自衛隊の災害派遣活動は陸海空それぞれに役割があります。航空自衛隊も様々な役割を担いますが、そのひとつ「輸送力」に注目しました。

災害発生! そのとき航空自衛隊は

2018年9月6日に発生した北海道胆振東部地震では、多くの自衛隊部隊が救援活動を行うために北海道へ向けて出動しました。地震の影響で北海道全域が停電するなか、冷蔵庫などに入れていた食品はダメになり、物流も地震の影響で滞りました。水道も使えない地域が発生し、インフラへの影響は大きく、特に震源に近い厚真町では10月9日まで水道が不通でした。

そうしたなか、新千歳空港に隣接する航空自衛隊千歳基地(北海道千歳市)に大きな輸送機が降りてきました。機内からは大量の物資が運び出されます。どこから来て、何を運んできたのでしょうか。

防衛省自衛隊は、震災発生直後の9月6日未明から、災害が発生したときに最初に対処する初動対処待機部隊「FAST-Force(ファストフォース)」を出動させ、地上と上空から偵察し被災地に関する情報を収集しています。そこから得られた情報を元に、後に続く部隊の派遣先や規模、装備などを調整します。

災害派遣では人命救助活動や給水、給食支援などを行う陸上自衛隊の活動が大きく報道されますが、実は航空自衛隊も重要な役割を果たしていました。それは各地からの応援部隊や物資などの「空輸」です。

救援物資はどこからどう空輸されてくるの?

航空自衛隊は、発災当日の9月6日に厚木基地や入間基地から千歳基地まで、救助工作車やコンビニ調達の糧食を空輸しています。この空輸を担当したのが、航空自衛隊C-130H輸送機C-1輸送機、そして最新のC-2輸送機です。

C-130Hは愛知県の小牧基地に所在する第1輸送航空隊に。C-1埼玉県の入間基地に所在する第2輸送航空隊および鳥取県の美保基地に所在する第3輸送航空隊に。C-2は第3輸送航空隊にそれぞれ配備されています。

各地に点在して配備される輸送機ですが、今回の地震ではほとんどが入間基地を経由して千歳基地まで飛来してきました。なぜならば、東京近郊に多くの救援物資が貯蔵してあったことから、入間基地が物資などの空輸拠点になったからです。また、海上自衛隊の厚木航空基地(神奈川県綾瀬市)からも、横浜消防の救助車両などが空輸されました。

空輸実績の一例としては、9月6日に入間基地からC-2輸送機によって、横浜消防の救助工作車が、翌7日には厚木航空基地からC-130H輸送機によって東京消防庁の車両が空輸されています。

緊急車両だけではなく、経済産業省警視庁の応援人員なども空輸しました。10月8日には入間基地に集積された発電所修理機材、簡易充電器、電池、野菜ジュース、パン、缶詰、パックご飯などが入間基地から千歳基地までC-2輸送機で空輸されています。

ここで千歳基地まで運ばれた救援物資は、同基地に所属する隊員たちによって輸送機から降ろされたあとに、地上で待ち構えていた陸上自衛隊の部隊に引き渡されます。格納庫で待機していた陸自のトラックに物資が積載されると、トラックは防災拠点に向けて出発します。こうして運ばれた物資は、防災拠点で仕分けされ、各避難所などへ陸送されていったのです。

迅速な対応は普段の備えから

発災直後に迅速かつ大量の物資などの空輸ができたのも、航空自衛隊が保有する輸送機たちの活躍があったからこそです。これらの輸送機は、いつでも飛び立てるように常に良好な状態で維持されています。また、向かった先で輸送機を受け入れる部隊も、いつでも給油や必要な点検、整備ができるように準備しています。

輸送機が持つ空輸力は、災害現場でも最大限発揮されるのです。

余談ですが、今回の地震では航空自衛隊の警備犬も活躍しており、その空輸でも輸送機が使用されました。たとえば、三沢基地から派遣された警備犬「サン」号は、災害救助犬として人命救助活動に投入され、任務が終わったのち千歳基地から三沢基地へと帰途につきました。この「サン」号ですが、派遣終了後に、災害救助に関った功績として、防衛大臣褒章を受けています。

「サン」号のほかにも、第8航空団「ベルディ」号(築城)、第2航空団「ししまる」号(千歳)、第9航空団「クロード」号および「ティガ」号(那覇)、中部航空警戒管制団「ロック」号および「アイオス」号(入間)がそれぞれ防衛大臣からの褒章を受けています。この褒章には副賞がついており、サーモン缶やドッグフードなどが「ご褒美」と書かれた「のし紙」に巻かれて贈られました。

年末にかけてまだまだ多くの航空祭が予定されていますが、各基地に所属する警備犬の訓練展示も多く行われます。航空祭に訪れた際には、警備犬にも注目なのです。

千歳基地にて、救援物資を運んできたC-1輸送機を誘導する隊員(矢作真弓撮影)。