日本テレビ系「今日から俺は!!」8話（日曜22:30〜）。もう最終回手前と言うことで、三橋（賀来賢人）と理子（清野菜名）のあいまいな関係が、あいまいな感じで決着がついた。バカと生真面目しか出てこないこのドラマで、理子だけ複雑な心理状態が描かれている。
三橋がキャーキャー言われて喜ぶ理子の心理
今話から三橋（賀来賢人）たちは3年生へと進級した。新入生の女子たちは、三橋と伊藤（伊藤健太郎）を見てキャーキャー。2年生スタートだったのは、Season2で3年生をやるためと期待を込めて予想していたので、若干寂しい。
三橋と伊藤を慕う新入生もいれば、反対にそのクビを狙うものたちもいた。各中学から集まった新入生達は、連合を組んで三橋を狙う。彼らの演じ方なのか、演出の力なのか、それともキャスティングが絶妙だったのか、新入生たちの新入生感がすごい。役者本人の年齢は賀来賢人（29）、伊藤健太郎（21）、清野菜名（24）らとそれほど変わらないとは思うが、絶対に年下に見えるし、絶対に弱く見えるし、世の中について何にも知らないように見える。
新入生に絡まは返り討ちにしようとする三橋に、理子が三橋のアイドル人気を保つため、耳打ちしてアドバイスを送る。半信半疑の三橋だったが、理子の言う通りに絡んできた新入生をあしらうと、黄色い声が上がる。これに気をよくした三橋が実に嬉しそう。嬉しそうな三橋を見る理子も嬉しそう。どっちも超かわいい。
しかし、理子は三橋のことを好きなハズ、嫉妬心はないのだろうか？それとも、三橋が好きな自分を認めてしまって関係が変化することを恐れているのだろうか？三橋に「理子、お前ちょっと離れてろ。彼女だと思われたらモテなくなる」とまで言われているのに、健気というかなんというか、1人だけ心理状態が複雑な超ラブコメだ。
しかし、ちょっとした行き違いで新入生の三橋と理子の評価は逆転。理子が1番強く、かっこいい存在という認識になってしまう。「騙された」とヘソを曲げた三橋は、理子との約束を放っておいて1人で帰ってしまう。その頃、フルフェイスのヘルメットに金属バットを持った新入生（須賀健太）が軟高で1番強い奴を探していた。
伊藤は真面目だからフルフェイスを素手で殴る
主人公とは思えないぐらいヘソを曲げ続けている三橋。理子がピンチだと聞いても、「良いんじゃねっすか？1番強いお人ですから」と助けに行かない。最低だ。もともと卑怯者と呼ばれているが、ベクトルはそっちではない。ただの子供。真の三橋の短所、器の小ささが全開になっている。サテンに行く約束を破られた理子の表情が切ない。
フルフェイス新入生に襲われた理子は、なんとか攻撃を凌ぐものの、劣勢に立たされる。たまらず、「さーんちゃーん！」と三橋に助けを呼ぶが、2階から飛び降りて登場したのは伊藤だった。三橋なら2階からそのまま跳び蹴りなりなんなりしそうなものだが、伊藤がそれをしないのは真面目だから。金属バット＋フルフェイス相手に素手で真正面からブン殴ったのも真面目だからだ。今作は、本当にキャラクターのアクションそれぞれに個性がある。隙をつかれて後ろからバットで殴られるのも伊藤らしい。
そこにダイナミックな跳び蹴りで助けにきたのは、伊藤の彼女・京子（橋本環奈）。明美（若月佑美）が援護する感じからは、成蘭女子高校流のケンカのやり方が垣間見える。京子の登場に伊藤は復活。そのままサテンにパフェを食べに行くのだが、これに理子はまたも寂しげな様子。
このアクションはラブコメだ！
伊藤や京子らにしばかれたフルフェイス新入生は、懲りずに翌日も学校で暴れ、廃工場らしき場所で再び理子とのタイマンへ。金属バットを振り回すフルフェイス新入生を、得意の合気道でいなしながら的確に打撃を与えていく理子のムーブが秀逸だ。バットを持ち受け身が取りづらいなかで派手なバトルを繰り広げるフルフェイスもすごい。しかし、この圧巻のアクション。実は超ピュアなラブコメだ。
理子は、「ヘルメットで守り固めてさ、金属バット持ってケンカするような卑怯な奴に、軟高のテッペンは取らせねーよ」「これからそのヘルメット被って授業受けるの？バッカじゃねー？」「悔しかったら金属バットとヘルメット無しで勝負しろよ！」とたどたどしく挑発する。頭に三橋を思い浮かべながら言ったものだろう。
前日とは違い、フルフェイス新入生を圧倒すると、今度は、「昨日はね、新入生だと思って手加減をしてやったんだよ。本気出したらテメーなんて相手になんねんだよ！」と言い放つ。しかし、これはおそらく嘘。新入生だから手加減したのではなく、三橋に助けて欲しくて手加減したに違いない。理子は、三橋に助けてもらう“か弱い女子”になりたかったのだ。
こうなると腹が立つのは、フルフェイスではなく三橋だ。理子は1人でフルフェイスを追い詰める。もはや三橋がいらない状態。しかし、フルフェイス新入生は今度はナイフを取り出す。三橋どころか開久の相良（磯村勇斗）も真っ青の極悪非道っぷり。形勢は逆転、理子は今度こそ本当に追い詰められてしまう。
そこにロープを使いターザン状態で登場したのは三橋。伊藤と違い、ターザンキックのおまけつきだ。理子相手にナイフを取り出したことにブチギレたのか、「テメ-
、俺の女に手出すんじゃねー」と珍しく男気のあるセリフ。続けて、「ヘルメットで守り固めて……」「ヘルメット被ったまま授業受けるのかよ……」とさきほどの理子と同じセリフを言い放つ。理子に、「それさっき言った」と指摘され、一転コメディシーンになったが、理子が三橋を理解しているからこそ起きるシンクロだ。
三橋は、伊藤と違い堂々と鉄パイプでフルフェイスごとブッ叩く。金属バットと鉄パイプ、三橋は同じ土俵で戦い圧勝。その後、フルフェイスの中に大量の唐辛子を投入し、ガムテープで密封。自分のベクトルの卑劣行為でトドメをさした。
三橋の登場は、「最後の最後でおいしいところ持っていた」にするにはあまりにも遅かった。どちらかというと、「やっと子供が素直になった」という感じだ。それでも理子はウッキウキ。三橋と2人で、「俺の女って言った」「言ってない」の王道ラブコメ風。曖昧だった2人の関係は、少しだけ恋人に近づくも、そのまま曖昧なまま終わりそうだ。だが理子はそれぐらいが丁度いいのだろう。三橋の横を跳ねるように歩いていた。
今夜放送の第9話は、最終章の前編。原作屈指の長編となった開久に乗り込む話のようだ。予告されているゲストの山崎賢人と堤真一はそろそろ出てくるのだろうか。
（沢野奈津夫）
「今日から俺は!!」
日曜：22:30〜23:25（55分） 日テレ系
キャスト：賀来賢人、伊藤健太郎、清野菜名、橋本環奈、太賀、矢本悠馬、鈴木伸之、ムロツヨシなど
脚本：福田雄一
演出：福田雄一、鈴木勇馬
主題歌：今日俺バンド「男の勲章」
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