レクサス」といえば、言わずと知れた日本を代表する高級車ブランドだ。国内はもちろん、世界的にもメルセデス・ベンツBMWアウディといった名だたるブランドに次ぐ存在として認識されつつあり、堅調に増加を続けている年間の販売台数はそれを裏付けているといっていいだろう。

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長い歴史を持つ伝統のブランドたちと肩を並べるまでになったレクサスだが、その歴史は30年弱と、意外なほど短い。なぜ、たったこれだけの時間で世界に受け入れられるブランドへと成長できたのだろうか。その秘密を一言でいえば、それは“日本らしさ”を追求してきたことだ。

25年以上の経験を持つ、精通した「匠」が生み出す高品質
日本の工業製品で真っ先にイメージされるのは、品質の高さだろう。レクサスではそうした期待に応えるべく、走行性やハンドリングといった基本性能だけでなく、車内の雰囲気や内装の触り心地といったドライバーの感性に訴えかける部分にまで踏み込んだ作り込みを徹底している。安心や安全を感じながらドライブを楽しみ、車内にいる時間を快適に過ごせるよう、考え抜かれた上で作られているのだ。

こうしたレクサスのプロダクトを製造する工場のひとつ、福岡県宮田工場で活躍する技師は高度な専門トレーニングを何年も受けており、もはや担当する工程においては「職人」と呼べるほどの技術を持っている人材ばかり。中でも、25年以上の経験を持ち、その道に精通した「匠」ともなれば、細部への注意力や手先の器用さも極まっている。

その技量を示すわかりやすいエピソードとして、認定試験で用いられる独自のテストがあげられる。その一つが折り紙だ。合格条件は利き手でない側の片手のみで90秒以内に複雑な形を見事に完成させられること……それほどにレクサスが求める技量の水準は高いのだ。

カーデザインをアートにまで高めたい

こうしたこだわりはデザインにも及ぶ。「侘び寂び」や「粋」を大切にする日本ならでは美感を追求しているのだ。

一例として、フラッグシップセダンの『LS500』を見てみよう。一見、慎ましやかにみえるボディも、地を低く流れるようなラインが走りへの期待感を高めてくれるし、「スピンドルグリル」などのデザインアイコンや独自のカラーバリエーションがクルマとしての個性を引き立てている。そうした個性の主張がさりげないからこそ、高級感のなかにも親しみやすいキャラクター性が醸し出されているのだろう。

インテリアには、さらにオンリーワンの価値を高める細工の数々が。たとえばステアリングやドアトリムに見られる「縞杢(しもまく)」とよばれる本木目は、木材を薄くスライスし、ひとつひとつ組み合わせて作られたもの。天然の木目を活かしながらも、人が手を加えることでさらなる美しさを追求する。まるで日本庭園を造るかのような美意識だ。完成までに要する時間も38日と、たった一部品の、それも一か所の装飾に要する手間暇とは到底思えない。

最上位グレードの"EXECUTIVE"のみ、メーカーオプションにて、この切子調カットガラスのドアトリムオーナメントパネルが選択可能となっている。クルマの車内、それも手が当たりやすい箇所に大きなガラス部品を配置しているというだけでも異例だが、切子はもともと伝統工芸品に使用される技術。自動車部品ではまずお目にかかることはない。しかも、切子の周囲には折りひだが美しいハンドプリーツが組み合わさり、光の明暗が生み出すグラデーションをさらに際立たせている。プリーツ自体も丁寧にハンドメイドで生地を折る作業が、ごく少数の人々の手でで行われているという。こんな細部にまで匠の技を投入して拘り抜いたからこそ、レクサスは独自の価値を作り出すことに成功しているのだ。

ここまで来ると、もはや工業製品と言うよりは作品と呼びたくなる。レクサスのモノ作りには「日本らしさ」が貫かれていたからこそ、世界中で愛されるブランドになったに違いない。和の心が日本だけでなく世界で受け入れられたのだと思うと、胸が熱くなってくる。

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text石川順一
(d.365

掲載:M-ON! Press