給食を食べる子供(Milatas/iStock / Getty Images Plus/写真はイメージです)

数年前から問題になっている、学校給食の「完食指導」。これによって学校への不登校や体調不良、大人になっても「会食恐怖症」の発症と、支援団体に多数の相談が寄せられているそうだ。

 

■「会食恐怖症」とは?

「会食恐怖症」という言葉は、まだ馴染みがない人もいるのではないだろうか。

たとえば、家や野外では問題ないが、大勢の人間が集まるレストランでは発症したり、親しい友人など、気心の知れた人との食事は問題ないが、目上の人や馴染みの薄い人とは症状がでたりすることもある。

人によって症状の重さは違うが、ひどい場合は吐き気、震え、動悸、めまいなどの症状に悩まされるようだ。

 

■症状のきっかけは「給食」

「会食恐怖症」になってしまう理由のひとつとして挙げられているのが、学校給食での「完食の押し付け」だそうだ。給食の指導(完食指導)では「目の前に出された食事は残さずに食べること」という指導。確かに心がけるべきことだろう。

しかし、昼休みになって周りのクライメイトが校庭に遊びに行っている中、ひとりだけ居残りして食べさせられているといった状況が続くことで、心の傷を抱えてしまう人も少なくない。

■「完食指導」でPTSD発症

昨年5月に設立した支援団体「一般社団法人 日本会食恐怖症克服支援協会」では、生徒や保護者らが集まる「お悩み相談会」や無料通信アプリ「LINE」の公式アカウントでの個別相談会も行っている。

完食指導がきっかけで心的外傷後ストレス障害PTSD)を発症し、不登校や体調不良を起こしてしまったという相談が、昨年5月から今年9月までの期間で1,000人に上ったという。

 

■1割強が「給食にトラウマ」

しらべぇ編集部が全国の20代~60代の男女1352人を対象に調査を行なったところ、「給食で食べてトラウマになったものがある」と答えたのは全体の13.9%。性年代別では、40代女性が5人に1人ともっとも高い数値であることがわかる。

支援団体も発表しているが、過去の完食指導がきっかけで、現在もなお人前で食事ができなくなった20代~30代が全体の8割を占め、うち7割が女性が多いそうだ。

 

■「線引きが難しい」「バイキング形式は?」

「完食指導」について、「無理強いはダメ」「バイキング形式は?」など様々な意見が寄せられている。また、数十年前の小中学生時代を思い出す人も多いようだ。

「何十年も前から、昼休みに食べ終われずに苦しそうに食べてる子いたけど…今もそのシステムなの? 食べるスピードも体格も違うんだから無理強いはダメだって」

 

「今も給食係が器によそってるの? バイキング形式がよくない? 自分に合った分量を覚えていくためにも」

 

「いつも掃除の時間まで食べてる子がいたなぁ。ほこりが舞う中うつむいていて…もしあの子のお母さんが見たらどう思っただろう。 今、子供が出来てから思い出すとつらい」

 

支援団体は「給食は本来、楽しく食べて、食事の大切さを学ぶ場。強制は絶対にやめて」と訴えている。数年前には「完食指導」が訴訟に発展しているが、現在も相談が相次いでいるということは、大きな変化(改善)はないのだろう。学校側に多くの課題が出てきそうだ。

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(文/しらべぇ編集部・長谷川 瞳

【調査概要】 方法:インターネットリサーチ「Qzoo」 調査期間:2016年3月18日~2016年3月22日
対象:全国20代~60代の男女1352名(有効回答数)

給食「完食指導」で不登校、大人になってもトラウマ続く 支援団体「強制やめて」