11月下旬、万引き事件の報道が相次いだ。まず、21日に、スーパーで食材23点を万引きしたとして、兵庫県警宝塚署は窃盗の疑いで、同県川西市に住む無職・48歳の女を逮捕した。逮捕容疑は同日午後0時半ごろ、宝塚市内のスーパーで、肉や野菜、豆腐など23点を盗んだ疑い。同署によると、女は代金約7千円を支払わずに、持参した3つのエコバッグに食材を入れて持ち出したとみられる。女は当時、約20万円を所持していた。調べに対し、女は「むしゃくしゃして取った」と容疑を認め、所持金については「いつもこれぐらいは持っている」と話したという。

 20万円という所持金がありながら、7千円分の食材を万引きしてしまうというのは、理解しがたい。そこで、なぜ女が万引きをしてしまったのか、『万引き依存症』
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の著者であり、大森榎本クリニック精神保健福祉部長斉藤 章佳(さいとうきよし)氏に話を聞いた。「大量の食料品を万引きしている場合は、その背景に摂食障害がある可能性が高いです。摂食障害がある万引き依存症者は、盗みたいものを盗むというよりは、過食嘔吐するために盗むという、目的と手段が逆転した異常なケースが多いです。『むしゃくしゃして取った』というのは、盗品を過食嘔吐してそのむしゃくしゃした感情を解消しようとしていたのかもしれません」

 今回の事件の女に摂食障害があったのかどうかは判明していないが、女が健康な精神状態だったとは確かに考えにくい。今月ほかに起きた万引き事件として、24日の午後6時ごろ、沖縄県警刑事部の警部・39歳の男が子どもと買い物中に、サングラスなど8点(約1万円相当)を万引きして現行犯逮捕されたというものがあった。また、27日、静岡県富士市内のスーパーマーケットで食料品12点(約2千円相当)を万引きしたとして、県立富士宮東高校の非常勤講師・53歳の男がこちらも現行犯逮捕されている。どちらも社会的に“お堅い”職業であり、警部の男に至っては、子どもとの買い物中という、信じがたい状況での万引きだ。この件に関しても、斉藤氏に話を聞いた。

 「警察官や教員による万引きにしても、重大な法的リスクや職を失う可能性があったり、十分に商品を購入できるだけのお金を所持していたりするのに、万引きを繰り返すという、この状況でやってはいけないだろうという場面で万引きをしてしまう『不合理性』や『反復性』が、まさに万引き依存症(クレプトマニア)の特徴だといえます。万引き依存症の場合、ストレスの対処行動として万引きを繰り返すうちに常習化し、やがて特定の状況や条件下になるとそのスイッチ(トリガー)が入り、対象商品を欲しいわけでもないのに万引きしてしまうというケースが多々あります。この場合は、自己使用のためや、金銭的価値のために万引きをするということではなく、『窃盗のための窃盗』というスリルリスクを求めて万引きを繰り返すという病的な状態に耽溺しています」

 はたして、3つの事件の加害者たちは万引き依存症だったのだろうか。真相はわからないが、どの事件からも、万引き犯のイメージにありがちな「貧困から仕方なく」といった印象は受けない。「窃盗のための窃盗」が万引きを行った原因の可能性だというのは、まさに現代社会の闇を感じさせられる。他人事だと思わずに、万引きという社会問題に向き合っていくことが今の社会には求められているのかもしれない。

大森榎本クリニック精神保健福祉部長(精神保健福祉士/社会福祉士)・斉藤章佳