今年の流行語大賞は「そだね~」だそうだ。社会に不安を掻き立てるようなニュースが多かった今年、カーリングの女子チームの活躍は本当にすがすがしいものであった。

早いものでもう12月である。毎年この時期になるとそう感じるが、今年はなんとせわしない年であったことだろう。政治、経済、外交、ビジネスでの矢継ぎ早に繰り出されるビッグニュースが新聞・テレビネットを賑わせた年であった。

今年は半導体に限らずテクノロジー関係のニュースが際立った年でもあった。それだけ技術革新のスピードが加速しているのだとつくづく感じる。そこで今回は今年私が気になったテクノロジー関連のニュース半導体に限らず、テクノロジー関連の用語集をクイズ形式で記してみたいと思う。まずは設問を読んで考えてみていただいて、その後、その下に書いてある説明、私の感想を参考にしていただければと思う。賢明な読者の皆様はいずれもご存知かもしれないが、お付き合い願いたい。
○問題1:Mining(マイニング)とはなにか?(難度:中)

ヒント:Data Mining(データ・マイニングではない)

解説:私がこの言葉を初めて聞いた時はIT用語であるデータ・マイニングのことだと勘違いした。その次には「何かと問題になってニュースで取り上げられた仮想通貨取引のこと」、と早合点した。それも「マイニング=採掘=金が出る」という発想につながるからだろう。

マイニングは実は仮想通貨取引などの信用創造を支える基本システムであるブロックチェーン(分散型台帳)の裏で動いている取引データの整合性を取るための超高速演算そのもののことである。この辺の話が仮想通貨取引所のセキュリティ侵害の事件の報道などとごっちゃになって、一般の人々には「何か怪しいもの」との印象がまだ払しょくされていないのが現状である。

マイニングに必要な超高速演算にはAMDNVIDIAグラフィックボードの並列計算力が利用されている場合が多い。または専用ASICを設計して効率を上げようというところも出てきている。しかしマイニングの対価は仮想通貨で支払わられるため、マイニングを行う「マイナー」達にとっては、仮想通貨の市況の不安定さに業績が大きく左右された厳しい年ともなった。

仮想通貨、キャッシュレス、シェアエコノミーと言ったこれからの大きなインフラパラダイムシフトには、私自身も含めてついてゆくのがやっとというのが現状であるが、マイニングがささえるブロックチェーンはこれからの情報インフラを支えてゆく基本技術であることには間違いはない。来年は金融、保険、サプライチェーンなどへの応用例が続々と出てくることが予測される。

○問題2:GAFA、FAANG、BATはそれぞれ何を意味するものか?(難度:高)

解説:GAFAは最近のニュースでは当たり前のように使われる言葉となった。関連するビジネス書もたくさん出版された。

参考:「吉川明日論の半導体放談 第49回 「the four GAFA 四騎士が創り変えた世界」 - GAFAが欲するものとは何か?」

GoogleAppleFacebookAmazonの頭文字をとったGAFAの4つの巨大ITプラットフォーマーの市場支配力は今年になって飛躍的に強くなった。

最近ではGAFAにNetflixを加えFAANGという言葉も使われるようになり、米国の証券取引の世界では当たり前の用語となった。

ラットフォーマーの成長は何も米国だけではない。BAT(Baidu、AlibabaTencent)に代表されるような中国勢も旺盛な消費者の購買力をバックに今年、GAFA、FAANGに規模では肩を並べるプラットフォーマーに急成長した。

折しも米中の貿易摩擦が深刻化する中で、自動車、農業製品などのオールド・エコノミーと比べるとこの分野での米中の境界は今のところ"棲み分け"があるようで表面化していないが、来年は個人情報知的財産権などの分野で衝突が予想される。

これらのプラットフォーマーの企業活動を支えるハードウェアの世界ではファーウェイの米輸入禁止など、すでにつばぜり合いが始まっている。いずれのプラットフォーマーもAIベースシステムで消費者の個人情報を駆使してどんどんと新たなアプリを提案してくる。

消費者は今のところはそれを単に"便利だ"、"クールだ"という理由で生活の中にどんどんと取り入れているが、今年は個人情報の扱いについて欧州委員会が先頭に立って規制をかける反撃を開始した。来年は今年にもましてこれらのプラットフォーマーのニュースが毎日の新聞、テレビネットを駆け巡ることとなるのだろう。
○問題3:MaaSとは何か? 同じコンセプトの類語も2~3挙げよ(難度:中)

MicrosoftOfficeなどのパッケージソフトをオンデマンド・ベースOffice365として発売したのが2011年である。

ユーザーパッケージソフトの買い切りの購入者ではなく、オンデマンドで使用する"サブスクライバー"としてとらえ、ソフトウェアサービスとして提供する。この言葉を聞いた当初は私にはピンとこなかったが、今やハードの世界でも、それを使用するユーザーの目的を供給するためのサービスに代わりつつある。

MaaS(Mobility as a Service)でいう「Mobility」とはパソコン世代の私にとっては"持ち運べる"という意味であったが、MaaSの指すMobilityとは「移動」という行為そのものとなっている。

従来の車の世界では「人は距離を移動するために車を購入し自分で運転して移動する」ことが前提とされたが、シェアエコノミーでは車は単なる移動の手段であり、ユーザーにとっては「移動できる」ことの方が重要な要件となる。

この要件をオンデマンド・ベースでサブスクライバーに提供するのがMaaSである(やたらに英語表記が続くのは私の本意ではないが、これらの概念自体が日本発ではないのでこうなってしまう…)。このサービスが自動運転車によって提供されるようになれば、人が車を運転するという労働自体も必要なくなるわけだ。

同様の考えでDaaS(Device as a Service)などという言葉も生まれている。そういえばレンタルペットなども今年あたりからはやってきているし、お見合い結婚式用に架空の両親を演出するレンタル・ペアレンツなどのサービスを提供する新規ビジネスも出始めているとのことである。これらはPaaS(Pet as a Service)、PaaS(Parents as a Service)などと呼ばれるのだろうか?
○問題4:2スピンドルパソコンとはどういう意味か? (難度:高)

ヒント:この言葉はすでに死語で現在用語とは言えないものとなっている。

先に謝っておこう。申し訳ないが、この問題は現代用語と言えないと思っている。私がAMDCPUを売っていたころ(しかしほんの10年前の話であるが)、ノートPCスペックを表すのにこんな言葉を使っていたことを思い出したので最後のおまけとして入れさせていただいた。

スピンドルとは英語で「軸」のことで、ここではパソコンに搭載されるモーターの軸のことを意味する。今ではフラッシュメモリを用いたSSDを搭載したパソコンが当たり前になってしまったが、当時のパソコンには2種類のモーターを用いた大容量記憶装置が搭載されていることが多かった。1つは現在でも利用されているハードディスク(HDD)で、もう1つはフロッピーディスク(FDD)やCD/DVD/Blu-Rayのような光学ドライブ(ODD)といった外部記録メディアを読み込むための装置である。

いずれも超小型のモーターでディスクを駆動しながら記憶されたデータを呼び出すわけで、そのモーターが1つなのか2つなのかで値段も違うし操作性も違う。それが現在ではモバイルパソコンの多くがフラッシュメモリに置き換わって、もはやディスク(円盤)は存在しない。今、フラッシュメモリハードディスクの主戦場はデータセンターに移っている。

最初の3問は賢明な読者の皆様には難易度が低すぎると思ったので、世代的にいくぶん古いと思われる引っ掛け問題を最後に出題したのは、日ごろ大学の期末試験で先生方にいじめられている学生の腹いせと思ってご容赦願いたい。

著者プロフィール
吉川明日論(よしかわあすろん)
1956年生まれ。いくつかの仕事を経た後、1986年AMD(Advanced Micro Devices)日本支社入社。マーケティング、営業の仕事を経験。AMDでの経験は24年。その後も半導体業界で勤務したが、2016年に還暦を迎え引退。現在はある大学に学士入学、人文科学の勉強にいそしむ。

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(吉川明日論)

画像提供:マイナビニュース