1点リードの終盤は苦しい時間続くも「みんなが集中して戦えた」

 浦和レッズのGK西川周作は、9日の天皇杯決勝ベガルタ仙台戦でフル出場すると無失点でシャットアウト。チームの1-0での勝利を最後方で支え、念願の天皇杯初優勝を果たした。

 決勝に向けて負傷者が続出し、オズワルド・オリヴェイラ監督が「守備的になるのは覚悟していた」と話した浦和ゴールを支えた。仙台の攻撃で枠内に鋭く際どいボールが飛んだのは前半26分、MF野津田岳人が左足で狙ったミドルが頭上を襲った瞬間だった。西川は落ち着いてバックステップを踏み、左手をかぶせるようにして丁寧なセービングでボールを弾き出した。後半に飛んだ仙台FW阿部拓馬のシュートも、安定感のあるキャッチングで抑え込んだ。

 西川は「なんとしても無失点に抑えて勝つことだけ、イメージしていましたから。イメージ通りの結果になるまで非常に難しい試合でしたけど、みんなが集中して戦えた。相手のやり方は理解したうえで入りましたし、怖さはそこまでなく、自分たちの守備はコンパクトにリスクマネジメントできました。前線の追いも効いていて、楽に戦わせてもらえた」と、守備陣を中心に全体を称えた。

 そうしたなかで、前半13分に先制すると、後半は特に耐える時間が長くなった。そのきっかけになったのが、後半17分にMF柴戸海を MF柏木陽介に代えて投入した場面だ。アディショナルタイムも含めれば30分以上の時間が見込まれるなかで、柏木が万全の状態でなかったことも踏まえて、指揮官は“クローザー”の早期投入を決断した。西川は、ここからの時間をこう話した。

「残り時間を長くは感じなかったです。彼(柴戸)は二度、三度と続けて相手を追えるポテンシャルがありますし、彼が入る意味はメッセージだと。ゲームを閉める、終わらせるというところにシフトしました。この交代が監督からのメッセージだと伝わってきたので、相手が前掛かりになるのを想定内にして戦えたと思います」

広島時代は決勝で二度敗戦

 西川は天皇杯の準優勝を2回経験している。特に、浦和に加入する前年になったサンフレッチェ広島時代に迎えた2013年度の天皇杯では、準決勝でFC東京と対戦。PK戦にもつれ込んだ試合は、「決められたら負け」という状態から2本連続でセーブし、自身もキックを成功させた。そしてもつれ込んだ7人目のキックを止めて勝利。しかし、決勝では横浜F・マリノスに敗れた。

 優勝しなければ、準決勝がどんなに劇的な勝利でもタイトルの栄冠はつかめない。5日の鹿島アントラーズ戦がまさに激闘の準決勝だった浦和にとって、今回もそれは同じだった。西川は、その重みを知り尽くしている。それは、決勝に向けた思いにも表れていた。

「決勝で勝つためには、我慢強く、ちょっとしたところを抜かずにやらないといけない。スキを見せれば1本やられる。決勝はどんな内容でも勝つこと。どんな形でも勝ちたい」

 まさに、スキを見せない90分間を体現した浦和は、優勝チームにふさわしかった。笑顔がトレードマークの守護神は険しい表情でチームを鼓舞し続け、試合後にその溜め込んだ笑顔を大爆発させていた。(轡田哲朗 / Tetsuro Kutsuwada)

浦和レッズGK西川【写真:Noriko NAGANO】