DSC_0488

10月シリアの武装グループによる3年以上の拘束生活から解放された、ジャーナリストの安田純平さん。彼の行動について「国益」を問う元プロ野球選手長嶋一茂氏の発言に対して、メルマガ『ジャーナリスティックなやさしい未来』の著者でジャーナリストの引地達也さんは、違和感を覚えながらも、一般の人々が長嶋氏と同じような感覚を持つことについて冷静に分析し、さらに大阪「黒門市場」のインバウンド成功例の話をひきながら、ジャーナリストという職業の役割についても考察しています。

知ることから始まった大阪・黒門市場の再生

内戦中のシリアで武装勢力に拘束されたフリージャーナリストの安田純平さんが解放されたことで、テレビに出演しているコメンテーターや識者といわれる方々からいろいろな所見が出されている。

ジャーナリストの価値そのものがソーシャルメディアの発展やマスメディアの衰退と言われる時代に落ちていく中にあって、そのコメントにはやはり世相を映し出す日本社会の心情も浮かび上がってくるようだ。

プロ野球選手の長島一茂さんが、安田さんの行動で導かれる国益を問いネットメディアで賛否が繰り広げられた。私も違和感を覚えたが、長島氏の発言は多くの人にも宿り始めた感覚かもしれない、と冷静になって考えてみる。

それは、ネット社会の広がりは、自分とは遠いところとつながっていることで豊かさを享受しているはずなのに、自分とは関係のないところは「知らない」という感覚なのだろう。

先週末に約20年ぶりに大阪の黒門市場を訪れ、その様相の激変にはのけ反る程驚いた。外国人観光客の人波、そしてその人波を売上に変えようとする商都、大阪のプライドのぶつかり合いに圧倒されてしまった。

フルーツを使ったデザートや肉や海鮮物を焼いたBBQ料理、どれも歩きながら食べるには単価は高い。しかし中国語を話す一団(私が見る限り一人旅はいなかったように思う)は楽しそうに現ナマのお金を出し、そこで焼いたホタテや神戸牛に食らいつく。気持ちの良い消費行動だ。

かつて、少しさび付いたような印象だった黒門市場が息を吹き返したようで、インバウンド対応として、黒門市場の協同組合が一体となって取り組んできた成果だということを後から知った。日本政府観光局は「商店主たちに備わった商売への強い意欲、大阪の商人魂」の結果と評する。

つまり、「外国人観光客が増えていることに気づいた翌年に和服姿で外国人観光客を案内するコンシェルジュを商店街に配置。コンシェルジュが案内の途中で外国人観光客アンケートを実施するようにし、アンケートで得た要望内容を分析。どのようにしたら満足度向上につながるかを検討し、さらなる対応策のアイデアを練った」という。

そして生まれたのが、「食の好みに合った商品」「気軽に食べ歩きできるよう串焼きにする工夫」「店先で食べられるようテーブルを置く」だ。 こうして、商店街は活気づいた。

消費者のニーズという情報を得て、分析して行動に結びつけたわけで、私たちは常に新しい情報をもとに、その繰り返しを行っている。特に知らないことを知ろうとする努力は、時には知力を要したり、時には体力を要する場合もある。