▽始動から5試合を戦い、4勝1分けの無敗で2018年を締めくくった森保ジャパンロシアワールドカップを終え、それまでのメンバーから一新された日本代表の面々は、どこか閉塞感があったこれまでと比べても期待感が充満している。

▽MF中島翔哉(ポルティモネンセ)、MF南野拓実(ザルツブルク)、MF堂安律(フローニンヘン)の2列目を託されている3選手がこれまでは際立っており、若さ、フレッシュさでも期待を抱かせているが、その期待の渦中に入り込みそうな選手が川崎フロンターレのMF守田英正だ。

▽2018年、流通経済大学から川崎Fに加入した守田。大学No.1ボランチとして大きな期待が寄せられる中、「ケガをした選手の代わりに入った時に、その選手と同じぐらい、それ以上のクオリティでやれることが、求められている部分だと思う」と入団時に謙虚な姿勢で語っていた。

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▽その言葉の通り、守田はシーズン開幕前に行われたFUJI XEROX SUPER CUP 2018で、右サイドバックで先発したMF田坂祐介に代わる途中出場でいきなりデビュー。ユーティリティ性を買われての起用だった。

▽J1王者として川崎Fが初めて臨むシーズン。ボランチには、MF大島僚太とMFエドゥアルド・ネットが君臨していた。J1優勝に導いた両ボランチの牙城を崩すことは簡単ではなかったものの、守田は途中出場で確かな経験を積む。

▽そして、第8節のベガルタ仙台戦でJ1初先発を経験。そこから3試合連続で先発のピッチに立つ。そんな中、ロシアW杯が終了した夏、転機が訪れる。エドゥアルド・ネットの名古屋グランパスへの移籍だ。
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▽中盤の守備の要であったエドゥアルド・ネットの退団を受け、その位置で起用されたのは守田だった。「自分は守備で活躍して、守備で名を売って行きたい」と入団前に語っていたが、その言葉通りまずは守備面でチームに貢献した。

▽当初は大きな穴になるかと思われたエドゥアルド・ネットの移籍だったが、持ち前の運動量とハードな守備で守田がハマった。まだプレーに粗さこそ目立つものの、ルーキーであることを考えれば、この先の伸び代と考えて良いだろう。

▽そして、このボランチ起用が守田の成長を加速させる。コンビを組むのは大島。日本代表にも何度も招集され、川崎Fにおいては攻撃面で大きな役割を担っている。守田は「積極的にシュートを打ってゴールを決めたり、スルーパスをしてアシストするという部分が課題」と入団時に口にしていたが、大島の横でプレーすること、そして川崎Fというチームでプレーすることで自身を成長させ、ひたむきな努力を続けた。そして、その成果が花開く。

▽第13節以降は全試合に先発出場。2度の途中交代はあったが、それ以外はフル出場を果たし、川崎FのJ1連覇に大きく貢献した。そして、9月には追加招集ながら日本代表にも呼ばれ、途中出場でデビュー。そして11月シリーズにも追加招集されると、20日に行われたキルギス代表との一戦で、先発デビューを果たした。

キルギス戦での守田のプレーは出色の出来だった。コンビを組んだMF三竿健斗(鹿島アントラーズ)は、守田と同様に守備を得意とするボランチ。しかし、互いに攻撃でも特徴を出そうとバランスを取りながらプレーしていた。
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▽守田は川崎Fの試合でも見せるように、常に首を振って周りの状況を確認。チャンスがあれば、縦パスを供給するなど、攻撃にも絡んだ。また、三竿が攻撃に出るときはしっかりと残り、中盤に蓋をした。そして、2人が連動してボールを奪うシーンも見られた。守備を得意とする若い2人のコンビだったが、プレスからのショートカウンターという点では、光明も見えた。

川崎Fという特殊な攻撃のスタイルを持つチームにおいて、周囲の選手との距離感や立ち位置を把握することはとても重要だ。そして、それを吸収し、チームでも日本代表でも守田は発揮した。

▽その一方で課題も見えた。「後半のラスト10分は自分のミスが続いてボールの奪われ方が悪かったので課題だと思います」と試合後に語っているが、中島、堂安、南野、大迫と日本代表の主力になるであろう4選手が入って以降は、前線との距離感に苦労した。また、ボランチのコンビがMF柴崎岳(ヘタフェ)に代わったことも影響しただろう。海外でプレーする選手たちとの距離感、スピード感に驚いたはずだ。
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川崎Fとはまた違うスピード感、距離感を体感した守田。これまで追加招集で2度呼ばれている状況を考えれば、来年1月のアジアカップに招集される可能性は五分五分だろう。しかし、この先の伸び代という点では、大きな期待が持てる選手だ。

▽この1年で一気にプレーする環境が変わった守田。「ボールを奪って、そこから攻撃の起点になるのがスムーズだと思います。そこが目指すべき所」と語っていたが、着実にそこに近づいている。守田の飽くなき向上心でひたむきな努力を続ければ、J1王者、そして日本代表の舵取り役を担う日もそう遠くはないだろう。
《超ワールドサッカー編集部・菅野剛史》
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