近年、クロスオーバーSUV(スポーツ・ユーティリティ・ビークル)が人気です。独特のスタイルの良さは、他ジャンルの車とは一線を画すため、ファミリーカーとして選ぶ人も増えてきました。

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少し前までは、ファミリーカーと言えば、ミニバンが主流でしたが、SUVとミニバンを比較したときに、どのようなメリット&デメリットがあるのでしょうか。

子育てをしながら、ファミリーカーとしてSUVに乗っている親の視点から解説します。

SUVの3つのメリット

1. 見た目が格好良い

まず何と言っても、外観デザインです。

トヨタの「ハリアー」や日産の「エクストレイル」、マツダの「CX-5」、ホンダの「ヴェゼル」。

外車では、ポルシェ カイエンや、BMWのXシリーズ、メルセデス・ベンツのGシリーズなど、どれもスタイリッシュで、コンパクトカーやミニバンはもちろん、セダンスポーツカーとも違った、独特の格好良さがあります。

もちろん好き嫌いはありますが、好きな人にはとことん格好良く見えるのがSUVです。

一方のミニバンは、車内空間の広さや機能を優先しているだけに、どんなにデザインを工夫しても、長方形に顔(エンジンルーム)をくっつけたボディ形状から、“移動用の箱” という印象はぬぐえません。

フロントグリルからテールまで、流れるようなデザインで、大きめのタイヤを装着するSUVは、それだけで所有欲を満たしてくれます。

2. 運転が楽しい(走行性能が高い)

SUVは、ミニバンと比較したときに、車体の剛性が高く、全高が低いため、運転していて楽しい車が多くなっています。

たとえば、高速道路アクセルを踏みながら車線変更するときや、山道を軽快にドライブするときなどに、車が、思い通りに、きびきび動いてくれるかどうかに関わってきます。

それほど車に詳しくない方でも、運転していて「楽しい」のか、それとも「気をつかう……」のか、といった違いになって感じられるはずです。

なお、SUVは、ボディ剛性の面で特別に優れているというわけではなく、どちらかというと、“ミニバンはボディ剛性が低くなりやすい(高くしにくい)”、と言ったほうが正確です。

なぜならミニバンは、左右両面にスライドドアを採用するため、ボディの側面中央に柱を入れられなかったり、床が低く(薄く)、フラットフロアであったり、荷室の開口部が大きかったりするためです。

また、ミニバンは全高(天井)が高く、ボディが長方形なので、横風に弱かったり、風の抵抗がそもそも大きかったりします。

機能性重視のミニバンなので、これは仕方のないところですね。

3. 雪道や未舗装路で、いざというときに安心

クロスカントリー車のテーマも受け継ぐSUVは、最低地上高が高い車がほとんどです(トヨタ「C-HR」など例外もあり)。

たとえば、スキーやスノーレジャーで雪国へ行くと、駐車場に入る際に、こんもりとした轍や、除雪した雪の塊を乗り越えなければならないようなケースがありますが、スタックする心配が減ります。

また、車種にもよりますが、タイヤハウスのスペースにも余裕がある場合が多いので、雪が固まって付着したときに、タイヤに干渉しにくいメリットがあります。

私はキャンプやトレッキングもよく行くのですが、SUVに乗ってからは、未舗装路を走る際に、車のお腹を擦る心配がなくなりました。

最低地上高の高さは、街中ではまったく意味を成さないのですが、このように利用スタイルによっては、安心できる要因になります。

なお、ミニバンは、最低地上高は、室内空間を可能な限り広くとり、乗り降りしやすくするため、セダンコンパクトカー並である場合がほとんどです。

SUVのデメリットって?

SUVのデメリット4つ

1. 車内空間が狭い

続いて、ミニバンと比較した場合の、SUVのデメリットを見ていきましょう(裏返せば、これがミニバンのメリットということになります)。

まず何と言っても、車内空間の狭さ。SUVは、この点では勝負になりません。見た目は大きいようでも、車内はセダンと同じつくりです。

前後の座席間はウォークスルーではありませんし、後部座席の中央足元には、センタートンネルの出っ張りがあり、床はフラットではありません。シートアレンジも極めて限られているケースが大半です。

デザイン重視のため、天井が低く、窓の面積も限られているのも、不利なポイント。車種によっては後方の視認性が制限されているケースすらあります。

一方のミニバンは、床はフラットフロアで、シートアレンジも豊富。天井も高く、窓の面積も大きいため、数値以上に、圧迫感が少なく、快適に過ごせる設計となっています。

2. スライドドアではない(子どもがドアを開けてぶつける)

ファミリー特有の悩みとして、子どもが開けたドアがぶつかってトラブルになる、という問題があります。

駐車場で、壁や柱にぶつけただけであれば、自損で済むかもしれませんが、車にぶつけて傷を付けてしまったとしたら、もう大変……相手が高級外車だったりしたら目も当てられません。

スライドドアは、開口部が大きく乗り降りしやすいだけではなく、ぶつけずに済む、という点でも、子連れファミリーにとってはとてもメリットが大きいシステムになっています。

SUVは、スライドドアではないため、ファミリーにとっては大きなデメリット。我が家の場合、子どもたちが成長して、衝動的にドアにを開けてぶつける心配がほぼなくなったのもあって、SUVの購入に踏み切れました。

3. 荷物を意外と詰めない

SUVは、見た目には大型に見えるものが多く、たくさん荷物を積めるイメージがありますが、ミニバンと比較した場合には、大きく劣ると考えたほうがいいでしょう。

5人乗車したケースを考えると、ミニバンは、3列目のシートを折りたたんで荷室にできるため、まず荷室の奥行きで何割か劣ります。もちろん天井も低いため、高さでも劣ります。

これだけもかなりの差ですが、加えて、デザイン重視のSUVは、荷室のタイヤハウスの出っ張りが大きかったり、側面の壁が歪曲していたり、荷物の積み方に制限があり、数字ほどの容量を実感できないケースが多いのです。

4. 5人以上はどう足掻いても乗れない車が多い

SUVの多くは、旧来的なセダン型のレイアウトですので、運転席1名と助手席1名、後部座席に2名、狭いですが後部座席中央に1名と、最大定員5名です(マツダ「CX-8」のように、3列シートのSUVも存在します)。

夫婦と子ども2人と考えれば、定員5名で必要十分ですが、お友達親子を乗せる、祖父母を乗せる、となると、即座に定員オーバーとなってしまいます。

家族構成や、生活スタイルにもよるのですが、いざというときに柔軟な対応ができないのは、ミニバンと比較して、SUVをファミリーカーにするデメリットと言えます。

SUVのメリットは意外と少ないけれど!

以上のように、実用性の観点からすると、SUVのメリットはほとんどない、というのが、実際に子育てをしながらSUVに乗っている実感です。

それでも私がSUVで良かったと思っているのは、私自身が運転が好きなタイプで、走らせるのが気持ちいいから。

プラスして、プライベートおよび仕事で、年間60日ほどは、キャンプスノーレジャーに行くからです。

運転が好きで、アウトドアレジャーもよく行く方なら、ファミリーでの実用性をある程度犠牲にしてでも、SUVに乗る価値はあります。

逆に、車は移動のための箱なのだから、何よりも使いやすさだ、という場合は、ミニバンのほうがおすすめです。

車の位置づけや、利用スタイル、何を優先するかによって、大きく変わってきますので、ぜひ各家庭で詳しく検討してみてください。