改元が来年5月1日と迫るなか、政府は新元号の発表を4月1日以降にするという謎の決定をしたことが報じられた。菅官房長官は「システム改修に1ヶ月程度は必要」という謎のスケジュール感を発言しているが、システム開発現場の声が反映されているとは残念ながら思えないものだ。(参照:読売新聞・「保守派」に配慮…新元号公表、4月1日以降に

 せっかく天皇陛下がご配慮くださり、退位を事前表明し期間を開けてくださったのに、その意向を見事に無視している今回の新元号発表タイミングの決定はSE(システムエンジニア)泣かせであるのは明白だ。昭和から平成に変わった頃と比べ、社会全体におけるシステムへの依存度は雲泥の差である。昭和から平成へ変わったタイミングにおいて大きな問題にならなかった昔とは状況が違いすぎるといえる。

◆元号決定が遅ければ遅いほどシステムトラブルリスクは増大する

 実際、さまざまなシステムを運用・開発している現場SEはどう思っているのだろうか。

4月1日以降などと、未だにいつ発表するかわからないままな点が非常に困ります。今回の報道でわかったのは『4月1日までは発表されない』ことだけなんですよ。正式な元号で開発テストが実施できる日がいまだに決められないのは恐怖でしかありません」(現役開発SEのAさん

「保守派に配慮とか言ってますけど、システム保守派の意見も聞いてほしかった。来年はゴールデンウィークが休めないのは覚悟していましたけど、4月そのものが全く休む目処が立たないことまで追加されて保守しきれないです」(保守運用SEのBさん)

 退位が発表された時点で開発はスタートしているため開発が間に合わないという声はなかったが、不安として挙がる一番の問題は、

「新元号が決定しない限り最終的な完成は先延ばしになっている」

 ことなようだ。最終的な完成には新元号の決定がどうしても必要なのだ。これによって追加開発やテストを終えられる時期も政府に握られてしまっており、開発だけではなく、保守派ならぬシステム保守派もいつ休めるかわからないと涙を流すような状況だ。

◆イニシャルだけでも教えてほしかった

 また、仮の年号で開発が進むことで仕事が増えてしまったシステムもある。

「年号がわからないので、コード定義として昭和ならS、平成ならH、のように開発されているコードに、新元号には仮にXとして設定しました。元号がわかればXのときは新元号文字列を出力する、という形で乗り切ってるのですが、残念なのはそのコードは略称の欄にもそのままコードを出力していた仕様なので、Xのときは新元号のローマ字の頭に再変換する追加開発を今やってます。正直、新元号がわかってさえいれば作る必要のなかったプログラムコードです…」(プログラマCさん)

 ただ、Cさんは取材で明るさを忘れなかった。

「うちらの中ではプロジェクトXなんて呼んでます(笑)せめて新元号の最初のイニシャルだけでもヒントをもらえたら嬉しかった」

 影響はSEだけではない。システムを使っている側でも、ミスが許されない金融系ではそれが顕著だ。金融系企業側のシステム担当者はゴールデンウィーク期間中ほぼ全日出勤することが決まった。

「金融系システムは国内外、他金融機関などとつながった巨大なシステムとなっています。自社のシステムは問題がなかったとしても、他で一部のシステムが古く、年号でデータが来るものがある。そのデータがやりとりされた結果、自社のシステムに影響が出ていないかどうかはSE・開発側だけでは気付けないものもある。そこへ、新元号発表が改元ギリギリになりそう。新元号がどういった内容で来るかの仕様(書)が、新元号が決まるで仮なわけです。

 期間が短い分、他社のシステムでどんなミスが起きるかわからないし、指摘する時間も限られます。漠然とではありますがリスクですよね」(金融系企業のシステム担当者)

 取材していて感じるのは、政府は改元当日に元号を発表をしたいという当初の希望を諦め、事前発表することにしたのであれば、いつ発表しても元号の並び立ちする期間は存在するのだから、困る国民が減ることへの配慮を優先すべきなのではということだ。

 もしゴールデンウィークが明けて、出力されたデータに「仮年号1年5月1日」と印刷されていても、それはSEたちの苦労の現れなのであまり責めないであげてほしいと今から願うばかりだ。

<取材・文/HBO取材班>