弁護士大量懲戒請求事件で明らかになった高齢者ネトウヨの存在。スマホを片手に“理論武装”する、高齢者ネトウヨの素顔に迫る。
◆ある日、実家に帰ると父親がネトウヨに……
ネトウヨから絶大な支持を集めるブログ「余命三年時事日記」を通じて弁護士に根拠のない大量の懲戒請求を行った者たちが、逆に弁護士から訴えられるという事件が表面化し話題になった。ブログでは弁護士たちを「外国の勢力と通じて武力を行使させる『外患誘致罪』にあたり、死刑に相当する」として、懲戒請求書のテンプレを掲載。ブログに感化された読者約1000人がブログを通じて全国各地の弁護士会に送りつけたのである。
こうした不当な懲戒請求に対して、10月末から弁護士たちの反訴が始まった。それにより、懲戒請求をした、いわゆるネトウヨと呼ばれる人たちには意外にも高齢者が多かったことが判明したのだ。
「和解の申し入れや謝罪などの連絡をしてくる人が何十人かいるが、一番若い人で40歳。60歳や70歳という人もいたので、平均年齢は高いと感じました」(懲戒請求を受けた北周士弁護士)
ネトウヨの高齢化が進んでいるのである。
◆地元で名士の父が突然ネトウヨに……
週刊誌記者のAさんは、定年退職後、突如ネトウヨ化してしまった73歳の父親についてウンザリした顔で話してくれた。
「実家に帰ってテレビを見ていると、突然父親が『中国人や韓国人は脳の構造が日本人と違うからノーベル賞が取れない』と言うんです。それを聞いて僕もカチンときて『僕には韓国人や中国人の友人や仕事の同僚もいるからそういうことを言わないでくれ』って言ったら、そこから大喧嘩。『お前も記者なら南京大虐殺や従軍慰安婦について、本当のことをちゃんと書け!』とか怒鳴り始めて……」
Aさんの父親は地方の国立大学を出て、地元の地銀一筋に勤め上げ、支店長も経験したいわゆる“地元の名士”である。酒も夕食に嗜む程度で、ゴルフをやめた今の趣味は読書。どちらかといえば物静かなタイプの父親が感化されたのは、いわゆるヘイト本との出合いだったとAさんは推測する。
「あり余る時間を読書に充てたことで、とにかくいろんな本を読むようになった。その中にいわゆるヘイト本が交じっていたのがきっかけだと思います。そうした本をスマホで検索すれば、ほかのヘイト本やネトウヨ系サイトが出てきます。ネットに耐性のない高齢者がそういう情報に触れて鵜呑みにしたんだろうと思います」
実家の本棚には百田尚樹や小川榮太郞、差別的なタイトルの嫌韓・嫌中本がズラリと並び、本を読んで気になったことをスマホで検索して、さらなる“理論武装”にも余念がないという。ネトウヨ化した父親を同居する母親や兄は苦々しく思っているという。
「人間って年を取るごとに頑固になるじゃないですか、そこにネトウヨ的な考えが入ってきて……。母も兄も話すのも面倒だからほってると言っています」
そんな父からAさんにこんなメールが先日届いたという。
「テレビ局は泉放送制作という在日の会社が牛耳っているんだろ? そういうことをなぜ記者として取材しないのか?」
2年以上も前にネットで話題になったデマの話を今ごろされ、開いた口が塞がらなかったという。
◆海外経験豊富な元商社マンが豹変
「私の父は商社勤務だったので、海外勤務も経験していました。だからこそ、外国人を差別するような発言をしたことがショックでたまらなかった」
会社員のBさんは、70歳になる元商社マンの父親がネトウヨになってしまったことがショックでならないと話す。
「実家に遊びにいったときに、娘が保育園で仲のいい韓国の子の話をしたんですよ。そしたら『待機児童がいるのに、韓国人は入れるのか? あいつらは特権があるから優先的に入れるんだ。このままいくと日本は在日に乗っ取られるぞ』って言いだしたんです」
驚いたBさんが「そんなのは嘘だ」と言うと、父親はスマホを出して「在日特権」という言葉を検索して見せたという。これにBさんの妻は大きなショックを受け、
「しばらく義父さんには会いたくない」と言いだす始末。父親がネトウヨになったきっかけも、Aさんの父親同様、本の影響だったとBさんは推測する。
「過激なタイトルのヘイト本を地元の本屋で買うのは抵抗があるみたいなんですが、スマホだと誰にも見られないじゃないですか。中学生がこそこそエロ本を買うのと同じですよ。娘がオヤジのスマホでYouTubeを見ようとしたら、ネトウヨ動画がズラっと出てきて、頭がクラクラしました」
孫とビデオ通話したい一心でスマホを持つようになったBさんの父親。Bさんは持たせなきゃよかったと、後悔しているという。記者はそんなBさんの父親に話を聞くことができた。まず、在日外国人の何がいけないのかを聞いた。
「私は中国や東南アジアの紡績工場を担当していたけど、すぐにサボるし手を抜く。そういう連中が日本にたくさん来るということは、日本人の勤勉さを削いで日本をダメにするじゃないか。あいつらは働かないけどカネを欲しがるから、悪いこともする。だから私は移民なんかには反対なんだ」
だが、差別するような言動はよくないのでは……と記者が言うと、Bさんの父親はさらにまくし立てるように話し始めた。
「これまでは配慮して、本当のことをあなた方マスコミは伝えてこなかったじゃないか。でも今はインターネットで言えなかったことをハッキリ言えるようになったでしょう。間違ったことに間違ってると言うのが差別か!」
老いてなお盛ん……。加速する高齢化社会において、ネトウヨ化する高齢者たちの暴走も加速しそうである。
◆まさに青天の霹靂、私が受けた960件の懲戒請求
「自分は一体、何をやらかしてしまったのか」
北周士弁護士は、身に覚えのない大量の懲戒請求書が届いた今年4月の心境を振り返る。
発端は、朝鮮学校への補助金交付に賛成したとの事実無根のデマが広がり、まず佐々木亮弁護士が懲戒請求を受けたこと。これをSNS上で擁護したことで、北弁護士も標的にされてしまったのだ。
「名字が“北”と一文字のせいか、余命ブログでは朝鮮人弁護士ということになっています。懲戒請求とは、“この人物から弁護士資格を剥奪せよ”という大変強烈なもの。そんな書類が、現在までに960通も届きました。私自身は朝鮮学校うんぬんにはまったく関与していないのですが……」
◆匿名だと思い込み署名気分で懲戒請求
青天の霹靂で騒動に巻き込まれた北弁護士らは、無差別に懲戒請求を行った人間に対し、「虚偽告訴」および「威力業務妨害」に基づき損害賠償請求することを決定。ただし、和解にも応じており、訴訟前ならば和解金は5万円(訴訟後は30万円)。余命ブログ管理者に対しては刑事告訴する構えだ。
弁護士側の反撃を受け、事態を重く見た懲戒請求者の中には、和解を求める動きが出始めた。
「彼らの傾向として平均年齢が高く、素直な人物が多いという印象。『日本をよくしたい』という自分の考えに沿うようなネット情報に出合えばそれを疑わず、付随して表示される偏った関連情報を延々と閲覧して、自説を強化してきたのでしょう。ただその素直さゆえに、テレビで大量懲戒請求の問題が大きく報じられたことで、『いけないことだったんだ』と反省したんだと思います」
一方、彼らが本心から正義の実現のために懲戒請求を行ったのか、北弁護士には疑問が残るという。
「余命ブログは、弁護士に匿名で懲戒請求できると謳って賛同者を募集していたため、それを信じて参加した人が多数いると思う。しかし、自分が正しいことをしているなら、匿名かどうかを気にする必要はないでしょう。後ろめたい気持ちもあったのではないか」
実名だったら言えないことは、匿名でも言わない。これは人としての基本マナーだろう。<取材・文/週刊SPA!編集部>
※週刊SPA!12月4日発売号「スマホで右傾化する高齢者たち」特集より
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