米倉涼子主演のドラマ/『リーガルV~元弁護士・小鳥遊翔子~』弁護士資格を剥奪された自由奔放な主人公が、ワケありの仲間たちとともに法廷劇を繰り広げる。

先週放送された第7話の視聴率は14.2%と高視聴率をキープ。同じテレ朝の長寿シリーズ『相棒』『科捜研の女』と視聴率トップ3を形成しているとのこと。テレ朝、強ぇ。

「男たちのme too運動」って何?
第7話は高級結婚相談所・ローズブライダルの婚活詐欺をめぐる訴訟の後編。被害者・塩見(カラテカの矢部太郎)ひとりだけの訴訟ではラチがあかないと判断した翔子(米倉涼子)は集団訴訟に持ち込む。政財界の大物の影もチラつき、なんだか大掛かりな話になってきたぞ。

集団訴訟には被害者が必要。そこで京極法律事務所の面々が考え出したのが「男たちのme too運動」を盛り上げること……。むむむ? 「#MeToo」とはSNS用語で、セクハラや性的暴行の被害を告白するときに用いられるもの。社会運動として欧米から世界的に広がっており、今年のノーベル平和賞の候補にも選ばれた(受賞したのはコンゴで性暴力の被害者の治療に尽力する産婦人科医のデニ・ムクウェゲ氏)。

ローズブライダルの被害者は、性的暴行の被害者ではなく詐欺の被害者であり、本来の「#MeToo」とはまったく関係ない。製作者サイドが「#MeToo」についてまったく知らなかったとは思えないし、用語の説明を一切入れていなかったのを見ると、あえて元の意味や文脈を無視して「これまで声を上げられなかった被害者が声を上げる」という意味で強引に用いているように見える。

フェミニストとしてセクハラ問題やMeToo運動を支援している社会学者の高市(野間口徹)もローズブライダルの婚活詐欺の被害者だった。翔子は彼を集団訴訟の原告団に入れようとするがあっさり断られる。「女のme tooを呼びかけておいて自分は尻込みなんて、あんた偽物ね」と翔子は相変わらず失礼なことを言うが、このセリフからもドラマ製作者側が単に「声を上げる」という意味で「#MeToo」を使っていることがわかる。ぶっちゃけ、それってどうなの? 高視聴率ドラマだからこそ、こういう問題の取り扱いには慎重になるべきなんじゃないの?

偶然の連続に恐喝、土下座強要!?
ローズブライダル代表の相田栞(東ちづる)は元毎朝経済ジャーナルの記者で、結婚後、ローズブライダルを設立したという設定。経済誌の記者だったから金儲けの手法に長けているということだろうか? 馬場(荒川良々)が相田の写真を見て「恐喝や強請りも朝メシ前って面構えだな」と言うのだが、東ちづるって恐喝や強請りも朝メシ前って顔だっけ……?

大手のFelix & Temma法律事務所ローズブライダルの弁護を行っているのは、裏で国内最大のコンピュータ企業、ミカド通信の会長・我妻(国広富之)が手を回していたから。ミカド通信はFelix & Temmaの最大の顧客である一方、我妻から多額の資金がローズブライダルに流れていたのだ。

相田は法廷を前にしても余裕しゃくしゃく。翔子たち原告団に向かって「申し訳ございませんでした、って土下座してほしい気分だわ。じゃあね」と憎々しく言い放つ。相田というキャラクターは裏も表もない単純な悪者として設定されている。

法廷では証人としてローズブライダルに潜入したもののまんまと詐欺に遭った伊藤理恵(安達祐実)が立つ。彼女はローズブライダルの内部に男性のサクラがいたことを告発するが、だったら先週デートしていた武井壮サクラ役にしたほうが良かったんじゃないだろうか? 弁護士の海崎(向井理)に過去の罪を暴かれてしまい、涙を流して抗議する理恵に心動かされて高市たちが原告団に加わるという流れもヘン。

何より一番ヘンなのは和解までの道のりだ。元ストーカーの馬場が我妻を調査しようとミカド通信に向かうと、そこにローズブライダルの元副代表・藪谷(高杉亘)がいて真実を告白しようとする。どうして偶然、藪谷と馬場が出会っちゃうの? 藪谷はどうして馬場がローズブライダルの訴訟にかかわっている人物だとわかったの?

さらに馬場は藪谷を警察と勘違いして逃げるが、そのとき落としたスマホが我妻の車にひっかかっており、スマホには車の中でディープキスをする我妻と相田の姿が動画で撮影されていた……。って、そんな偶然あるかよ! この動画をもとに和解を申し入れるのってただの恐喝じゃない? 運びも雑だし、リーガルVじゃなくてイリーガルV。法廷モノってこんなお話でいいの?

最後は我妻に見捨てられた相田が被害者たちの前で、実はローズブライダルの被害者だった弁護士の白鳥(菜々緒)に叱責される形で土下座というオチ(一応、彼女の「土下座してほしい気分だわ」が前フリになっている)。土下座の強制は強要罪だよ! 成城大学法学部教授の町村泰貴氏もツイッターで恐喝罪と強要罪について指摘しつつ、「非弁は違法なんてテロップ無い方がまだマシ。法律なんて気にする奴は見るなと書くべきレベル」と書いていた。

なお、京極法律事務所は和解によって億単位の報酬を得たはずだが、特にその顛末は描かれていない。

騙す女、騙される男
ストーリーの途中で集団訴訟の原告団が大量に増えるのだが、なぜか男性が9割以上を占めていた。原告団には女性(瀬戸早妃)もいたのだが、「婚活詐欺の被害者=男性」という構図が強調されていたように見える。

冒頭で翔子が「婚活詐欺は人の一生を台無しにしてるの」と言ったとき、京極(高橋英樹)が「じゃ、彼らのためにも頑張りませんとね!」と言うが、何気なく「彼ら」と言っているあたりも「婚活詐欺の被害者=男性」という構図を表している。ラストで相田が土下座をするときも見下ろしている被害者はほとんどが男性だった。

第6話、第7話の「騙す側/騙される側」と「男性/女性」を整理するとこういう形になる。

騙す側の女性(相田、サクラの夏純)→悪い・愚か
騙される側の男性(塩見ら)→弱い・かわいそう
騙される側の女性(理恵、白鳥)→強い
騙す側の男性(我妻)→出てこない

結局、悪い女は強い女が裁く形で弱い男たちの前にひれ伏した。悪い男は裁かれないままだった(我妻本人は詐欺を行っていないが、詐欺グループに加担していたという意味では悪い)。雑な筋の運びはともかく(ともかくってことでもないが)、男性、女性のこういう描き方は気分のよいものではない。おっさん目線を貫くことでおっさん視聴者ハートを掴んでいるのかもしれないが、それにしてもどうしてこのドラマが高視聴率なのか、やっぱり謎なのであった。

なお、東ちづるがプロデューサーとして3年かけて制作したLBGTと人権をテーマにしたドキュメンタリー『私はワタシ~Over the Rainbow~』が12月22日から公開されるので気になる方はチェック
(大山くまお

リーガルV~元弁護士小鳥遊翔子~』
木曜21:00~21:54 テレビ朝日系
キャスト米倉涼子、向井理、林遣都、菜々緒、荒川良々、内藤理沙、宮本茉由、安達祐実、三浦翔平、勝村政信、小日向文世高橋英樹
脚本:橋本裕志
演出:田村直己(テレビ朝日)、松田秀知
音楽:菅野祐悟
プロデューサー:大江達樹(テレビ朝日)、峰島あゆみテレビ朝日)、霜田一寿(ザ・ワークス)、池田禎子(ザ・ワークス)、大垣一穂(ザ・ワークス
制作著作:テレビ朝日

イラスト/Morimori no moRi