47都道府県で一番人口が少ない鳥取県で、衝撃の事実が判明! カレー専用米が独自開発されていた!

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全国の政令指定都市を対象とした家計調査で、鳥取の人はカレーが大好き!ということが判明した。その並々ならぬ情熱はついに県までをも動かし、カレーに合う米の新種まで誕生させることに。今、鳥取県カレー大国の特産品として、専用米の全国発信を狙っている。

田中農場
プリンセスかおり真空パックカレー
300g 500円/450g 600円

いち早くプリンセスかおりの生産に着手した田中農場では、電話・FAXでの通信販売に対応している。詳しくは同社のホームページから。

そもそもカレーに合うお米ってナンダ?

どの家庭でも出てくる“超”身近な食べもの、カレー。元々は香辛料を多用するインド東南アジアの伝統料理だが、日本的な「ザ・カレーライス」はイギリスが由来とされている。インドの旧宗主国、イギリスが当時のカレーを欧風にアレンジし、とろみがかったルウに仕立てた。

その後、日本はイギリス式のカレーを西洋料理として取り入れ、母が作るカレーや給食で食べるカレーのような定番の味に進化をなした。出汁が利いた蕎麦屋のカレーはその最たるもの。日本ならではの発展形だろう。

今やラーメンと並ぶ日本の国民食だが、いまいちこだわりが少なく感じるのがライスのほう。普段食べるお米を使って、いつもどおりの炊き方で作るカレーライスは、食べ慣れていてたしかに美味い。ところがインド料理店や東南アジア系のレストランなどでは、香りが付いたお米が使われていることが多く、日本的なカレーライスとは異なる「本場な味」を感じることができる。

大真面目に「そもそもカレーに合うお米ってナンダ?」を考えてみると、鳥取県にたどり着いた。

総務省の家計調査(全国の県庁所在地が対象の調査)で、鳥取市は1世帯あたりのカレールウ年間購入額・消費量がどちらも全国トップという、カレー大好きな土地柄。その鳥取県カレーに合う米品種を独自開発し、「プリンセスかおり」と名付けてブランド化した。

プリンセスかおりは、インドなどで高級米として扱われる香り米「バスマティー370」の系譜を継ぐ「プリンセスサリー」と、コシヒカリ系の大粒品種「いのちの壱」を交配して生まれた長粒種。バスマティー系の豊かな香りと、コシヒカリ系のもちもち感を併せ持つ。言わば、日本人好みの食感を持ったカレー米だ。

そのため、インド東南アジア系のカレーはもちろん、日本的なカレーライスにも相性がぴったりと、鳥取はもとより、全国のカレー店やカレーファンから注目を集めている。


カレー王国の威信をかけて挑んだ奇跡の米

メイドイン鳥取の香り米 「プリンセスかおり」の特徴
・白米はコシヒカリよりも長粒でバスマティーよりも短い
・炊飯するとポップコーンのような香りがする
コシヒカリよりももちもちする

このプリンセスかおり、生産は鳥取県だけで行われており、鳥取市内の農産物直売所「わったいな(鳥取県鳥取市賀露町西3丁目323)」で購入することができる。

また、生産者によるインターネット販売も行われており、地方からの購入も可能。上記の「田中農場」ほか、「とっとり市」でも取り扱っている。さらには鳥取市内のレストランでもプリンセスかおりの取り扱いメニューが増えてきているなど、県を挙げての勢いを感じる。

なお、余談だが、プリンセスかおりの命名は現職鳥取県知事によるもの。カレー県の顔(かお)としての期待も込められているそう。

そんなプリンセスかおりを開発したのが、鳥取県農業試験場の研究員、中村広樹さん。およそ十年ほど前に、同県の町おこし団体「鳥取カレー倶楽部」の池本百代会長(当時)から相談を受けて、研究に取り組んだ。それまで香り米と言えば輸入米がほとんどで、長粒種独特のパサつきは、日本人の好みが分かれるものだった。

1993年に起きた記録的な冷夏による米不足現象では、輸入の多くをタイなどの外国米に頼っていたため、当時を知る人には香り米のイメージを重ねる人が少なくなかったと言う。そのイメージを、コシヒカリ同等以上のもちもち感を取り入れることで払拭し、ブランド米として位置付けることに成功した。鳥取県が挑んだ、長い研究開発の賜物である。

母はクォーター米 父はレア日本米
成熟期はコシヒカリと同時期ながら、同種よりも収穫量がやや少ない希少性も。
プリセンスかおりは、プリンセスサリーといのちの壱の交配によって生まれた新種。前者はインド種バスマティー370と日本晴の交配で生まれたサリークィーンを祖に持ち、後者はコシヒカリルーツにある。その両種を掛け合わせることで特徴がうまく合わさり、世界的にも珍しい、もちもちして豊かな香りを持つ長粒種が誕生した。
鳥取県農業試験場は、米、麦、大豆などに関する技術開発、研究を行う県の研究機関。水田を持ち、稲作研究での品種改良に務めている。

Profile

中村広樹研究員:鳥取県農業試験場/開発者
鳥取大学農学部、植物遺伝育種学を専攻し、卒業後は鳥取県農業試験場にて研究を行う。お米を愛し、鳥取に恋する42歳は、1日のほとんどをプリンセスかおりと過ごす。

プリンセスかおりは日本を代表するカレー米に成長する

町おこしからスタートした カレー米(ライス)の開発
プリンセスかおりの開発は、カレー県としての悲願だった。当時を知る元鳥取カレー倶楽部会長(現・鳥取カレー研究所代表)池本百代さんは、鳥取県カレー、そしてプリンセスかおりについてこう語る。

Profile
鳥取のカレーは各家庭でこだわりの味があります

池本百代代表:鳥取カレー研究所/アイデアの母
「鳥取カレーの素」などを販売する鳥取カレー研究所では、イベント事業も盛ん。鳥取カレーの全国発信に尽力を尽くすキーマン。

カレーで町おこしをしようと、2005年に鳥取商工会議所の青年部などが中心となって鳥取カレー倶楽部を発足しました。当時から鳥取市カレールウ年間購入額・消費量が全国1位だったのがきっかけです。地域活性化のためにカレーの名店マップを作り、PRしました。鳥取は夫婦共働きで働く世帯が多い県です。そのため、手間なく作れるカレーが家庭の味として定着しています。ですが、カレーは好きでもお米への関心が薄い。そこで鳥取県カレーに合うお米作りを提案しました」

池本さんは鳥取県の家カレー事情について、お母さんごとの味、具材のこだわり、父親も参加する「お父さんが作るカレー」も、カレー人気を後押ししていると言う。『鳥取カレーの素』は、そんな池本さんの鳥取愛、カレー愛から生まれた。もちろん、プリンセスかおりとの相性は抜群だ。

昨年よりも20倍育てる農家も注目するプロジェクト
実際に生産者もプリンセスかおりに注目している。鳥取県八頭郡で農業を営む田中農場代表・田中里志さんは、2017年プリンセスかおりを500Kg生産、手応えを感じた2018年は、昨年比20倍もの10トンを手がけるなど、大いに期待を寄せる。

Profile
田んぼにも、プリンセスかおりのにおいがします

田中里志代表:田中農場/生産者
米作りを中心に、特別栽培農産物の生産を手がける田中農場。ドレッシングや味噌などの加工品も開発、販売している。全国への通信販売あり。

プリンセスかおりはミルキークイーンコシヒカリの品種改良で粘りの強いお米)と同等の食感を持ち、噛むと押し戻す弾力感が魅力です」と、お米作りのプロならではの特徴を語る。実際にプリンセスかおりはコシヒカリよりもアミロース含有率が2%ほど低く、その結果、もちもちとした食感になるとのこと。

さらには「生産工程は無洗米ではありませんが、研がずに炊飯しても味や香りの仕上がりに変化が出にくいです。お米の吸水性が良く、炊飯器で早炊きしても芯が残りにくいのも特徴です。塩むすびにしても美味しいですよ」と、一般家庭での扱いやすさも生産者のお墨付き。幅広い可能性を感じる。

鳥取の肥沃な土地に、広大な水田が広がる(写真は鳥取県農業試験場)。

プリンセスかおりがお店の看板になる日も近い
プリンセスかおり誕生の背景には、アイデアを出す人、研究する人、生産する人が三位一体となって取り組んだのがよく分かる。きっかけとなった町おこし事業から15年、全国に発信できるメイドイン・鳥取のブランドが完成した。

まれに東京のデパートなどで催される特別展などで、プリンセスかおりをPRすることがあるという。そこで試食した事業者や一般消費者からの反響は上々とのこと。近い将来、「プリンセスかおりを使ってます」という、レストランが全国で現れるかもしれない。カレー好きなら今のうちから知っておこう

カレー好きな県から生まれたカレーに合うお米は、全国紙でも取り上げられるほど注目度が高い。

世界一美味しいカレーが食べたい】

パパもママも子どもも、そしておじいちゃんおばあちゃんも、みんなカレーが大好きです! たぶんカレーが嫌いな人なんてこの世にいません(断言)。本誌スタッフも当然全員カレー好き。でも、うちは残念ながら食の雑誌ではないので、「このカレーが星3つ」とは決められません。なので、本誌スタッフ全員、自分にとっての世界一美味しいカレーを探しました。皆さん、ぜひこの特集を読んだ後、の舌で確かめてみてください。今回紹介する世界一美味しいカレーの数々を。

※『デジモノステーション2018年12月号より抜粋。

text早坂英之

photo下城英悟(GREEN HOUSE)
(d.365
掲載:M-ON! Press