12大会ぶりの優勝後、オリヴェイラ監督が負傷者続出の舞台裏を語る

 満身創痍を乗り越えてのタイトルだった。浦和レッズオズワルド・オリヴェイラ監督は、9日の天皇杯決勝ベガルタ仙台戦を1-0で勝利した試合後、「通常なら試合に関わらない怪我をしている選手が6人いた」と、その舞台裏を明かした。

 5日の準決勝、鹿島アントラーズ戦があまりの激闘だった。FW興梠慎三、FW武藤雄樹、MF青木拓矢の3人が後半に相次いで負傷交代。指揮官が「43年のキャリアで、怪我人だけで3つの交代枠を使ったのは初めてだ」という事態になった。それに加え、DFマウリシオは鹿島戦が肉離れからの復帰戦で強行出場だった。MF柏木陽介も万全ではなく、FWアンドリュー・ナバウトも決勝までのトレーニングで負傷者と同じグループにいたこともあった。

 そうしたなかで、最終的にはマウリシオ以外の選手たちは決勝に間に合った。オリヴェイラ監督は、その心境をこう語っている。

「私にとって、特別なゲームでした。昨晩、よく眠れなかったことを告白します。怪我人が6人いて、通常なら試合に関わらないところでした。そのうちの一人がマウリシオです。痛みを抱えていた武藤は、直前まで考えました。スタメンを決めたのは今日ロッカールームに到着してからです。青木は鹿島戦で肘を脱臼し、24時間体制で治療し、プロテクターもつけました。彼は制限のあるなかでプレーし、英雄的な働きをしてくれたと思います。興梠、柏木も普段ならプレーしなかった選手です」

 こうした条件だっただけに、前半13分にMF宇賀神友弥が芸術的ボレーシュートを決めて先制した試合展開のなか、後半17分には柏木に代えてMF柴戸海を投入。リーグ戦ではリードした展開の残り15分ほどで送り出される“クローザー”の投入タイミングも早まった。

選手やスタッフに感謝「私が与えた方向性に従ってくれました」

「こうした制限されたなかですから、守備的な試合になることは予想していました。3人(興梠、武藤、青木)も制限されたなかでも高い精度のプレーを見せてくれ、規律を守りながらやってくれました。スタッフにも感謝したいです。私が与えた方向性に従ってくれました。こうやって規律を守ることが必要でした。選手たちも、その指示を良く守ってくれたと思います」

 鹿島戦に続きスコアは1-0、前半にセットプレーから奪ったゴールを必死に守り切るという試合になった。それでも、チームがこだわったのは「勝ち方」ではなく「勝利」そのもの。与えられた手札の中で最善を尽くした指揮官の起用に応えた浦和が、12大会ぶりの天皇杯タイトルと来季アジアで戦う権利を手に入れた。(轡田哲朗 / Tetsuro Kutsuwada)

(左から)FW武藤雄樹、オリヴェイラ監督、FW興梠慎三【写真:Noriko NAGANO】