腕時計投資家の斉藤由貴生です。2017年は多くの腕時計が値上がり傾向でしたが、まもなく終わる2018年においても、その流れは続いています。

 腕時計に詳しくない方からすると、「ただでさえ高い腕時計が、値上がりする訳がない」と思われるかもしれません。しかし、これまで多くの腕時計が値上がりしており、そういった現象は20年前から認識されている事実なのです。

 20年前の時計雑誌を国立国会図書館などで閲覧すればわかるのですが、当時においても「定価より高く販売されている」という現象がすでに起きていました。また、その時代の販売価格を見ると、今の基準と比較して安いため、驚くことになるかもしれません。

 例えば、2002年のある雑誌で、中古62万円と紹介されていたパテックフィリップは、現在、250万円以上でないと手に入りません。どちらも売値ですから、「250万円で売られていたとしても、62万円ぐらいでしか買い取ってもらえないのでは?」と思う方もいるかもしれません。

 しかし、「それはない」と断言します。なぜなら、もしもそんなことがあったならば、「私がもう少し高く買う!」と思うぐらい安いからです。おそらく、現在250万円という相場の腕時計を62万円で買い叩くような悪徳業者はいないと思いますが、売る値段は持ち主次第なので、そういった腕時計をお持ちで手放す際は、売り先は複数まわるのがいいでしょう。

 腕時計が「高くなった」ということは、もともとは、その価格よりも「安かった」ということ。ですから、「これから高くなりそうな腕時計」を見極めることができれば、かなりお得に腕時計を楽しむことができるといえます。

 ということで今回は、過去に私が「高くなりそうな腕時計」を見極めた事例をご紹介したいと思います。

◆値上がりする前の腕時計を見極めるために大事なこと

 かれこれ16年前のこと。高級腕時計に憧れていた私は、毎日腕時計雑誌を眺めていました。当時の私は10代でしたが、ホームページ制作などである程度の貯金があったため、頑張れば数十万円単位の腕時計が購入できる状態だったのです。

 しかし、その際、人気の腕時計は定価よりも実勢価格が高いという状態で、なんだかお得感がありませんでした。どうせなら、値上がりする前の腕時計を買いたいと思ったのです。また、当時、すでに生産終了となったロレックスはずいぶん高くなっていたため、私はタイムマシーンに乗って過去に遡ることができれば、それら腕時計を安く買えるのに、という想像を本気でしていました。

 そんな私は、ある日「過去」に向かうのではなく、「未来」に視点を向ければよいのだと気づいたのです。

 その際、私が研究対象としたのは、当時大人気状態だったロレックスエクスプローラー。そして、それをじっくり見つめて、すでに持っていると自己暗示し、その時計の次に何が買いたいのかを想像してみたのです。ロレックスの次に買う時計ですから、対象となるブランドロレックスよりも高い価格帯に位置することになります。その一方で、時計のキャラクターエクスプローラーに近いほうがいいと感じました。

 そして、その結果導き出した答えがパテックフィリップアクアノートだったのです。

◆最上級ブランドなのに中古価格は割安な理由

 当時から、パテックフィリップは雲上時計として「最上級のブランド」と認識されていたように感じますが、今とは違い、多くの人にとって“買う選択肢”でなかったと思います。いい時計であると認識しているものの、「雲上」というように、最上級すぎて自分には関係ないと思っていた方が多かったのではないでしょうか。

 そして、そのような事情であまり需要がなかったため、アクアノートノーチラス(パテックフィリップ)の新品が100万円以下、中古が70万円以下という価格で売られていたのです。

 ノーチラスといえば、現在かなり高い価格帯となっており、人気モデルの相場は中古でも500万円台という水準です。今となっては、若い人からも憧れられているノーチラスですが、2000年代前半においては誰からも見向きをされていませんでした。

 ですから私は、ロレックスより高級(というより最上級)かつ、エクスプローラーキャラクターに似ているアクアノートが、当時のエクスプローラーに対して、たった1.5倍程度の価格で買えるということに目をつけたのです。

 要約すると、「自分がエクスプローラーを持っていたら、最終的にはアクアノートが欲しくなるだろう」という予測を立て、そのアクアノートが相対的に高くなかったことから、買うという判断をしたということになります。

 そして、今ではそのアクアノート250万円以上という水準になっているため、16年前の読みは完全に当たっていたといえます。

 今流行っている腕時計を「自分がすでに持っている」とシミュレーションをして、次にどの時計が欲しくなるかを想像してみると、次に需要がある時計がわかるかもしれません。

 これは、あくまで私の個人的な経験ですから、そういった想像をしたところで、必ずしも次に流行る時計を当てることができるとは限りません。しかし、いろいろな想像をするのは楽しいので、より腕時計を楽しむきっかけになっていただければ幸いです。 

斉藤由貴生】
1986年生まれ。日本初の腕時計投資家として、「腕時計投資新聞」で執筆。お金を使わず贅沢する「ドケチ快適」のプロ。腕時計は買った値段より高く売却、ロールスロイスは実質10万円で購入。著書に『腕時計投資のすすめ』(イカロス出版)と『もう新品は買うな!』がある

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