40倍ズームと言ったところだろう(それでも充分すごいのだが……)。

さらに光学125倍まで引き上げると、三脚に載せていてもぶれる。もちろん、この辺りはニコンも承知していて、あの手この手で問題を低減。シーン・被写体に応じて適切な手ぶれ補正モード(全4種)を選択できたり、レンズ側面に配置された「クイックバックズームボタン」で、見失った被写体を探しやすくするなどといった工夫が施されている。

ほか、肉眼でズームの中心点を確認しながらフレーミングできるドットサイトも別売で提供。それらを駆使してもなお、光学125ズーム撮影は高難度なのだが、文字通り「このカメラにしか撮れない世界がある」ので、挑戦する価値はあるだろう。もちろん動画は4K/30p対応。最大29分という制限はつくものの、そのズーム力を動画撮影にも使うことができる。

なお、本機は望遠モンスターでありつつ、広角側もf=24mmからと広め。マクロ撮影も最短1cmまで近付くことができるので、これ一台で多彩な被写体に対応可能だ。自動車移動がメインなら、旅デジカメとしてもおすすめできる。もちろん、子供の運動会や発表会など、客席から我が子を大きく撮影したいという場合にも活躍。最後方から撮影しても、余裕で表情をアップで撮影できる。

恐るべき史上最高の光学125ズームレンズ搭載!!
自慢の超高倍率ズームで、どれほど被写体に寄れるかを試してみた(f=2000mm相当は先代モデル『COOLPIX P900』の上限)。f=3000mm相当というスペックがどれほど驚異的なものかが分かっていただけるただろうか?さらにデジタルズームを併用することで、f=12000mm相当にまで寄ることもできるが画質は大きく劣化する。
×1 f=24mm相当
×83 f=2000mm相当
×125 f=3000mm相当
×500 f=12000mm相当(デジタルズーム

角速度センサーと画像情報を元に手ぶれを検知し、補正する「デュアル検知光学VR」を搭載。大きな揺れを効果的に補正する「ACTIVEモード」や、構図ずれを防ぐ「構図優先モード」を選択できる。
レンズ側面には「サイドズームレバー」と「クイックバックズームボタン」を配置。後者は押している間だけズーム倍率が下がり、広い画角で被写体を追うことができるというもの(ボタンを放すと元のズーム倍率に戻る)。
驚異のウルトラズームの代償として、本体サイズはかなり重く(約1415g)、大きい。最大望遠時の全長は約310mm。重心もかなり前がかりになるため、三脚はミドルクラス以上の一眼レフ向けのものを使うようにしてほしい。

一眼レフライクな利用感も撮る気持ちを高めてくれる
一眼レフ並みの本体サイズ・重量ながら、しっかり指の掛かる大きめグリップのおかげで、持ちにくさを感じることはなかった。ただし、長時間の携行はやはり負担が大きいため、太目のストラップあるいは、収納可能なカメラバッグを用意するべきだろう。
レンズ鏡筒に「コントロールリング」を配置。MF時のピント合わせに使えるほか、AF時は、露出補正やISO感度、ホワイトバランスの中から、あらかじめ割り当てておいた設定を、スムーズに変更できる。
グリップした時、親指のかかる位置に、操作ボタンを集中。「モードダイヤル」(左上)、「コマンドダイヤル」(中央)、「フォーカスモードセレクター」(中央左)をサッと切り替えられた。

このカメラでしか撮れない世界がある
ウルトラズームが売りの本機だが、何も無理にf=3000mm相当で撮る必要はない。さまざまな被写体を撮影した印象では、f=1000〜1500mm相当前後が、最もキレの良い写真を撮れた。このくらいのズーム倍率なら手持ち撮影でも手ぶれなく撮れるので、フットワークも軽くなる。

最大広角時(写真上)では、視認できないほど小さな“点”をここまで大きく引き延ばして撮影できる。ただし、それだけにフレーミングは超高難度。飛行機の軌道を予測してカメラを設置し、連写して何とか撮影することができた。最大望遠時はやや像が甘くなるのだが、それでも機体番号などはしっかり確認できる。

試用時期が新月直前だったため、月の作例は参考程度に。最大望遠時(f=3000mm相当)でここまで寄れる。専用の「月モード」を利用すれば、月の色味を調整することも可能だ。

別売の専用ドットサイト『DF-M1』(実勢価格:1万9440円)。上部のぞき窓の中央に表示される赤いドットを目安に、ざっくりとフレーミングが行える。野鳥など広い範囲を飛び回る被写体を撮影する場合は、必須と言っても過言ではないアクセサリーだろう。

超高倍率ズーム時は三脚で固定していても、手が少し触れるだけでぶれてしまうのだが、シャッター操作、ズーム操作を遠隔で行えるBluetoothリモコン『ML-L7』(実勢価格:4370円)を使えば、その心配は無用だ。

【ヒット確実な新製品の「試してわかった」をレポート】

プロの目利きたちがいち早くハンズオン! ヒット確実な気になる製品の試してわかったことをすべて教えます。

※『デジモノステーション』2018年12月号より抜粋。

関連サイト
COOLPIX P1000

text山下達也(ジアスワークス)

photo松浦文生
(d.365
掲載:M-ON! Press