今年もインフルエンザの季節となりました。病院でインフルエンザと診断されると、「A型」あるいは「B型」と告げられますが、A型とB型では症状や治療法が異なるのでしょうか。また、C型やD型は存在しないのでしょうか。インフルエンザに関する疑問について、医師の市原由美江さんに聞きました。

流行の原因となるのはA型とB型

Q.インフルエンザのA型とB型の違いを教えてください。また、C型やD型はあるのでしょうか。

市原さん「インフルエンザウイルスはA型、B型、C型に分けられます。インフルエンザの流行の原因となるのはA型、B型で、A型の方が症状が強く表れます。A、Bいずれも、1~3日の潜伏期間の後、38度以上の発熱、咳(せき)、鼻汁、咽頭痛、筋肉痛、関節痛などの症状が起こります。抗インフルエンザ薬を使わない場合、熱がある期間は、A型が5日、B型は3日程度でA型の方がより高熱となります」

Q.治療法に違いはありますか。

市原さん「違いはありません。発熱後48時間以内なら抗インフルエンザ薬の内服によって体内のインフルエンザウイルスの増殖を防ぐことができるため、症状の重症化を防ぐことができ、熱のある期間も短くなります。そのほか、症状に合わせた対症療法として、咳止めや解熱剤などが処方されることもあります」

Q.ワクチンは両方に効くのでしょうか。

市原さん「インフルエンザワクチンは、その年に流行する可能性の高いインフルエンザウイルスに対して免疫を作る抗原が含まれています。2015年以降はA型2種類、B型2種類、合計4種類のインフルエンザウイルスに対して有効なワクチンが製造されていますが、流行したウイルスと予想したウイルスが異なる場合は効果が乏しいことになります。

また、インフルエンザウイルスは、毎年流行を繰り返すごとに変異をしています。同じ年でも、流行の始まりと終わりの頃ではウイルスが微妙に変化していることがあり、この場合は予想したウイルスの種類が合っていたとしても効果が小さくなる可能性があります」

Q.C型と、A型、B型との違いは。

市原さん「C型は流行しにくく、大人ではほとんどの人がC型に対する免疫を持っているため問題になることは少ないです。多くの人は小児期にC型にかかっており、A型やB型と違って症状が軽度なので普通の風邪として治療されます。インフルエンザ迅速診断キットでは、A型かB型しか診断できないため、通常の外来でC型を診断することは困難です」

Q.A型にかかって治った後、B型にかかったという人や、その逆のパターンを聞いたことがあります。1シーズンで複数回かかる可能性もあるのでしょうか。

市原さん「その年のワクチンの予想の当たり外れ、変異の有無の影響、またA型やB型の中にもウイルスの種類がたくさんあるため、同じ年にA型とB型、A型とA型、B型とB型のように複数回インフルエンザにかかることもありますし、A型とB型に同時にかかることもあります。3回以上かかることも、ないとは言えません」

Q.インフルエンザ全般への注意点を教えてください。

市原さん「インフルエンザの予防には、インフルエンザワクチンが有効です。感染する確率を下げ、感染したとしても重症化を防ぐ働きがあります。特に、免疫力の弱い子どもや高齢者、基礎疾患のある人は積極的にワクチンを接種しましょう。

ただし、ワクチンの予想が外れたり、ウイルスが変異したりする場合があるため、手洗いやうがいをしっかりする、人ごみになるべく出ない、規則正しい生活をして免疫力をつける、など基本的な感染予防対策をしっかり行ってください」

オトナンサー編集部

インフルエンザのA型とB型の違いとは?