京都の寺院で最初にライトアップという新たな取り組みを始めた高台寺。4年前からは本格的にプロジェクションマッピングを導入した。常に新しい挑戦に取り組む高台寺の、ヒットの裏側を探る!<※情報は関西ウォーカー(2018年11月6日発売号)より>

【写真を見る】2018年春のテーマは平和。宗教や文化を超え、聖母マリアをモチーフに展開された/高台寺

■ 新しい取組にチャレンジ!「高台寺」から発信する、これからの寺院のカタチ

木々が色付き始めると古都、京都の名所旧跡ではライトアップが実施され、多くの観光客でにぎわう。今では当たり前となったイベントだが、京都で最初にライトアップを開催した所はどこかご存知だろうか? 実は、秀吉とねねの寺で知られる高台寺なのだ。歴史と伝統を重んじる寺院が、率先して行ったという事実に驚かされる。そこで、ライトアップの仕かけ人、高台寺執事長の後藤さんに、開催にいたった経緯などを聞いた。

【高台寺執事長 後藤典生さん】高台寺執事長、圓徳院住職。VISIT JAPAN大使として、また、京都観光おもてなし大使として京都の観光事業にも積極的な活動を行う。

■ 周囲の反対を押し切りスタートしたライトアップ

高台寺でライトアップがスタートしたのは約20年前。国内観光客が北海道や沖縄に流れ、その事態を危惧した当時の京都市長から相談を受けたのがきっかけだという。高台寺は国の特別史跡であるため、自然環境局や同じ宗派の寺院は猛反対。

しかし、後藤さんは「仏教は約1500年前に日本に伝来して以来、カタチを変えて人々に教えを伝えてきました。高台寺も時代に合わせスタイルを変えていくことも必要」だと考え、春と夏にライトアップを実施。ところが「大赤字で次の年はやめようと思った」そう。

タクシー会社や料理店からは夜の客が増えたと喜ばれたため、翌年も渋々実施。思いもよらず、次年度は黒字転換。2年後には他の寺院も同調、規模が拡大し、京都に戦後最大の経済効果をもたらした。2003年には花灯路にまで発展し、京都の風物詩と言われるまでになった。

■ 当初からぶれないテーマをさらに映像で具現化

大手企業などからの申し入れもあり、4年前から本格的にプロジェクションマッピングを導入。仏教の教えをテーマとしたライトアップの世界観がより具現化した。

今秋のテーマは、生と死~求めるものは外ではなく内にあり~。今回は、今までとは異なり、参道からプロジェクションマッピングが始まる。門前までは、騒がしい“娑婆(しゃば)”の世界を表現し、一歩境内に入ると、静かな生死、仏の世界となる。生と死、動と静、苦と安心という対比によって、いのちを生きるとはなにかと、自分自身に問いかけてもらう内容になっていますと後藤さん。変化し続ける高台寺だからこそ、多くの人を魅了するかも知れない。

■ 数字で見るヒットのポイント

1994年】平安建都1200年を機に、ライトアップを開始。観世音菩薩が帝釈天などに変化するように、寺院のあり方を時代に合わせてチェンジ

【約3分間】勅使門(ちょくしもん)を中心に、波心庭の白砂までに映し出される映像は約3分。連続的に行われるので、回転が速く、途中から見てもOK。

【52日間】高台寺のライトアップは、どこよりも早く始まり、12月初旬までと期間が長い。さらに最終受付が21時30分なのでディナーのあとでも余裕。

■夜間特別拝観/期間:10月19日(金)~12月9日(日) 時間:17:00~21:30(最終受付) 料金:600円

■高台寺/豊臣秀吉の正室、北政所(ねね)が1606年に秀吉の冥福を祈り建立。開山堂、霊屋、観月台、茶室の傘亭、時雨亭など開山時の建物が現存する。秋には臥龍池の水鏡にその周辺の紅葉が映り込み、幽玄な世界を現出させる。<住所:京都市東山区高台寺下河原町526 電話:075-561-9966 時間:9:00~17:30(最終受付17:00) 休み:なし 駐車場:100台(600円/30分、以降300円/30分) アクセス:京阪祇園四条駅より市バス207系統九条車庫前行約4分、東山安井から徒歩7分>(関西ウォーカー・関西ウォーカー編集部)

白砂の方丈庭園波心庭で実施されるプロジェクションマッピング/高台寺