野上「いや、その彼じゃなくて、古本屋で見かけた高校生。西斗一高の制服を着た。あの彼を、まだ思ってるんですか?」

11 月13日(火)放送の火曜ドラマ『中学聖日記』TBS系)第6話。
中学生だった晶(岡田健史)の前から教師・聖(有村架純)が姿を消して、3年が経った。2018年、聖は千鶴(友近)と同じ小学校で教師をしている。子星中学の同級生と音信不通になっていた晶は、同窓会でるな(小野莉奈)たちと再会する。晶は高校生になっていた。

淫行教師と不倫女、つまずいた人は変わらないのか
3年後という新章に入り、聖、晶、そして元婚約者の勝太郎(町田啓太)ら現在の状況を描いた6話。
聖は、小宮第一小学校で3年生の副担任として働いていた。こどもたちはもちろん、担任の野上(渡辺大)をはじめとした先生方にも好かれている。聖の過去については多少の噂が立っていたが、児童の親の弁当屋を手伝うなどして保護者からも信頼されているようだ。

晶は、実家を出て上布(マキタスポーツ)の実家に下宿している。進学した高校が近いから、という表向きの理由はある。しかし本当の理由は、聖とのことで母・愛子(夏川結衣)との関係が上手くいかなくなってしまったからだった。聖を失ったあとは勉強しかすることがなく、それで県内一の進学校に進んでしまった。

勝太郎は、大阪から東京本社に転勤。上司の原口(吉田羊)も部長として本社に異動してきた。3年前について、勝太郎は「聖をコントロールしようとしていたところがあった」と自省する。でも、実家に住所を聞いて勝手に聖の家を訪ね、自分のペースで「前に進むべき」と宣言して去るなど、気質は変わっていないように思う。ちょっと怖い。

小学校で、聖は気になる児童に出会う。あまりクラスの輪に入ることができてない様子の橘彩乃(石田凛音)だ。彩乃は、遠足の費用やお弁当など忘れ物が多い。職員室の中では、彩乃の母親・美和(村川絵梨)の素行についても話題にのぼる。かつて夫の親友と浮気をして離婚し、いまはシングルマザー。彩乃と住む家に、よく男性を連れ込んでいるという。

「小さい町ですからねえ」
「一度噂になったらヤバいですよ、一巻の終わり」

先生たちの言葉に、聖はハッとする。小さい町で中学生を好きになり、そこにいられなくなった自分。美和に向けられた「一度噂になったら終わり」という言葉に、自分が重なる。
聖と野上は、校外学習のときに彩乃にお弁当を持たせなかったことについて、事情を聞くために美和を訪ねた。すると、美和は不倫相手の妻に怒鳴りこまれていたところだった。妻は言う。

「他人様に後ろ指さされるような人のこと、誰が信じるのよ! あんたの過去は、町中みんな知ってる。人なんて変わらない。過去にやらかした人は、また同じことを繰り返す」

1話から4話まで聖を簡単に恋に落とさず、晶を好きだと自覚するまでをじっくりと描いて来た。そのため、見ている側は晶と聖が結ばれてほしいとほんの少しだけ思ってしまう。しかし5話では、なぜ成人が未成年と恋愛関係になれないかをキッパリと突き付けた。

6話からは、一度つまずいた人間は前に進むことができないのか? という問いに答えていく展開になるようだ。冒頭、聖は雑貨市で晶を見かけ、気づかれないようにとっさに逃げてしまう。こどもたちと穏やかに過ごすいまの自分を守りたいからだ。そんな聖を、野上は励ます。

野上「進めてますよ、末永先生。ちゃんと前に進めてます。ずっと見てきました。この学校に来て、生徒一人ひとりに声かけて、みんなと仲良くなって、他の先生方をよく手伝って、保護者の信頼も得て、一生懸命やってきてます。ゆっくりと、一歩ずつ前に進めています。大丈夫」

野上はそう言うが、聖に好意を抱いているらしい野上に抱き寄せられて、手を添え寄りかかってしまう聖はやはり変わっていない。新任で不安なときに晶の好意に寄りかかってしまったように、今度は野上に寄りかかりかけてしまった。野上に励まされているのに嬉しそうでもなく、聖の瞳はぼんやりと空虚を見ていた。

当初は、晶の強い思いが周りの大人を振り回していくドラマだと思っていた。その一方、聖の弱すぎる意思が事態の収拾つかなさを引き起こしている。最終回までに、聖が成長し強く意思を持つのか、それともいまのままの聖を誰かが肯定するのか。ドラマの伝えたいことが浮き彫りになっていくのが楽しみだ。

意思のある女子と向き合わない男子

あまり意思のない聖に対して、意思をガンガンに伝えていてえらいのがるなだ。音信不通だった晶を受け入れて、4度目の告白をする。

「黒岩は、私がまだ黒岩のこと好きって言ったら、引く?」

「一緒にいたい。帰りたくない。今日はもう、二人でずっと一緒にいたい」

「私、黒岩の裸見たい。好きだから見たい」

「忘れよう。忘れさせてあげる」

強い。中学生の頃、「末永と違って、私は傷つく覚悟をしてここに来ている」と言ったるなそのままだ。その割に人生経験は17〜18歳のこどもなので、拗ねてお菓子を投げつけたりラブホテルで変にはしゃいでしまったりする。アンバランスさが危うくもリアルだ。

対して晶は、相変わらずるなに向き合わない。まだ聖が好きかと聞かれているのに、「もう会えない。きっと、もう結婚してるよ」と答えになってない返事をする。中学生のときと変わっていない。敦紀(西本まりん)も「前から思ってたけど、黒岩って羊の皮被ったゲスだよね」と言っていた。マイペースで人の気持ちを考えないって、ゲスなのか。

晶の母・愛子は、聖がまだ教師を続けていることに「あの人、あんな騒ぎ起こしてまだ先生やってるなんて、許されるの? そんなこと」と憤る。また、彩乃の母・美和は聖の過去を知って「面白そうな先生」と笑う。
3年前から前に進めていない聖と晶を、今度は周りの大人たちが無理矢理突き動かしていくことになりそう。意思、芽生えてほしい。

ところで、聖を探すために愛子が見ていたのは、「LIFE STYLE」というFecebookのようなサイトの小学校のページだった。いやいや、いまどきSNSに児童や先生の写真をアップする学校なんてないでしょう、と思い確認してみた。すると、行事や日常の写真をFacebookにアップしたり、保護者がタグ付けで児童の顔写真を公開してしまったりしている学校が、想像以上に見つかった。児童と一緒に笑う聖の写真が簡単に見つかってしまうのも、リアルだったのか……。

少しずつクライマックスに向かう第7話は、今夜10時から放送。
(むらたえりか

▽配信サイト
Amazonプライムビデオ(TBSオンデマンド)
Paravi

火曜ドラマ『中学聖日記』
TBS系にて、10月9日(火)スタート 毎週火曜よる10時から放送
出演:有村架純岡田健史町田啓太(劇団EXILE)、マキタスポーツ、夏木マリ、友近、吉田羊、夏川結衣、中山咲月
原作:かわかみじゅんこ『中学聖日記』(フィールコミックス/祥伝社
脚本:金子ありさ
演出:塚原あゆ子、竹村謙太郎、坪井敏雄
主題歌:Uru「プロローグ」(ソニーミュージックレーベルズ)
製作:ドリマックステレビジョン、TBS
(c)TBS
公式サイト:http://www.tbs.co.jp/chugakuseinikki_tbs/

イラスト/まつもとりえこ