BSフジで放送中の「パレ・ド・Z~おいしさの未来~」(毎週土曜昼5:30-夜6:00)。一流のシェフが作る究極の一皿をドキュメンタリー&ドラマ仕立てで紹介。シェフの日常に密着し、彼らの料理哲学をひもといていく、新感覚のグルメ&ドキュメンタリー番組だ。

【写真を見る】シェフの生み出す“未来に遺すべき作品”を、高嶋政宏が味わう

この番組のナビゲーターともいうべき三石寛太を演じているのが高嶋政宏。三石は、B級グルメ専門のフードライターを名乗りながら、実は、究極の一皿を“作品”としてコレクションする次世代フードミュージアム「パレ・ド・Z」のチーフキュレーター。日夜、未来に遺すべき“作品”を求めてさまざまな店を訪れ、絶品料理を食していく。

テレビジョンでは、収録中の高嶋にインタビューを実施。収録の様子や、番組としての今後の目標などを聞いた。

――現在、「パレ・ド・Z~おいしさの未来~」の第4話(11月24日[土]放送)を撮影中とのことですが、収録の雰囲気はいかがですか?

この番組は、BSフジの番組ではあるんですが、地上波、BS、CSから精鋭のスタッフが集まっていて、収録も非常にスムーズに進んでいます。撮り方が非常にプロフェッショナルで、とにかく最後まで自然な流れで続いていくんですね。いろんな角度から、長時間撮っていくので、一応ベースとなるセリフは決まっているんですが、ライブ感覚でアドリブで話しても、編集のときに監督が良いと思った方を使ってくれるので、自由に演じさせてもらっています。

劇中で三石がやりとりする相手は、全員、本当のお店の料理人の方々なんです。でもみなさん、何度も何度もお芝居をやり直してくださるんですよ。番組のスタッフも、「あ! そこちょっと笑っちゃったんで、次は笑わないでください」とか「目が泳いでます」とか、指示がすごく細かいんですけど(笑)、それでも、「料理人だからできないよ!」なんて言わず、ちゃんとやってくれる。料理の世界ではプロフェッショナルな人が、不慣れなことに一生懸命に臨んでいる姿は、本当にすごいなと思いますね。

――番組の出演が決まったときのご心境は?

まず最初は、とにかくうれしかったです。(企画監修を務める)小山薫堂さんとは、かれこれ20年ぶりだったので、薫堂さんから声が掛かったのがうれしくて。だから、初めはその喜びが大きかったんですけど、そのあと番組の内容を聞いて、グルメという最も僕が好きなものの一つがテーマだと知って、そこで喜びがダブルになって(笑)。うれしくて飛び上がりましたね。

■ 全世界に向けて「味噌汁

――この番組では、なかなか予約が取れない敷居の高いお店が取り上げられますが、収録の際、難しさを感じることはありますか?

いえ、物々しい感じは一切ないですよ。確かに、僕も絶対行けないと思っていたようなお店ばかりで、いろんなタイプの方がいますけど、本当にどのシェフも、にこやかに迎えてくれます。「お待ちしてました!」という感じで、こちらの気分まで良くしてくれる。舌だけじゃなく、目や鼻、五感で喜ばせてくれます。だからこそ超一流なんだなと思いますね。

横で見ていると、スタッフに対して「シェフにこれをもう一回やらせるの?」って言いたくなるようなこともあるんです。「もう一回料理を撮りたい」とか、「ちょっと待ってください、今こっち撮りますから」とか。シェフを待たせていいのかなぁと思って、ちょっとドキドキするんですけど、シェフたちは「いいですよ!」って全く気にしていない様子で。ただ、時間のことだけは、みなさん気にされますね。次の手順とか熱の入れ具合とか、料理は、やはり秒単位の戦いなので。

でも、僕もいろんなグルメ番組に出てますけど、ここまでディレクターがシェフとコミュニケーションを取る番組は初めてですね。やっぱり超一流の人しか出ない番組ですから。

実は僕、「孤独のグルメ」(テレビ東京系)が死ぬほど好きで、DVDも持ってるんです。松重豊さんに「今度サインしてください」って言ったら苦笑いしてましたけど(笑)。だから自分でも、ああいうスタイルの番組をやってみたいと思っていたんですが、定食がおいしいお店とか、庶民的なお店巡りは松重さんがやっちゃってるので、同じことをやるのはつまらないなと思っていて。その点、今回は超一流のお店を紹介するのがコンセプトということで、本当によかったです。

――番組にちなんで、高嶋さんにとっての“未来に遺したい一皿”を教えてください。

僕はやっぱり、全世界に向けて、健康的という意味でも、おいしさという意味でも「味噌汁」ですね。味噌汁には、発酵食品である味噌の持つ風味と、出汁と、野菜の栄養素が集まっていて。具によって味も栄養もどんどん変わっていきますし、何といっても二日酔いにも効く(笑)。これは未来に遺したい一品です。

■ 料理を始めたきっかけは、芸人の三瓶さん

――グルメで知られる高嶋さんですが、興味を持たれたきっかけは?

一番最初は、僕がデビューした頃に「料理天国」(1975~1992年TBS系)という、芳村真理さんが司会をされていた番組が好きで、よく見ていたんですが、ある回でパスタを作っているのを見て、自分もできるんじゃないかと思ったのがきっかけです。でもその時は、実際に作ってみたら全然うまくいかなくて。それで嫌になっちゃって、しばらく料理はしてなかったんですよ。

その数年後、ふと夜遅い時間にテレビをつけたら、市川海老蔵さんの密着ドキュメンタリーが放送されていて。海老蔵さんが大役をやる前に煮詰まって、コンソメスープを作り始める、というくだりがあったんですね。それを見たときは、「これから大変な役をやるのに、8時間もスープ煮込んでる場合じゃないだろう」なんて思ったんですけど(笑)、そのシーンがなぜかずっと気になってて。

また、それと同時期に、芸人の三瓶さんがテレビでオムレツを作っているのを見て。それで、三瓶さんを真似して、僕もちょっと家でオムレツを作ってみたんですね。そしたらうまくいったんです! 「あれ、これ面白いな」と思って、それ以来、毎日オムレツを作るようになりました。2回目に作ったときは失敗したんですけどね、くっついちゃって(笑)。でも、毎日毎日やっていたら、どんどん慣れてきて。確かに料理って、作る瞬間は集中するから、リフレッシュするんですよ。だから今は、かつてテレビを見ながら「海老蔵さん、何やってるんだよ」と思った自分を恥じています(笑)。

オムレツ作りがうまくいくときは、気持ちが安定してるんですよね。焦ったり、ぼーっとしてたりすると、うまくいかない。それに気付いたときに、料理というのは精神状態を保つには良いものなのかなと。そこから、ますますオムレツ作りにハマっていきました。

不思議なことに、オムレツがうまく作れるようになると、どんな料理も全部うまくいくんです。炒めも、火加減も、手順も。オムレツって基本のキなんでしょうね。

そこからは料理本を見て、いろんなものをレシピ通りに作り始めました。特に「とりあえずこの料理さえ作れれば」っていうシリーズ(オレンジページブックス)は、ずいぶん参考にさせてもらいました。あとは、料理研究家の方のレシピ本で作っているうちに、「この先生のレシピで作ると味が濃くなるな」「この先生は薄味だな」という違いがだんだん分かってきて。料理研究家を見る目がちょっと変わってきました(笑)。

他にも、雑誌に小さく載っているレシピを見て作ったり、テレビの旅番組で農家の方が家で作っている料理の作り方をメモしたり。こういうことがリフレッシュになりますね。

■ 自分の順番で、自分の飲みたいもので楽しみたい!

――食べるときのこだわりはありますか?

こだわりは、必ず薄味から食べる。それとミントも含めて、食べる前に刺激物を口に入れない。舌をフレッシュな状態にして食べ始める。あと、寿司を食べるときのこだわりは、イカから食べる(笑)。

この間、みんなで食事に行ったときに刺し身を頼んだんですけど、キムチポテトサラダが先に来ちゃったんです。でも刺し身が来てないからずっと待ってたら、周りが「何で食べないの?」って。「いや、刺し身の前にこれ食べたら、舌が汚れるからダメだ。味が分かんなくなるから」って言ったら、「そんな厳格な舌を持ってるとは知らなかった」って言われてしまって…。でもいいんです、自分がよければ(笑)。

あと、お店でワインを飲むときに、いきなり赤を頼むのもちょっと…。最初に泡(スパークリングワイン)で、白、それから赤、という順番がいいですよね。それを急に「私、赤しか飲まないから」って言われると…、口の中の状況を考えろって言いたくなりますね。もうちょっと舌のことを考えろと(笑)。とはいっても、例えばお世話になっている先輩が「もう俺は赤しか飲まない」と言ったら、あっさりした薄味のものは注文しないです。だから僕、食事は一人で行くのが好きなんですよ(笑)。

友達に誘われて、おいしいと評判のお店にみんなで行ったとするじゃないですか。そうしたら必ず数日後に、その店に一人で行きます。みんなで行くと、みんなの注文で食べなきゃいけないじゃないですか、それが嫌なんですよ。自分の食べたいものを、自分の順番で、自分の飲みたいもので楽しみたいんです。

――高嶋さんの一番の得意料理は何ですか?

今一番自信を持ってお薦めできるのは、リングイネのジェノベーゼパスタですね。ただ、これは自慢できることではなくて。ジェノベーゼパスタって、最も失敗の少ないパスタと言われているんです。火を使わないんですよ、パスタを茹でるとき以外は。ソースはミキサーで作りますから。だから失敗が少ない。ただ一つ、最初にミキサーで、エクストラヴァージンオリーブオイルニンニクを一かけら。これを最初にドロドロになるまでミキサーにかけないと駄目。これだけ守れば失敗しません。ベースができたら、あとはバジルと松の実。どちらもけっこう高価なので、バジルの代わりに紫蘇でもOKですし、松の実も、ピーナッツでもくるみでも、アーモンドでも代用できます。あと、塩もちょっと入れるんですが、パルミジャーノ(レッジャーノ チーズ)を削っても、粉チーズでも、塩加減は後から調整できます。これでもう本当に、絶対失敗しません! これは感動しますよ。

■ お店の雰囲気や料理の味を体験してもらいたい!

――逆に苦手な料理はありますか?

僕はオリーブオイルが好きで、健康のことも考えて、家で揚げ物をするときは必ずオリーブオイルで作るんですけど、仕上がりがベタッとなるんですよね(笑)。あと、キッチンが脂ぎるのも嫌で。やっぱり、揚げ物サラダ油の方がいいんでしょうね。でもオリーブオイルの方が体にいいから…。

――(笑)。番組で今後行ってみたいお店はありますか?

今、いっぱいおいしいお店があるんですけど、全てに行きたいっていうのはありますよね。制覇したいです。

第1回(10月6日放送)の「SUGALABO」は本当に行きたかったので、うれしかったです。予約が全然取れないので。今日うかがう「くろぎ」も絶対に予約が取れない。そういうお店に番組で行けるのは本当にうれしいです。なんか興奮しますよね。店構え、店の作り、内装、匂い、使っている調理器具の清潔具合。あと、一番重要なのはトイレ。トイレがきれいな店は全部超一流の店です。逆にトイレがダメなところは、やっぱりだんだん駄目になっていきますね。トイレには神様が住んでいますから。

――最後に、視聴者に向けてメッセージをお願いします。

ドラマでもないドキュメンタリーでもない、新しいタイプの番組です。ぜひみなさん、楽しんでください。そして、そこに出てくる超一流の料理人の方々を見て、いいなと思ったら、どうか実際にお店に足を運んで、お店の雰囲気や料理の味を体験してもらいたい。きっと、「だからこの人は超一流なんだ」ってことが分かりますし、それはお金に代えがたい体験になると思います。

※高嶋政宏の「高」は正しくは「はしご高」(ザテレビジョン

「パレ・ド・Z~おいしさの未来~」(BSフジ)に出演する高嶋政宏