相手に失礼のない立ち振る舞いや、上司への「報連相」は社会人の基本中の基本。そこを疎かにしたままでは、常識を疑われ、「この人は仕事ができない人なのかも」と悪い印象を与えてしまいます。社会人教育の専門家として「新入社員研修」「管理職研修」など年間200以上の研修で講師を務める田畑美絵さんに、「この人なら大丈夫」と信頼されるためのスキルを伺いました。連載第2回は「席次・電話」編です。

◆電話編

1. まずは電話に慣れることから

"電話といえばスマホ"という世代には、固定電話での応対は難しいものです。スマホでは自分あてに、しかも相手がわかる状態でしかかかってきませんが、固定電話では知らない相手と話をし、電話を取り次いだり、メッセージを預かったりしなければならないからです。まずは、数をこなして慣れていくようにしましょう。

電話応対は固定のフレーズや定型文、慣用表現の繰り返しです。あまり難しく考える必要はありません。よく使うセリフを紙に書いて電話の近くにおいておくのもいい方法でしょう。

たとえば、相手の方の名前を確認するときには「〇〇会社の~さまでよろしいですか」「~さまでいらっしゃいますね」と。逆に社内の人(名指し人)の名前を確認するときは「~でございますね」とします。「名前+さまでいらっしゃいますね」と「名前(呼び捨て)+でございますね」をしっかり使い分けましょう。

2. 「席を外しております」と「外出中」は違う

先日、ある会社に電話をして「Kさんいらっしゃいますか」と繋いでもらいました。電話に出たKさんにあいさつをし「今お時間よろしいでしょうか」と言ったのですが、返ってきたのはなんと「今だめです」というセリフ。予想外の返答にびっくりしてしまいました。電話の応対ひとつで印象が一気に悪くなってしまう典型的な例でしょう。本当に忙しいのであれば、「今席を外しているようでして」「のちほどこちらからお電話いたします」というように応対してもらって電話に出なければいいですし、直接私に伝えるのであれば「申しわけございません。のちほどこちらからかけ直してもよろしいでしょうか」と伝えるとよいでしょう。

なお、「外出中」と「席を外しております」は意味が違います。「席を外している」は社内にはいるけれど、自席にいませんということ、「外出中」は社内にはいないということ。しっかり使いわけないと、相手に誤解を与えてしまいます。あわせて「あいにく席を外しております」「念のため、電話番号を伺ってよろしいでしょうか」のように、クッション言葉を使いこなせるとより印象が良くなります。

伝言を受けるときには「では〇〇に申し上げておきます」という人がいますが、敬意の方向が間違っています。「では〇〇に申し伝えます」という表現を使うようにしましょう。

3. 電話番号の復唱は2パターン

電話番号を聞いたときには、間違いがないよう必ず復唱するようにします。それには2つの方法があります。「ながら復唱」と「まとめ復唱」です。「ながら復唱」は「045」と相手が言ったら、こっちも「045」と確認し、「123」と聞いたらまた「123」といった感じで区切って繰り返す方法。「まとめ復唱」はその名の通り、電話番号を最後まで聞いた後に、「それでは復唱いたします。045-123-XXXXでよろしいでしょうか」というパターンです。「丁寧に正確に、かつ迅速に簡潔に」というのが電話のマナーですから、復唱を2回も3回も繰り返すのは×。一度ですませましょう。

◆席次編

1. 最初から「上座」がわかりやすい配置に

応接室や会議室での席次に悩む人は多いようです。原則は持ち主、つまり迎え入れる方が下座で、訪問者が上座です。自社で会う場合は、営業のために訪問してきた相手であっても上座に座ってもらいます。

上座は入口から遠い側、下座は入口から近い側と考えましょう。下座の席の方が景色がよかったりすると迷ってしまいますから、そうならないように席をわかりやすくセッティングしましょう。たとえばソファセットなら、ソファの形によっても上下があるので、繋がった長いソファを上座にあたる位置に置けば、「こっちが上座なんだな」と誰もがすぐにわかります。紛らわしい場合には「こちらの席のほうが景色がいいので」「こちら側に冷房がありますから」などと一言添えて案内するといいでしょう。なお、社長室などでは社長のデスクに近い方が下座となり、社長はデスク側に置いた1人用のソファで来客者を受け入れる形になります。

2. 新幹線飛行機の席にも上座下座がある

出張などで上司と一緒に新幹線に乗ったときに、シートを向かい合わせて4人で座ることがあります。その場合は、進行方向を向いている席が上座となります。また、窓側と通路側では窓側が上座になります。4つのシートを席次順に並べると、1(一番上座)が進行方向に向かう席の窓側、2が進行方向と逆に座る席の窓側、3が進行方向に向かう席の通路側、4が進行方向と逆に向かう席の通路側となります。ただ実際には、人それぞれ好みがあるでしょうから、目上の方に「どちらにお座りになりますか」「こちらのお席でよろしいでしょうか」と直接聞くとよいでしょう。

タクシーも同様で、原則は運転手の後ろが1、助手席の後ろが2、後部座席真ん中が3、助手席が4ですが、自分が一番若手だからといってすぐに助手席に乗ってはいけません。後部座席の真ん中より、助手席のほうがいいという人が多いようです。自分が4番目の立場なら3番目の立場の人に「どちらがいいですか」と聞きましょう。

「仕事ができない人」と思われないようにするためのスキル第2回 「席次・電話」編