J1第33節、清水対神戸の終盤に乱闘騒動が勃発、最後は荒れ模様…後半ATの流れを追う

 後半終了後、4分だったはずのアディショナルタイムが18分超え。GKの劇的な同点ゴール。そして両チームによる乱闘騒動――24日のJ1第33節、清水エスパルスヴィッセル神戸は3-3の引き分けに終わったが、その結果以上に終了間際の展開が大きな注目を集めた。一体、何が導火線となってしまったのか。アディショナルタイムを時系列に追って検証した。

 試合は前半26分、MFアンドレス・イニエスタの絶妙な浮き球スルーパスをMF藤田直之ダイレクトシュートで決めて神戸が先制。39分に清水MF河井陽介が同点ゴールを決めるも、神戸はFW古橋亨梧、MF三田啓貴のゴールで3-1と再びリードした。そのまま迎えた後半38分に藤田がこの日2枚目の警告で退場したが、ここまでは試合は荒れ模様ではなかった。

 清水FWドウグラスが同42分にゴールを決めて3-2と1点差に詰め寄ると、神戸のフアン・マヌエル・リージョ監督は後半45分にFWウェリントンピッチに送り出し、前線でのキープを目論む。そして会場で発表されたアディショナルタイムは4分。ここから詳細を追ってみよう。

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アディショナルタイム(以下AT)1分:ウェリントンのファーストプレー。ロングボールに対してボールを収めようとしたが相手マーカーに手をかけられてファールファールを得たもののウェリントンは不服そうな表情とジェスチャーを見せる

 この時点でもお互い激しくも冷静なファイトを見せていた。そして大きな分かれ目となったのは、最終盤を迎えたこのシーンだ。


後半AT8分過ぎ頃から異様なムード、両チームから苛立ちを隠せない状況に

■AT3分19秒:ハイクロスに競り合った清水MF河井陽介と神戸DF橋本和の頭が接触。河井はピッチに倒れ込むなか、ボールを奪った神戸側は敵陣に入りボールキープ。清水の守備でプレーが切れたのは3分40秒のこと。イニエスタも心配そうに河井らを見つめている。

 頭の接触だったため、流血した河井の意識はもうろうとしており、主審や選手ともに即担架を呼ぶ状況に。しかし清水の主将であるMF竹内涼はプレーを止めなかったことを不服に思ってか、主審に食って掛かっており、鄭大世になだめられた。清水のスタッフは河井を動かさず治療することに。また橋本も側頭部から流血していた。

■AT7分:河井を担架に乗せる。MF兵働昭弘を3枚目のカードで投入。

■AT8分3秒:異様なムードのなか、清水ボールで試合再開。パワープレーに対して神戸はひとまずしのぎ、GK前川黛也がボールキャッチする。この時点で8分26秒が経過し、前川がロングボールを敵陣に蹴り込む。しかしここではタイムアップの笛が鳴らなかった。

■AT8分51秒:再び清水がハイクロスを送り込む。その際DF立田悠悟がFWルーカス・ポドルスキと競り合いにいったが、身体を入れたポドルスキの肘が腹部から胸部付近に入る形となり、倒れ込む。この後プレーは続いたが、ヨンセン監督含む清水陣営がテクニカルエリア内に飛び出して抗議する。治療中、ウェリントンが主審に手で「4」のジェスチャーをする。

 この辺りで、明らかに両チームから苛立ちを隠せない状況となった。立田はAT11分43秒に担架でピッチ外へと運ばれた。


後半AT13分にGK六反が劇的同点ゴール、直後にウェリントンタックルから騒動

■AT12分4秒:試合再開。右からのクロスを鄭大世が頭で合わせるが、前川がキャッチ。

 神戸はその後3度にわたって大きくクリアしたが、タイムアップの笛は鳴らなかった。そしてAT13分9秒、清水は左CKを得ると、とんでもない展開が待っていた。

■AT13分30秒:ゴール前に上がっていた清水GK六反勇治のヘディングシュートが決まり、3-3の同点に。

 清水にとってはあまりに劇的すぎる同点劇に沸く一方、神戸側は呆然。キックオフポドルスキは怒りを込めたロングシュートを放ってゴールキックとなったが、それでも試合は終わらず、ポドルスキが呆れたような笑顔を見せる。そしてその直後、双方の怒りが爆発してしまった。

■AT14分43秒:左サイドスローインをMF石毛秀樹がキープしようとしたところ、ウェリントンが身体ごとぶつけてタックルイエローカード。清水ベンチがピッチに出るほどの剣幕で飛び出すと、ウェリントンが応戦。ドウグラスイニエスタらが仲裁するも、別の場所ではポドルスキが清水関係者ともみあいになり、警備員が飛び出す事態に。神戸DF三原雅俊、DF那須大亮、イニエスタらは主審に抗議する。

■AT17分20秒:抗議を続けたウェリントンに2枚目のイエローカードが提示され、神戸は二人目の退場。怒りが収まらないウェリントンは止めに入った相手GK六反を投げ飛ばす。この判定には三田も主審に食って掛かる。


後半AT18分過ぎ…ついに試合終了のホイッスル ポドルスキが主審に不満をぶつける一幕も

■AT18分40秒:清水が左サイドで得た直接FK。兵働が蹴り込んだボールを神戸が跳ね返したところで試合終了。しかしポドルスキが主審に不満をぶつけ、イニエスタやGK前川黛也、チームスタッフらが止めに入らざるを得ない状況となる。また清水DF松原后に言葉をかけられ、ポドルスキが再びヒートアップする場面もあった。

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 接触プレーが意図的か否かはさておき、清水としては河井と立田を負傷退場に追い込まれた挙句、ウェリントンが石毛と六反に対して行なった行為は到底許せなかったものだろう。

 一方の神戸は引き分け以上ならJ1残留確定の状況で、アディショナルタイム4分がいつまでも終わらなかったことに怒りが溜まったと見られる。試合後のフラッシュインタビューで清水のヤン・ヨンソン監督が「レフェリーに対し、相手選手が残念な気持ちを持つのは当然だが、我々は勝ち点を取れたという意味で良かった」と言及したほどだった。

 負傷者の治療のため時間を止めたレフェリングは、妥当なものだったかもしれない。しかし、お互いが熱くなっている状況をゲームコントロールできなかった側面があったのも確かだろう。今季限りでの現役引退を表明している兵働のIAIスタジアム日本平ラストゲームだったが、誰もが予期せぬ展開となってしまった。


Football ZONE web編集部)

清水対神戸の終盤に乱闘騒動が勃発【写真:Getty Images】