Point
・人間の皮膚感覚を電子機器におくるセンサーなどの目的で、柔軟性のあって薄い電子回路の開発が行なわれている
・従来の電子タトゥーは、動作が遅く高価で、開発に専用の装置を必要とした
・新たに、通常のプリンタータトゥー転写用紙などを材料にした、安価で性能の高い電子タトゥーが開発される

ヒトは皮膚に含まれる感覚神経によって、圧力や温度、触覚などを感知して周りの環境を知ることができます。しかし義肢や義手では、触感を感じることはできません。

そこでロボットや義肢でも皮膚感覚を得られるように、電子皮膚の開発の努力が行なわれています。“ACS Applied Materials & Interfaces”に掲載された論文で、非常に薄く伸縮性のある電子皮膚が開発されたことが発表されています。この装置は将来、様々なマンマシンインターフェイスに使えるでしょう。

Hydroprinted Electronics: Ultrathin Stretchable Ag–In–Ga E-Skin for Bioelectronics and Human–Machine Interaction
https://pubs.acs.org/doi/abs/10.1021/acsami.8b13257

電子皮膚の応用は多岐に渡ります。義肢デバイスや、ウェアラブルな健康モニター、ロボット工学やヴァーチャル・リアリティなどです。研究の課題の多くは、複雑な立体表面に極薄の電子基板を転写し、その装置を体の動きに合わせて、柔軟で伸縮性のあるものにすることでした。

研究者はこの目的を達成するため、柔軟な「電子タトゥー」を開発。しかし、こういったものは動作が遅いのが常で、値段が高く、さらにフォトリソグラフィーのようなクリーンルームでの組み立てが必要となります。そこでマームード・タバコリ氏らは、動作が早くて簡便な、安い方法を開発しようと考えました。

研究者はまず、通常のデスクトッププリンターで印刷できるタトゥー転写用紙に、回路図のパターンを印刷しました。それから、印刷されたトナーにだけひっつく銀のペーストを塗り込み、回路の柔軟性と伝導性を上げるため、ガリウム・インジウム液体金属合金でコーティング。最後に、マイクロチップのような電子部品を、ポリビニルアルコールのゲルに埋め込まれた垂直の磁気粒子による導電性の「のり」でくっつけました。

そして、この電子タトゥーを様々な対象物に転写して、この新しい方法による応用法を実演してみせました。ロボット義手を操作したり、骨格筋の動きをモニターしたり、手の立体モデル上に感覚センサーを埋め込むなどの実演を行っています。

マイクロチップの種類によって、様々なものに応用できるこの技術。反応速度があがり、手近な材料で安く作れることで、より使いやすいものとなりました。将来、回路図タトゥーを身にまとうことで、いろんな物を遠隔で操作したりもできそうです。未来のウェアラブルデバイスで必須の技術となるかもしれません。

 

音楽を「皮膚で聴く」ウェアラブル端末”M:NI” 「不可能を可能に」

 

via: ACS/ translated & text by SENPAI

 

感じる…。ロボットに触覚を与える電子皮膚が開発される