2018年3月1日に登場した日産自動車のミニバン「セレナ e-Power」の販売が好調だという。もともとセレナは2018年上期のミニバン販売台数でNo.1を誇る人気車種なのだが、そのうち毎月4割前後がe-POWER搭載車だという。そこで今回、改めてセレナe-Powerの人気の秘密に迫ってみた。

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■ 使い勝手がとてもよいセレナ

もともとセレナはクラスNo.1の広さを誇る室内空間と、豊富なシートアレンジ、両手がふさがっていても足先を入れて引くだけで自動開閉ができるスライドドア、開口部の大きなデュアルバックドアといった、痒いところに手が届いている」一台となっている。

これらは「家族」だけでなく、ご近所さんと一緒にでかけるといった時に、とても嬉しいものだ。個人的にいいなと思うのは、ほぼ全席にUSBレセプタクルを用意していること(オプション設定)。今どきスマホは1人1台は当たり前になりつつあるので、どこに座ってもスマホ充電ができるのはとても嬉しい。

もちろん駐車枠を指定するだけでハンドル操作を自動で行う「インテリジェント パーキングアシスト」やセレナで初搭載した高速道路などの長距離走行に便利な運転サポート機能「プロパイロット」も装備しているのも見逃せない。

■ 街中での走行が楽!高速道路はもっと楽!

実際にセレナを運転すると、このクルマが運転手にとても優しいことがよくわかる。まずワンペダルで加減速と停止ができる「e-POWER Drive」が秀逸で、ブレーキを踏む必要がほとんどない。特に都心では、アクセルブレーキの踏み替えを頻繁に行うが、アクセルペダルから足をリリースするだけで、クルマがゆっくり停車。足の踏み変えは意外と面倒だったことを知ると共に、穏やかな停車挙動は同乗者にも優しい。さらに最近の自動車はアイドリングストップを搭載しているが、発進時にセルモーターが回るなどの振動がないのも美質。停止時や発進時の挙動だけでも「電気自動車はいいなぁ」と思うことは間違いないだろう。

さらに走行中の静粛性が高いのもポイント。時折発電用にエンジンが駆動するものの、それを意識することはほとんどないのもよい。特に市街地ではほとんど感じることはないだろう。そして積極的にモーターで走行するモードも備えており、例えば深夜の外出など、エンジン音が気になるような場合でも静かに発進できる。

感心するのは、センターディスプレイの見やすさとナビゲーション。タッチパネルディスプレイは直感的に操作できるだけでなく、そのインフォメーションの多さは大変役立つ。特に高速道路で通過するサービスエリアの到着予定時刻がわかるのは、小さな子どもがいる家庭には嬉しい配慮ではないだろうか。

その高速道路で有効なのが「プロパイロット」だ。使い方は自動車ユーザーなら誰もが一度は使ったことがあるであろう、アクセルペダルを踏み続けることなくセットした一定速度を維持する機能「クルーズコントロール」と同じで、前走車と一定の車間距離を保ったまま同一車線の中央を走行するこの機能。最初使う時はハンドルを添えるだけでクルマが走ることに怖さを覚えないわけではないのだが、慣れるとむしろ「使った方が安全」とさえ思えるのだから不思議。しかも渋滞時も前走車に追従しつづけるので、レジャー帰りで疲れているのに、渋滞でさらにシンドイという想いをしなくてよいのが大変助かる。

ただし雨が降ると安全のためこの機能は使うことができないので、そこは過信しないようにして頂きたい。

■ 経済性の面で選んでもe-POWER

e-POWERとは電気自動車の一種。エンジンを搭載するものの、それは発電のみに徹し、車両は大出力モーターのみで駆動する。モーター駆動の良さである静粛性と発進加速の良さを得ながら、100%電気自動車では必要となる充電設備と充電時間が不要。発電用のガソリンを入れた分だけ走行する。e-POWERは充電の心配をせずに電気自動車の恩恵を受ける、現状において最も現実的な電気自動車といえそうだ。

■ 税制面で優遇!さらにランニングコストも安い

このe-Powerのメリットは、静粛性にとどまらない。とても経済的なクルマなのだ。「セレナ e-POWER X」(296万8920円)と既発売のハイブリッド車である「セレナ X」(250万4520円)で比べてみたいと思う。まず購入時にかかる取得税と重量税はe-POWERの場合、エコカー100%減税対象車であるため、合計11万5000円優遇。いっぽうハイブリッド車は取得税20%、重量税25%減税であるため、合計約2万円優遇と大きく隔たる。さらに登録翌年度に適応される自動車税の減税額であるが、e-POWERは2万5500円であるのに対して、ハイブリッド車は適応対象外。その自動車税そのものも、e-POWERは排気量が1200ccであるため3万4500円/年、ハイブリッド車の方は排気量2000ccであるため3万9500円/年と、5千円の差が生じる。

もちろん燃費も異なる。カタログ値であるが、ハイブリッド車が17.2km/Lであるのに対してe-POWERは26.2 km/L (いずれもJC08モード)を実現。このように車両本体はハイブリッド車にくらべて高いものの、その後のコストで差が生まれてくる。つまり長く乗れば乗るほどおトクになってくるのだ。この家計の優しさが、セレナe-Powerがウケている点の一つといえそうだ。

ミニバンは家族での旅行など、大人数の移動に用いられることが多い車種だ。家族が使う以上、ママは経済性の高さを求め、運転手であるパパは楽に運転したいと願うだろう。これらのニーズにおいてセレナe-Powerは、現時点で最も贅沢な回答であることを再認識した。(東京ウォーカー(全国版)・栗原祥光)

セレナe-Power