本連載では、Appleの最新情報を噛み砕いて解説する。第15回はiPhoneのeSIMで使えるようになった「GigSky」の通信サービスを検証した。

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今秋発売された「iPhone XS/XS Max/XR」は、「DSDS」に対応した。これは「デュアルSIM(シム)・デュアルスタンバイ」の略称で、ざっくり言えば2枚のSIMを同時に運用できる機能のことだ。「SIM」とは、電話番号やIMSIといった利用者を識別する情報が記録されたICカードであり、通話や通信を行うために必須。日常的には、契約している「通信プラン」とほぼ同義であると考えて問題ない。つまり、新しいiPhoneでは、2つの通信プランを同時に使えるようになったと言い換えられる。

例えば、NTTドコモやau、ソフトバンクなどで契約している電話番号を使いながら、データ通信だけはプリペイドで購入したプランを使用できる。これが役立つのは、海外を訪れる場合だ。「緊急時の電話はいつもの番号で受信しつつ、現地の安価なデータ通信を利用する」といった運用が想定できる。AndroidのSIMフリースマホでは、すでにお馴染みの便利機能だったが、ついにiPhoneでも使えるようになったわけだ。

ただし、日本で販売されているiPhoneの場合、トレイに2枚のSIMカードを挿入できるわけではなく、「eSIM(イーシム)」を利用することになる。eSIMとは、抜き差しできる物理的なカードではなく、デバイスに情報を書き込む埋め込み型(embedded)のSIMだ。そのため、手軽に利用できる通信プランはまだごく一部に限られている。

また、eSIMと言えども、SIMロックの対象であることは変わりない。大手キャリアで購入したiPhone XS/XS Max/XRで利用する際は、あらかじめSIMロックを解除しておくことを忘れずに。

eSIMのプランを国内で使ってみた

さて、今回iPhoneのeSIMを利用する例として、「GigSky(ギグスカイ)」の通信プランを契約して試してみた。その利用方法は至ってシンプル。「App Store」から「GigSky World Mobile Data」アプリをインストールし、通信プランを購入すればよい。

AppStoreからAppをインストール(左)。説明書きには「モバイルデータのみのプランがアクティベートされる」とある。インストールが終わったら「開く」をタップ(中)。起動したら「続ける」をタップ(右)

通知を許可(左)。位置情報の使用を許可(中)。プランを選択して「購入」をタップする(右)

今回検証で使用したのは、日本で使える「Asia Pacific」プラン。対象国は、「アゼルバイジャンアルメニアインドオーストラリアグアム島、クリスマス島シンガポールスリランカ、タイ、トルコニュージーランドバングラデシュパキスタンベトナムマカオマレーシア、中国、台湾、日本、韓国、香港」の21か国となっていた。

メールアドレスとパスワードを入力(左)。メールに届くURLにアクセスして(中)、本登録が完了(右)

まずアカウント登録を済ませて、その後に支払いを行う。支払い手段は「Apple Pay」のほか、クレジットカードを登録して利用できる。筆者はまずApple Payに登録してあるau Wallet クレジットカード(mastercard)を試したが、こちらは弾かれてしまった。続いて、三菱UFJで発行したVISAカードを登録して支払いを行ったところ、こちらは正常に処理された。仕様なのか、ただの不具合だったのかは分からない。

支払い方法を登録し、「データを購入」をタップ(左)。「ラベルコピーして」をタップ(中)、「続ける」をタップ(右)

回線の名前をタップ(左)すると、名称を変更できる(中)。問題なければ「続ける」をタップしよう(右)

「”副回線”をモバイルデータ通信にのみ使用」を選択し、「続ける」をタップして完了(左)。GigSkyアプリでは契約が完了したプランの情報(残り時間など)を確認できる(中)。iPhoneの設定にある「モバイル通信」の画面で「副回線」が表示された(右)

GigSkyのプランに合わせ、副回線をモバイルデータ通信のみに使用するよう設定した。通信プランの設定が完了するまでしばらく待機しよう。eSIMの設定が完了すると、アンテナ表示が2列になり、GigSkyのプランでデータ通信が行われるようになる。

通信速度は、さすがにau回線に比べるとやや遅いが、耐えられないほどではない。ちなみに、副回線を使用したくないタイミングでは、設定アプリから副回線をオフに切り替えることも可能だ(主回線はオフにできなかった)。なお、eSIMは複数登録しておけるが、1度に利用できるプランは1つだけなので気をつけよう。

ロック画面やコントロールセンターでは、GigSkyの文字が確認できる(左)。副回線のオン・オフは「モバイル通信」>「副回線」の中から変更可能だ(中・右)

GigSkyの通信料金は一般的なプリペイドSIMと比べると割高だ。とはいえ、購入手順が全て日本語表示で確認でき、iPhone一つでプリペイドの通信プランを追加できるのはありがたい。いざというときに役立つはずだ。今後、対応サービスが増えていき、より安価に利用できる選択肢が増えることを期待したい。

なお、eSIMデフォルト回線の設定に関しては、Appleの公式サポートページに詳細な記載があるので、こちらを参照するとよい。今回は検証できなかった「2つの電話番号でメッセージを使い分ける方法」などについても解説がある。

関連サイト
eSIMデュアル SIM を活用する - Apple サポート

text井上晃(ゴーズ)
(d.365

掲載:M-ON! Press