ニコニコ動画の中でも1、2を争う人気ジャンルである「歌ってみた」。ボカロ曲からアニソン、洋楽に至るまで数々の動画が投稿され、プロデビューを果たす歌い手も続々登場しています。

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本連載ではそんな「歌ってみた」がどのようにして発展してきたのか、動画と共に振り返っていこうと思います。

前回 [http://ure.pia.co.jp/articles/-/6612] は2009年頃から始まったニコニコ動画でのオーディションの数々を取り上げました。今回はいよいよ最終回。ニコニコ動画から羽ばたいていったミュージシャンを取り上げます。

ニコニコ動画からデビューした歌い手……たくさんいるのですが、中でも特に話題になったのが歌い手の「ピコ」でしょう。2007年12月にニコ動デビューし、そこからハイトーンボイスを武器に活動を開始したピコさんは、「niconico WINTER LIVE '08」(2008年夏)、「ニコニコ大会議」(2009年)と精力的にライブ活動を行い、その人気を不動のものにしていきました。そしてついに2010年10月、キューンレコードよりシングル「Story」でメジャーデビューを果たすことになります。

その後、ピコさんは2枚のアルバムをリリースし全国ワンマンツアーを開催、また彼の声をサンプリングしたVOCALOID歌手音ピコ」が発売されるなど、多方面で活躍を続けています。

驚異的な歌唱力に多くのユーザーが震撼

ニコニコ大会議ファイナルでピコさんと一緒に歌ったのが歌い手の「赤飯」さん。彼もまたメジャーデビューを果たしています。

JAM Projectの楽曲でニコ動でも人気の「GONG」をたった一人で全パート歌い上げるという驚異的な歌唱力と表現力は多くのユーザーを驚かせました。その後、ニコニコ動画公式ライブイベントなどへの出演を経てあっという間に人気者となった赤飯さんは、2011年2月にソロアルバム「EXIT TUNES PRESENTS SEKIHAN the BEST」をエグジットチューンズから発売し、現在もCDリリースやライブ活動など多方面で活躍しています。

少年風のハスキーボイスが魅力の女性歌い手

続いては女性の歌い手である「バルシェ」。

2009年2月にニコ動デビューして以来、その少年を思わせるハスキーボイスで男女問わずファンを増やしてきたバルシェさん。投稿した作品はいずれも高い再生数を誇りますが、中でもこの「右肩の蝶レンver.」は200万再生を突破するという大ヒットを記録しており、レンのイメージにぴたりと合った歌声は多くのファンを魅了しました。

これらの実績を引っさげ、まずは2010年にドワンゴミュージックエンタテイメントからCDデビュー。その後、ソニーミュージックを経て現在は日本コロムビアに所属しているバルシェさんは、今年6月27日にテレビ番組「奇跡体験!アンビリーバボー」エンディングテーマ「Fragment」を収録したシングル「AFFLICT/Fragment]をリリースするなど、華々しい活躍を続けています。


この連載の最初で取り上げた最古参の歌い手「ゴム」もまた、2011年6月に1stカバーアルバム「Version ゴム DX」を発売してメジャーデビューしています。ニコニコ動画では歌唱力はもちろん、ネタをちりばめた自由奔放な歌い方に人気の集まったゴムさん。そうした"ニコ動精神"ともいうべきノリを捨てることなく、今後もメジャーシーンで活躍してくれることでしょう。

アニメの主題歌にも起用!癒し系ボイスが人気

今年の3月、「佐香智久」という名前でソニーミュージックよりメジャーデビューした「少年T」は、ギターの弾き語りアレンジと癒し系ボイスで人気の歌い手。2ndシングル「ずっと」は、アニメ「君と僕。2」のオープニングテーマに選ばれるなど、注目を集めています。


流田Project」はニコ動で人気のアニソンなどをバンドアレンジでカバーする4人組のバンド。正体を隠すためか、仮面をつけて演奏する姿も話題を呼びました。ニコニコ動画での合計再生数は約700万と、バンドとして投稿しているミュージシャンの中ではトップクラス。この実績に目を付けたジェネオン・ユニバーサル・エンターテイメントジャパンからメジャーデビューした彼らは、この8月に3rdアルバムとなる「流田PPP」を発売し、全国ワンマンライブも開催するなど絶好調で活動を続けています。

ニコ動でのブレイクから約1年でデビュー

今年の3月、ビクターエンタテインメントよりアルバム「nanoir」を発売してメジャーデビューした歌い手の「ナノ」は、楽曲を英語アレンジして歌うバイリンガルアーティスト。ニコ動ブレイクしたのは2010年の年末であり、そこから1年ちょっとでメジャーデビューを果たしたことになります。こうしたスピード感からも、いまやニコニコ動画は次世代のスターを生む登竜門として業界に認知されていることがわかります。


絵師(イラストレーター)としても活躍する多才な歌い手「秋 赤音」は、ニコ動での3年間の活動を経て、昨年8月にトイズファクトリーより「antinotice/花弁」を発売してメジャーデビュー。歌うだけでなく、そこに自作のイラストを付けて自己表現するというのも、動画時代ならではの新しい表現方法ですね。

ボカロやイラストでもファンを魅了する歌い手

最後はメジャーレーベルからのデビューというわけではないのですが、ニコ動からのデビューした歌い手を語る上で外すことのできないミュージシャンを紹介します。

今年5月にアルバム「diorama」を発売した「米津玄師」は、ニコニコ動画では「ハチ」名義で活動するボカロP。イラストも自身が手がけており、その独自の世界観でファンを魅了してきました。総再生数は驚異の2000万回以上。間違いなく、ニコニコ動画のトップクリエイターの一人でしょう。その彼が「ハチ」名義ではなく本名の「米津玄師」としてリリースしたこのアルバムは、オリコン週間ランキングで6位にランクインするなど大ブレイクを果たしました。"売れる"ミュージシャンを音楽業界が放っておくはずもなく、今後の米津玄師さんの動向に注目が集まっています。

以上、ニコニコ動画からデビューしていった歌い手たちをピックアップしましたが、いかがだったでしょうか。2006~2007年に産声を上げた「歌ってみた」という文化は、その後たった5年でスターを生む場へと発展を遂げてきました。現在も「歌ってみた」には、野心を抱えた次世代の歌い手たちが精力的に動画を投稿しています。

次の5年でニコニコ動画、そして「歌ってみた」文化がどうなっていくのか、引き続き見守っていきたいと思います。


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・【ニコ動】「歌ってみた」の歴史を振り返る~オーディション編 [http://ure.pia.co.jp/articles/-/6612]
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・【ニコ動】「歌ってみた」の歴史を振り返る~黄金期と転落期 [http://ure.pia.co.jp/articles/-/5412]
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