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成立時には「画期的」とも言われたイラン核合意から離脱したり、事あるごとに米国第一主義をゴリ押しするトランプ大統領に、日本を除く世界は辟易しているようです。各国と衝突を繰り返すアメリカは、今後どのような事態に襲われてしまうのでしょうか。国際関係ジャーナリストの北野幸伯さんが、無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』の中で分析・考察しています。

トランプがドル体制を崩壊させる

今日はトランプさんの話。皆さん、トランプさんのことどう思いますか?反中派の皆さんは、米中覇権戦争がはじまったことについて、「いいぞトランプ!中国をぶっつぶしてくれ!」という感じでしょうか?逆に「親中派」や中国との関係が強い企業の皆さんは、「貿易戦争はじめやがって迷惑だ」という感じでしょうか?

私は、「トランプさんが反中で日本は助かるが彼は戦略が下手」という意見です。これ、大昔から同じことを書きつづけています。その例は、「イラン核合意からの離脱」ですね。この合意に参加したのは、アメリカ、イギリスドイツフランスロシア、中国、イラン。そして、この合意からの離脱を表明したのはアメリカだけ。なんと、イギリスドイツフランスロシア、中国、イランが合意維持を支持している。アメリカは、この問題で完全に孤立しているのです。

先日、これに関連して、『週刊エコノミスト11月27日号にいろいろ面白い情報が載っていました。内容は、「反トランプで欧州、ロシア、中国、イランが一体化。共同でドル体制を攻撃している」。見てみましょう。

【人民元】による原油輸出入

2015年7月、いわゆる「イラン核合意」が成立しました。オバマさんの時代です。2016年1月、対イラン制裁が解除されました。2018年5月、トランプさんは「合意離脱」を宣言。同8月、トランプ、イラン制裁の復活を宣言。これはアメリカの単独制裁です。

しかし、この国は、他国や他国企業にも「イランと取引するなよ! したらおまえらも制裁対象だぞ!」と脅迫する。そして、「イランから原油を買うなよ!」と強要する。ところが、アメリカのいうことを聞かない国がある。彼らは、どんな風に反撃しているのか?『エコノミスト』からピックアップしてみましょう。

一連の制裁がイラン産原油の輸入国の「ドル離れ」を引き起こしているのだ。イラン制裁に従わないと表明した中国は人民建て輸入を続け、

既述のように、アメリカは世界の国々に、「イランからの原油輸入を止めろ!」と命令した。ところが中国は「イラン制裁には従わないよ!」と宣言し、【人民建て輸入】を続けている。

ちなみに、サダム・フセインは2000年、「イラク産原油の決済通貨をドルからユーロにかえる!」と宣言した。それ以前、世界の国々は、「ドルでしか石油を買うことができなかったのです。これを、「ペトロダラー制」といいます。おかげで、アメリカは万年膨大な貿易赤字を出しても安泰だった。

ところが、今では中国が、【人民元】でイラン原油を輸入している。中国だけではありません。

インドネシアも“包括的アプローチ”としてドル以外の通貨での支払いをにおわせた。原油輸出国のインドネシアも、制裁リスクのあるドルから人民元へ決済通貨の一部切り替えを検討する。
(同上)

なんと、インドネシア人民元決済を検討している。