米国では縮小傾向なのはなぜ?

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ブラックフライデーは米国クリスマス商戦の皮切り

今週金曜日、11月23日は米国で恒例の“ブラックフライデー(Black Friday)”となります。日本ではまだそれほど馴染みがありませんが、米国では11月第4金曜日(最終週末の場合が多い)に小売店などで大規模な安売りセールが実施されます。これがクリスマス商戦の幕開けを告げるイベントとして定着し、多くの消費者が小売店へ“殺到する”光景が毎年報道されます。

日本では似たようなシーンとして、年始に福袋を買うために百貨店に行列を作りますが、米国のブラックフライデーはその何倍もの規模になります。また、ブラックフライデーは感謝祭(Thanksgiving Day)の翌日に当たるため、人々の消費マインドも通常より寛大になると言われています。

なお、このブラックフライデーの「ブラック」ですが、これは暗黒を意味するものではありません。金融市場では、「ブラックマンデー」(1987年10月19日)や「ブラックサースデー」(1929年10月24日)に代表されるように、歴史的な株価暴落を指す“暗黒”の意味で用いられています。

しかし、ブラックフライデーの「ブラック」は小売店の収支が一気に“黒字化”することを意味しています。それまでが赤字続きというわけではありませんが、売上が大きく伸びるこの日、利益が急増することは間違いなさそうです。

日本では今一つ定着していないが…変化の兆しも

さて、米国では国民的なイベントになったにもかかわらず、日本ではブラックフライデーが浸透しませんでした。いや、実施しなかったという方が正しいでしょう。

明確な理由は不明ですが、第4金曜日とはいえ11月はまだクリスマス商戦には早いと判断されたのかもしれません。また、11月末はまだボーナスが支給されていない企業が圧倒的に多いことも理由として挙げられます。

そんなブラックフライデーですが、日本でも徐々に根付く気配があります。

大きな契機は、一昨年(2016年)にイオンが初の試みとして導入した「日本版ブラックフライデー」でした。その規模は、グループの約20,500店舗でブラックフライデーを含む週末の3日間にわたり実施するなど、かなり力の入った取り組みでした。また、昨年(2017年)も同様に実施され、しかもブラックフライデーの前日(木曜日)に「ブラックフライデー フライングセールス」と称した“前夜祭”まで開催する入れ込みようでした。

そして、今年(2018年)も、ブラックフライデーが祭日(勤労感謝の日)に当たるため3連休になることもあり、力の入った「イオン ブラックフライデー」セールスが実施されます。

今年はついにあの企業も!

では、イオン以外の小売企業はどうでしょうか?

結論から言うと、ブラックフライデーを特売セールスの“ネタ”に使う企業は続々と増えています。

特に注目したいのが、昨年までブラックフライデーへ明らかに背を向けていたセブン&アイ・ホールディングスがついに取り組みを開始したことです。傘下のイトーヨーカドーでは11月22~26日に“堂々と”ブラックフライデーを掲げたセールスを実施します。その他、しまむらも昨年以上に注力していますし、ユニクロブラックフライデーという呼称こそ使用しないものの、「誕生感謝祭」と銘打った特売を行います。

さらに、今年はこうした実店舗だけでなく、数多くのオンラインショップでもブラックフライデー特売を実施することや、旅行関連のオンラインショップ(格安ツアーやホテル等)が急増していることも特徴です。

実は本家本場の米国では縮小傾向へ。なぜ?

各店舗の広告を見ると、中にはブラックフライデーの意味をどこまで理解しているのか疑問を感じずにいられないものも散見されます。しかし、特売実施のネタに使うにせよ、日本でもブラックフライデーが浸透し始めていることは間違いありません。

ようやく、日本のクリスマス商戦の慣習も、米国に追い付こうとしているのでしょうか。

ところで、本家本場の米国では、最近はブラックフライデー商戦が縮小気味となっている模様です。原因は、アマゾン等のネット販売の拡大により、実店舗の閉鎖が相次いでいるからです。実際、今年は百貨店「シアーズ」を展開する流通大手のシアーズ・ホールディングスが破産法を申請するなど小売業界の変革スピードは年々加速しています。

このままだと、数年内には小売店に殺到するブラックフライデー恒例のシーンが見られなくなるかもしれません。こう考えると、浸透し始めた日本は、やっぱり遅れているのでしょうか?