10月27日、日本一のソープ街として知られる東京・吉原で、一大ソープグループである「オレンジグループ」が一斉摘発を受けた。グループ傘下の全8店舗が対象となり、運営会社の社長と幹部、各店舗の店長と従業員ら計21人がいずれも売春防止法違反(売春場所提供)容疑で逮捕されたのだ。

警視庁の広報課によると「各店のソープ嬢が個室で客相手に売春するという事情を知りながら、その場所を提供したことが違法に当たる」のが摘発の理由だという。しかし、そんな“そもそも”の話を、なぜ今になって持ちだしたのか? 風営法に精通する坂本総合法律事務所の弁護士、小西一郎氏が解説する。

「これまで警察は、本番プレイが前提のソープランドを『個室の風呂で、裸の客がムラムラし、女性従業員と同意の上で性行為に至るから売春ではない』という建前で黙認し続けてきました。しかし今回の事件で警察は『オマエたちのやっていることは売春(違法)』と取締り方針を180度変えました。つまり、ソープランドはいつ摘発されてもおかしくない状況になったというわけです」

吉原からソープが消えるのか。吉原の現状について、情報喫茶を15年間営む店主が教えてくれた。

「今、この街には140店弱のソープランドがあります。価格は高級店が総額8万円、大衆店が3~4万円、格安店が2万円前後と大きく3つに分かれる。オレンジさんは新興の激安店で、50分1万2000円(指名料なし、送迎なし、マットプレイなし)という安さを武器に、吉原に価格破壊をもたらした。客入りはよく、グループ8店が軒を並べる通りは『オレンジ通り』と呼ばれてにぎわっていました。面白くないのは、価格で競合する2~3万円台の大衆店。なかには客を奪われ営業不振に陥る店も……。そうした店からのチクリが今回の摘発を呼んだともいわれています」

現在の吉原には、オレンジグループが消えたあとに大幅な値下げを断行し、連日賑わっている店もある。では、オレンジグループで働いていたソープ嬢たちは摘発後、こうした店で働いているのか。120分8万円の高級店の従業員が言う。

「ウチのコの取り分は一回5~6万円、オレンジさんの女のコは7000~8000円ですよ。容姿もサービスもグレードが段違いですからウチでは雇いません。それにオレンジさんは『マットなし・広告なし』の形態だから、マットプレイの技術がゼロで、広告への顔出しもNGのコが多い。これでは吉原では食べていけません。指名ランク上位のコは他店に拾われたでしょうが、大半のコはヘルスやデリヘルに流れたか、業界から足を洗ったと思いますよ」

一方、摘発を免れた店も警察に「ソープは違法」という現実を突きつけられたわけだが、意外にも、ほとんどの店が「オレンジグループは店固有の問題を抱えていたからやられただけ」と摘発を“対岸の火事”と見ている。では、固有の問題とはなんなのだろうか。

「あの店は連れ出しOKという裏メニューを用意していました。人目につかないエレベーターや雑居ビルの階段、公園などの屋外プレイ。公然わいせつですよ」(A店)

「脱税です。オレンジは1店平均で年10億を稼いでいたから追徴課税だけでも莫大。警察の本当の狙いはこれです」(B店)

「吉原最大のグループだから石原都知事に最後っ屁をかまされたんじゃ。退職表明が摘発2日前っていうタイミングがもう」(C店)

「摘発前のある晩、警察の職質を受けたオレンジグループで働く女のコが“いかにも”という感じでヘロヘロだったようで、尿検査をやってみたら予想どおり陽性反応が出たらしい。以来、警察は薬物使用の常態化をにらんで内偵を進めていたと聞きます」(D店)

真偽のほどは不明だが、実にさまざまな噂が飛び交っている。これもまた、今回の摘発騒動の衝撃の大きさを表しているといえるだろう。

(取材・文/興山英雄 撮影/下城英悟)

■週刊プレイボーイ48号「警察のソープ狩り 本当の狙いがわかった!!」より

売春防止法違反で摘発を受けた「オレンジグループ」の店舗。営業停止など具体的な処分は未定だが、現場では「再開まで最低1年はかかる」との声も……