2017年6月、東名高速であおり運転を受けて停車させられたところ、トラックに追突され死亡した萩山嘉久さんと妻の友香さん。嘉久さんの母・文子さんは3日、事件に対するやり切れない胸の内を語った。


 「(息子は)この子を入れて3人だったんだけど、一番若い子を亡くしたことはたまんないよ、親としては。一生忘れない」


 この日、同事件で危険運転致死傷罪などに問われた石橋和歩被告の初公判が開かれた。石橋被告は、事実関係について「追い越した方向が違う」「被害者を掴んだのも胸ぐらではなく左腕」など一部誤りがあるとしたものの、概ね内容を認めた。しかし、弁護側は何の罪に問われるかについては争う姿勢を見せている。


 検察側の主張によると、事件の発端となったのはパーキングエリアで嘉久さんが石橋被告に駐車の仕方を注意したこと。法廷では、当時の状況について萩山さん夫妻の次女の供述が読み上げられた。「パパがスライドアを開けた。『邪魔だ、どけ』と言った。パパが知らない人に大きな声で怒ったことは見たことがなかった」。


 これに腹を立てた石橋被告は、萩山さんの車を執拗に追跡。石橋被告が運転する車は、700mにわたって無理やり追い越し、前に割り込むなどの妨害行為を続ける。さらに、萩山さんの車の進路をふさぐ形で停車すると、車を降りて近づきドアを開けさせた。「さっきのはどういうことだよ。海に捨てるぞ、こら。殺されたいのか。高速に投げ捨ててやる」。石橋被告の車に乗っていた女性は「助手席の女の子が大泣きしていた。『子どももおるけん、やめとき』と和歩に言ったが、何の反応もなかった」という。


 停車から2分後、後ろから来た大型トラックに追突され、萩山さん夫婦は死亡し2人の娘はけがをした。「ドカーンというものすごい音がして、体が前に飛ばされた。パパもママもいなくなっていた。大変なことだと初めて思った。病院で亡くなったことを聞いてすごく泣きました。2人のことが大好きです」(次女の供述調書から)。

 石橋被告は懲役7年以下の「過失運転致死傷」の疑いで逮捕されたが、検察側はより罪の重い懲役20年以下の「危険運転致死傷罪」で起訴した。これが成立するかどうかが、裁判では最大の焦点となっている。


 検察側は「危険運転致死傷罪の成立要件は『危険な運転で人を死に至らしめること』。高速道路上で停車していれば事故は起こりうると考えられた」と主張するのに対し、弁護側は「危険運転致死傷罪」が成立するのは走行中だけに限定され、停車中に事故が発生した今回のケースでは「成立しない」と主張。「事故は自動車の停止後に起きたものと考える。ルール外の適用は法律の拡大解釈につながる」としている。検察側は、車線上にとどまらせた行為が監禁にあたるとして「監禁致死傷」の罪も予備で加えているが、弁護側はこれも「成立しない」と争う姿勢を示している。

 被告側は「危険運転ではない」と無罪を主張しているが、石橋被告はどのような罪に問われるのか。文子さんは「あおり運転をなくしたいんですよ、私ほんとは。その(あおり運転する)人たちに、この判決がすごく厳しかったら怖くてやらない人もいるかもしれない」と話している。

AbemaTV/『けやきヒルズ』より)


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