「働くこと」をテーマにしたテレ東のドラマ枠「ドラマBiz」第3弾『ハラスメントゲーム』テレビ東京・月曜22:00〜)第8話「会社を救え!最強の敵現る!!」。

前回は、役員秘書・小松美那子市川由衣)にハメられ、セクハラで訴えられたコンプライアンス室長・秋津渉(唐沢寿明)が辞める辞めないでもめていたが、今回は急展開、会社の身売り話に。

「脇田常務」から「お前」に
どうやら社員たちに内緒で会社の身売りを進めているらしい丸尾社長(滝藤賢一)。

辞表を提出した秋津を、敵対関係にあったはずの脇田常務(高嶋政宏)が慰留したことで「身売りに気付いているのでは!?」と疑心暗鬼になり、

「今気付かれたら終わりだ。ひとりで行ってくる」

と、身売りの交渉相手の元に向かった。

結局、この行動のせいで身売りの件がバレバレになってしまうわけだが。……やっぱりボンクラだなー、この社長。

そのまま何時間も連絡がつかなくなった丸尾社長を探すため、携帯に仕込まれているGPSから場所を特定すると、新宿の「ロザレアホテル」にいることが判明する。

役員たちにも、家族にも秘密で真っ昼間からホテルに行っていたらエロ関係を疑いそうなところだが、社長が身売りをするため暗躍していることに感づいていた秋津&脇田は、ホテルで交渉相手と会っていると見抜く。

秋津は社長を連れ戻すため単身ホテルに乗り込み、脇田は身売りに賛成していると思われる副社長以下役員の説得に当たることに。

「お前と俺が協力して会社を守ろうとしてるなんて笑えるね」

これまで、元・部下だった脇田のことを「脇田常務」と呼んできた秋津だが、ここにきて「お前」。

因縁のあったふたりが、会社を救うために力を合わせる。グッとくる展開だ。

「私的利益」VS「みんなの利益」の戦いなのか
ホテルの部屋では、買収ファンド「ナスキーパートナーズ」の代表・横手理市(加藤雅也)が丸尾社長を軟禁して契約を迫っていた。

当初は身売りに前向きだった丸尾だが、「すべてのスーパーを閉店して、土地や建物をマンションを建てる事業者に売り飛ばす」という横手の目的を知らされ、契約を拒んでいたのだ。

……契約前なんだから、条件に納得できなければさっさと帰ればよさそうなものだが。そしてナスキーパートナーズにしても、契約前に手の内を明かさなきゃよかったのに。

ラスボスとなりそうな横手も、ザ・悪役なオーラをビンビンに放ってはいるものの、イマイチつかみ所がない。

9時間以上も軟禁してまで契約を迫っていたわりには、秋津と丸尾が罵り合う小芝居をしただけで、

「お引き取り下さい。ホテルに迷惑をかけたくない」

とアッサリ解放。……だったら、9時間も何やってたんだ!

一方、マルオー本社では役員たちの話し合いが行われていた。「自力で立て直しをはかるべき」と主張する脇田に対し、

「社長にそう言われれば反論できませんよ」
マルオーという会社は丸尾家の経営ですから……」

などと、保身のため社長にすり寄るようなことしか言わない副社長や専務たち。

脇田はグーを握りしめて怒り心頭

「会社が奪われるかも知れないんですよ。全社員の生活に影響するんです!」

秋津も、横手に対して、

マルオースーパーは社長ひとりのものなじゃありません。社員全員のもの、そして地域のお客様のものなんです」

と熱く語っていた。

「人のためになりたいなどというのは自分をごまかしているだけだ。アナタは嘘つきだ」

反論する横手。

丸尾社長も以前、社長の座を奪われるくらいなら会社が潰れてもいいと言っていたが、「私的な利益を追求する人」VS「みんなの利益を目指す人」という図式が見えてきた。

秋津に関しては、若干いい子になり過ぎているのが気になるところ。当初はもうちょっとひねくれたキャラだったはずだけど……?

社員みんなのため、直球でハラスメント問題に取り組んでいる部下・高村真琴(広瀬アリス)と触れあううちに、心を入れ替えたのだろうか。

そして脇田常務の方は、まだまだ信用できない感じも。

会社を救うため「社長の退陣を要求する」という方法をとっている。「全社員の生活」とか言ってるけど、結局、自分が社長のポジションを狙っているだけなのかも知れない。

また会社を辞めちゃう結末?
というわけで今夜最終回!

丸尾を軟禁して契約を迫っていたわりに、アッサリと解放してしまった横手だが、契約を諦めたわけではないようだ。

契約を進めるため、横手が隠し持っている球は、丸尾社長のスキャンダルと、ちょいちょいマルオースーパーに送り込んできていたクレーマー集団。

どちらもマルオーの評判を落とし、経営を傾けさせてから会社を手に入れようという作戦なのだろうが、露骨に敵対的な工作をしていたら、契約の話自体なくなっちゃうような気もするけど……?

そして、一旦辞表を出している秋津の去就はどうなるのか。

前作『ラストチャンス』でも、仲村トオルが何だかんだで経営再建に成功した会社を去るという最終回だったが、今回も、会社のゴタゴタを収めた秋津が会社を去るエンディングの予感がハンパない。

辞めることを決心しているからこそ、社長や役員たちに対しても本音をぶつけていけているわけだが、「働く人を応援する」ドラマなのに、結末が会社を辞めるパターンばかりなのもどうかと……。

それとも、サラリーマン的には「イヤな会社に辞表を叩きつけて辞める」ということこそが、最高にカタルシスを感じるポイントなんだろうか?
(イラストと文/北村ヂン

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『ハラスメントゲーム』テレビ東京
原作:井上由美子『ハラスメントゲーム』河出書房新社刊)
脚本:井上由美子
演出:西浦正記、関野宗紀、楢木野礼
主題歌:コブクロ「風をみつめて」(ワーナーミュージック・ジャパン
音楽:エバン・コール
チーフプロデューサー:稲田秀樹(テレビ東京
プロデューサー:田淵俊彦(テレビ東京)、山鹿達也(テレビ東京)、田辺勇人(テレビ東京)、浅野澄美(FCC)
制作協力:フジクリエイティブコーポレーション
製作著作:テレビ東京

イラストと文/北村ヂン