第8週「新しい冒険!?」 第43回 11月19日(月)放送より
脚本:福田 靖 
演出:安達もじり
音楽:川井憲次
キャスト:安藤サクラ長谷川博己、内田有紀、松下奈緒、要潤、大谷亮平
     桐谷健太、片岡愛之助、橋本マナミ松井玲奈、呉城久美、松坂慶子、橋爪功、瀬戸康史ほか
語り:芦田愛菜
主題歌:DREAMS COME TRUE「あなたとトゥラッタッタ♪」
制作統括:真鍋 斎

43話のあらすじ
昭和22年、春。萬平(長谷川博己)の製塩業は順調、福子(安藤サクラ)は臨月を迎えていた。
投資してもらった三万円の使いみちを思案する萬平に、福子は「萬平さんの冒険を私は見たいです」と言って背中を押す。

「萬平さんの冒険を私は見たいです」
42話で「彼がこれからどうなるのか実に興味深いな」と三田村(橋爪功)が言って、3万円ものお金を萬平に出資してくれた。「実に興味深い」は福田靖のヒットドラマ「ガリレオ」(07年 フジテレビ 原作:東野圭吾)の主人公の決め台詞実に面白い」をもじったものだろうか。

三万円の使いみちはまだ考えついてないが、製塩業を大きくすることに使うことをためらう萬平。福子も、萬平のほんとうにやりたいことに使ってほしいと言う。
「萬平さんの冒険を私は見たいです」
冒険は、この間まで朝BS で再放送していた「マッサン」でエリーがよく言っていた「冒険(アドベンチャー)オマージュであろう。

萬平さんのやりたいことってなんだろう
どうせ大金を使うなら“世の中の役に立つ仕事”かつ“僕のやりたいこと”をやりたい。
それは何かと萬平は考える。
仕事のことばかり考えて、鈴(松坂慶子)の話をまったく聞かないものだから、鈴は「私は女中やありません」とキレる。
臨月の福子を心配し、事務仕事はやってもいいが家事はやらないほうがいいと萬平が止めたことと、赤津(永沼伊久也)が怪我をしてしまったことで、鈴がひとりで家事に大奮闘しなくてはならないのだ。

ここで素朴な疑問。
なぜ男の従業員は雇って女の従業員は雇わないのだろうか。
そもそも、男手も多すぎたはずなので、何人か家の中の仕事担当に回してもいいのではないか。
戦争で男が少なくなって女性が働かないといけない時代、女性を雇ったらそれこそ「人の役に立つ」のではないか。
ってなことを視聴者に考えさせてくれる双方向性ドラマ「まんぷく」。最近の朝ドラの双方向性の意識は高過ぎる。
視聴者にパラレルワールドを想像する楽しみをそこまで考慮してくださらなくても大丈夫だと思う。
今回、とくに芝居のうまい俳優がメインキャストに配置されているので、優れた脚本と優れた演技についてSNSで思う存分語りたい。

姑がいじめられる、これまでと逆パターン
鈴「私の先祖を遡れば源氏まで行くんです」
萬平「源氏!?」
鈴「源義経は私のご先祖さまよ」
萬平「え? はははは またまた御冗談を」
プリプリする鈴。大笑いし続ける萬平。
源義経って ハハハ」と笑っていると世良(桐谷健太)から電話。
1500円投資したとすっとぼける世良。
「新しい冒険に挑戦しようと思っています」という萬平に、
「冒険しました 失敗しました あの金なくなりましたじゃすまされへんぞ」と忠告する世良。
「もうすぐ父親になるんや 冒険はあかん」…と。

……とここまで見て思った。世良、なんかむかつく……ということではなく、本来、福子が言うことを、鈴や世良に言わせているのだなあということだ。
夫が仕事にかまけて妻をほったらしで、家事がいかに大変か気づいていないということはありがち。
あるいは、冒険などという漠然としたことに夢中の夫に、子供もできるんだから堅実にやってほしいと妻が願うこともありがちだ。
ドラマだとそういう対立によって話が動くが、「まんぷく」ではひたすら夫婦が仲良しなので、その分、鈴や世良が反対の視点担当になる。

世良のことはともかく鈴の役割は注目に値する。
これまで“姑”(及び“小姑”)と言えば主人公をいびる担当であった。ところが「まんぷく」では逆。
姑がラブラブの娘夫婦にないがしろにされている様をけっして深刻にはならない範囲で面白おかしく描いている。
世の中には、息子夫婦や娘夫婦に対してこんな不満を抱いている姑も少なくなく、鈴が率直かつかわいげを残してながら文句を言うことで、世の姑たちのガス抜きになり、かつ、嫁世代にとっても悪くない。
もしかして、視聴層の大半を成す高齢者の視点に立った画期的な設定なのかもしれない。
まんぷく」の視聴率が高いのは、このように姑・嫁両世代のことを考えた内容だからともいえるだろう。

また事件です
ハナ(呉城久美)の家に借りてたもの(お金?)を返しに行くと娘・玉恵がお手玉をやっているが、ずっと後ろ向きで、「できた」って実はできてないんでは……。
そこへ萬平が迎えに来た。でも傘一本で、相合い傘で帰る。萬平はわざと一本しか持ってこなかったのだろうか。妙にニタニタと福子に優しい萬平。とにかく、夫婦仲良くというメッセージを強烈に感じるドラマである。

「でもその日の夕方事件が起こったのです」
と、雷ゴロゴロ。事件とは、鈴が置き手紙を残して出て行ってしまったことだった。

いくらなんでも芦田愛菜ちゃんのナレーションが控えめ過ぎるので、「また事件です」とでも、ツッコミを入れてほしくなってきた。
(イラストと文/木俣冬)

連続テレビ小説まんぷく
NHK総合 月~土 朝8時~、再放送 午後0時45分~
BSプレミアム 月~土 あさ7時30分~ 再放送 午後11時30分~
◯1週間まとめ放送 土曜9時30分~

朝夕、本放送も再放送も オールBK制作朝ドラ
べっぴんさん」 BS プレミアムで月〜土、朝7時15分から再放送中。 
同じ戦後の関西だが、こちらは女性が中心になって働き、帰って来た夫・紀夫くんは心配顔。
43話

あさが来た」 月〜金 総合夕方4時20分〜2話ずつ再放送
相撲でおやすみ

イラストと文/木俣冬