解説者が“プロ目線”で5段階評価、先発起用の杉本は「ボールが収まらなかった」

 日本代表は20日に2018年ラストマッチとなる国際親善試合キルギス戦に臨み、4-0と快勝した。森保一監督の就任後、4勝1分と無敗で駆け抜け来年1月のアジアカップを迎えるが、メンバー入りに向けた“最終テスト”となった一戦でインパクトを残した選手は誰だったのか。

 1970年代から80年代にかけて「天才ドリブラー」としてその名を轟かせ、日本代表としても活躍した金田喜稔氏が、キルギス戦に出場した全17選手を5段階で評価(Aが最高、Eが最低)。初のアジア勢との一戦で、4日前のベネズエラ戦(1-1)から先発メンバーが総入れ替えとなったなか、金田氏は国内組のダブルボランチが見せたパフォーマンスを称賛するとともに、途中出場となった“不動の1トップ”に単独最高評価を与えた。

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<FW>
■杉本健勇(C大阪/→後半14分OUT)=C

 ボールが足もとに収まらなかった。現代サッカーでは誰もがパススピードを意識し、ビルドアップの横パスにおいても高速化するなかで、全員が速いリズムのなかで縦パスを前線に入れるタイミングを狙っている。受け手となる選手は、限られたスペースとマーカーを背負いながら、ファーストタッチで正確にコントロールして足もとに収めなければ攻撃はノッキングしてしまい、チームに連動性が生まれない。杉本はこの局面でボールを失う場面が散見された。また、ゴール前で完全に競り勝っているのにヘディンシュートを決めきれないシーンが2本はあった。裏返せば、それだけ空中戦の強さを持っているということ。アジアカップの戦いを考えれば、高さが必ず必要な場面は出てくる。今回は鈴木優磨(鹿島)の負傷離脱による追加招集とはいえ、そこは可能性を感じさせたので、アジアカップメンバーを狙ううえではプレー精度を高めたいところだ。

■北川航也(清水/→後半27分OUT)=C

 ベネズエラ戦に途中出場したなかでゴールへの貪欲さをあまり見せられなかったなか、今度は先発というビッグチャンスを得たが、十分なインパクトを残したとは言い難い。ポジション的にはトップ下気味で、守備面においては奮闘した。また大迫が決めた3点目のシーンでは、ヒールパスでの落としからアシストを記録したのは、本人の自信になっただろう。だがアタッカーとしては、もっと個人で決定的なシーンを生み出してほしかった。


守田と三竿のダブルボランチが放った「優勝した自信と雰囲気」

<MF>
■伊東純也(柏/→後半14分OUT)=B

 10月パナマ戦(3-0)でも指摘したが、この試合でも右サイドバックの室屋とのコンビによる打開は、あまり上手いとは言えなかった。ただ、これまで短い時間でも結果を残してきた図抜けたスピードは健在で、この日も多少のポジションのズレがあっても間に合ってしまうというスプリント能力を披露。ターンしてからのシュートシーンでは冷静さがほしかったが、貴重なジョーカーにもなり得るスピードには可能性を感じさせた。

原口元気ハノーファー/→後半27分OUT)=B

 途中から出ようが先発から出ようが、“原口スタイル”をブレずに貫けるのは監督としては頼もしい人材だろう。自らのドリブルでFKを獲得し、ゴールを奪った。限りなく「A」評価に近いが、キルギスという相手を考えればもっとシュートラストパスなど、決定的なプレーを自らの局面打開力や周囲とのコンビネーションで作り出してもらいたかった。

■守田英正(川崎)=B

 守田も限りなく「A」評価に近いパフォーマンスだった。攻守において次のプレーを予測し、いかに素早く反応できるかはボランチに求められる重要なスキルの一つ。的確なポジショニングによって攻撃を滞らせることなく、次に展開したというシーンが、大迫のゴールにつながった後半27分のプレーだった。左サイドで柴崎が山中を狙った縦パスが相手にカットされ、ボールが中央のスペースに転がる。そこに守田が素早く反応してワンタッチで前線の北川の足もとにつけて、大迫が決めた。このカバーリングの一歩目の速さは、Jリーグ連覇を達成した川崎で磨かれたもの。大卒ルーキーでまだ伸びしろは十分。キルギス戦でアピールに成功した一人だ。

■三竿健斗(鹿島/→後半14分OUT)=B

 展開力とともに中盤でピンチの芽を的確に摘む高い能力を見せた。今季のAFCチャンピオンズリーグACL)で鹿島の初優勝に貢献し、MVP候補にもノミネートされている実力を、代表の舞台でもしっかりと披露できた。これは私も現役時代に経験し感じたことだが、今の三竿と守田の二人には間違いなく「勝者のオーラ」がある。リーグ戦やACL天皇杯といった大会でタイトルを獲り、その流れのなかで代表に合流した時に放たれるものだ。優勝という結果を手にした選手が得た自信や雰囲気というものは、やはりプレーに凄みを生み、選手をワンランク上に押し上げてくれる。だからこそ、一つ注文したいのがミドルシュートの意識。キルギスは前半に2点を失った後、ラインを下げて2ラインで守備を固める時間帯が増えたが、そこでペナルティーエリアの外からミドルシュートを狙う意識をより高めることが、アジアカップでの成功にもつながると思う。


現代表のサイドバックに求められる「攻撃参加のタイミングと精度」

<DF>
■室屋 成(FC東京)=B

 フィジカル能力の高さはこの試合でも証明し、献身的にアップダウンをして堅実にこなした。無失点に貢献した一方、攻撃参加の部分では何本かボールを上げるシーンを作ったが合っていない。現在の日本代表は、両サイドハーフの選手が5メートル中央に絞ってプレーしている。空いたタッチライン際のスペースは、どちらかというと両サイドバックが前に出て使うケースが多い。右サイドハーフで言えば、堂安に比べて伊東のほうが外に張るシーンは多いが、彼も意識的に中寄りにポジションを取らされている印象がある。前線の4人が縦横の距離感を縮め、トップボールが収まった瞬間に連動して相手を攻略する。そうした狙いがあるからこそ、ワイドのスペースサイドバックが気を利かせて、どのタイミングで飛び出し、最後にどれだけ精度の高い仕事ができるかが、アジアカップでも求められてくるだろう。

■三浦弦太(G大阪)=B

 取り消された“幻のゴール”は残念だったが、前半に相手が5-4-1となってラインを下げた時、最終ラインの選手がかなり速いパス回しでサイドを変えながらパスコースを探っていたなかで、三浦は前に持ち出しながら何かできるという可能性を見せてくれた。センターバックは今後、ワールドカップ(W杯)組の昌子源(鹿島)が復帰する可能性も含めてレギュラー争いは熾烈だが、起用のされ方を見る限り、森保監督の三浦への評価は低くないだろう。

■槙野智章(浦和/→後半16分OUT)=B

 不運な形での負傷交代となったが、吉田に次ぐリーダーシップを見せた。W杯を経験しており、チームを後ろからコーチングしていく役割も含めて不可欠な存在であることは間違いない。ピンチと言える場面はほとんどなかった。

■山中亮輔(横浜FM)=B

 代表デビュー戦で、しかも開始早々にゴールを奪うというのはなかなかできることではないこと。クロスの精度も高く、FKも含めて左利きの左サイドバックという魅力は十分に示すことができた。長友佑都ガラタサライ)が離脱しているなか、ベネズエラ戦で先発した佐々木翔(広島)より序列で上に行ける可能性は示しただろう。もっとも、この相手では守備面での評価はし難い。攻守におけるバランスを求められるなかで、どこまで攻撃面の良さを出せるかは未知数だが、左サイドの新たな可能性としてインパクトを残すことには成功した。

<GK>
■権田修一(鳥栖)=B

 これほど一方的な展開となり、相手のシュートが来ないゲームは、ある意味GKにとっては難しいもの。そのなかでも確実なプレーで失点をゼロに抑えた。


日本で図抜けている大迫のポストワーク「試合の雰囲気をガラッと変えた」

<途中出場>
大迫勇也ブレーメン/FW/←後半14分IN)=A

 試合の雰囲気をガラッと変えた。自らチーム3点目のゴールを決めたし、精度の高いファーストタッチボールを足もとに確実に収めて、2列目の中島、南野、堂安との連動性を引き出した。チームの攻撃をノッキングさせない大迫のポストワークは、やはり日本では図抜けている。アジアカップへ向けて、彼の代役となり得るのは、負傷しているが2列目の3人との相性が良さそうな小林悠(川崎)、あるいは武藤嘉紀ニューカッスル)、岡崎慎司レスター)といったところだろう。ただ、大迫が今の日本代表の生命線であることは間違いない。それを改めて実感した一戦だった。

■堂安 律(フローニンゲン/MF/←後半14分IN)=C

 出場約30分のなかで中島のゴールアシストした以外、これといった仕事はできていない。まだゲームによって波があり、消えている時間帯もある。何かやってくれるという期待値は高く、右サイドハーフの一番手ではあるが、キルギス戦に関してはあまり良いパフォーマンスではなかった。あの相手であれば、決定的なシーンをもう少し作ってほしかった。

■柴崎 岳(ヘタフェ/MF/←後半14分IN)=B

 相手がキルギスとはいえ、盛んにボールを引き出して触り、縦パスを狙っていくという本来の“柴崎らしさ”を取り戻し、プレーにハツラツとした雰囲気が見えた。ボールの運び方、受け方、守備に入った時の切り替えの早さ、局面の球際での体の張り方、ボールを受けてから前に出て行く意識……。ベネズエラ戦での自信なげなプレーに比べれば確実に上がってきた。

吉田麻也サウサンプトン/DF/←後半16分IN)=B

 槙野の負傷による緊急出場となったが、しっかりと失点ゼロで試合を締めた。ビルドアップでも前へ持ち出すなど、最終ラインでの存在感の大きさを感じさせた。

中島翔哉ポルティモネンセ/MF/←後半27分IN)=B

 短い時間のなかで、出場直後に森保監督の下での初ゴールを決めた。中島らしいプレーを存分に見せた一方、個人的には4-0となった後の時間帯では、自ら仕掛けた際に怪我が怖いなと感じた。思うようにいかず、苛立った相手選手がラフプレーを仕掛けてくるケースアジアでも見られるので、ああいう場面では簡単にさばくシーンがあっても良かったのかもしれない。

南野拓実ザルツブルク/MF/←後半27分IN)=B

 ここまで4ゴールを奪っている動きの良さは、限られた時間のなかで存分に見せた。終了間際に相手と競り合いながらすり抜けてペナルティーエリア内に侵入し、シュートを打とうと振り下ろした右足を相手に蹴られて倒れたが、レフェリーがしっかりと見ていればPK判定になったはず。大迫との関係の良さは、この試合でも継続して見せていた。

PROFILE
金田喜稔(かねだ・のぶとし)

1958年生まれ、広島県出身。現役時代は天才ドリブラーとして知られ、中央大学在籍時の77年6月の韓国戦で日本代表デビューし初ゴールも記録。「19歳119日」で決めたこのゴールは、今も国際Aマッチでの歴代最年少得点として破られていない。日産自動車(現・横浜FM)の黄金期を支え、91年に現役を引退。Jリーグ開幕以降は解説者として活躍。玄人好みの技術論に定評がある


Football ZONE web編集部)

(左から)守田英正、大迫勇也、三竿健斗【写真:Getty Images】