
妊娠8ヶ月以降になると、妊婦さんのほとんどが経験するのがお腹の張りです。多くの方が感じるものとはいえ、妊娠経過に伴うものなのか、受診が必要なものなのかなど、不安になることでしょう。そこで、お腹の張りの原因と対処法、要注意の症状についてお伝えします。
妊娠後期に起こるお腹の張りとはどのような感じ?
お腹の張りとは、通常は柔らかい子宮が収縮して硬くなっている状態を指します。赤ちゃんの成長に伴い子宮が大きくなると、例えば胎動を感じたときなどちょっとした刺激でも張りやすくなるものです。また、臨月となり出産近くになると、お産に向けて子宮も準備運動を始めるので、不規則に子宮の収縮がみられることが多くなります。 お腹の張りの感じ方は人それぞれで「下腹がキュッとする感じ」「お腹の表面が全体的にスイカのように硬くなる」「お腹の中で風船が膨らんでパンパンになる感じ」など、表現も異なり、また張り方にも個人差もあります。このように妊娠後期にお腹の張りがあっても、すぐおさまれば生理的なもので、多くの場合は心配ないでしょう。ただし、中には注意を要するものもあります。 しかし、そもそも自分のお腹が張っているかどうかが分からなければ、注意の仕様もありません。普段から張っているのかどうかがよくわからないという妊婦さんも意外に多いものです。そういう方は、日頃からお腹を触って、張っていると感じる状態とそうでない状態の違いを確認しておくとよいでしょう。横になってリラックスしているときは、子宮も柔らかく張っていないことが多いものです。仰向けで両膝を立てた状態で、下腹部を両手の掌で包み込むように触って感じてみましょう。
妊娠後期に頻繁に起こるお腹の張りの原因とは?
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・子宮収縮
妊娠後期によく起こるお腹の張りの多くは子宮収縮によるものです。人によって感じ方はさまざまですが、数十秒かけてギューッと締め付けられるような感じで、お腹を触ると硬くなっているのが張っている状態で、その後和らいでいきます。頻度は、1日に数回であれば生理的なものといえるでしょう。ただし、1時間に5~6回も張る、張りに加えて痛みもあるなどの場合は、切迫早産の危険もあるので注意が必要です。
立ちっぱなしや座りっぱなしなど同じ姿勢を続けると張りやすいので、適度に姿勢を変えましょう。また、疲労やストレスも子宮収縮の原因にもなりますから、無理しないようにこまめな休憩を心がけましょう。
・前駆陣痛
妊娠37週以降になると、身体がお産に向けての準備を始めるので、子宮収縮も頻繁になり回数も増えます。特に出産の前段階には、不規則に子宮が収縮してお腹が張る「前駆陣痛」が起こります。またお産の兆候には、ピンク色のおりものや、出血がおりものに少量混じる「おしるし」もあります。このような症状が現れたら「そろそろお産かも」と心の準備をし、入院の準備ができているかを確認しながら様子をみます。生理痛のようなお腹の痛みを伴う張りが、1時間に6回ほど規則的に来るようになるのが「陣痛」で、お産の始まりの目安です。そのほか水が流れたり尿が少し漏れたりしたときのような感じがした場合は「破水」の可能性もあり、入院の目安になります。
・便秘
妊娠中はホルモンの影響があり、また大きくなった子宮が腸を圧迫することで、便秘になりやすくなります。便意を感じたときに、腸の動きを子宮収縮と勘違いすることもあります。下腹部に手を当ててみて、硬さや張り具合を確認してみましょう。ただ、便秘が続くと子宮も収縮しやすくなります。便秘のときにはぜひ妊婦健診で先生に相談しましょう。薬でコントロールしていくのがよいでしょう。
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ちなみに、鼠径部(そけいぶ)から下腹部にかけて引っ張られるように突っ張った感じのすることがあります。これは、お腹が大きくなるにつれて、重みで圧迫されることや、じん帯が伸ばされることによるものです。妊娠経過に伴う生理的なものではありますが、子宮の収縮との違いがよくわからない場合や、違和感があってつらい場合は、妊婦健診で相談しましょう。 ほかにも腹帯や妊婦用のガードル、骨盤ベルト、ウエストのきつい洋服などでお腹が締めつけられていると、お腹の張りや痛みがあるように感じる場合があります。不快感があれば外したり、種類やサイズを変更したりしましょう。また、横になるときには外しましょう。
お腹の張りと同時に起こる症状
お腹の張りに加えて痛みや出血などの症状があるときは要注意です。
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・腹痛や吐き気
例えば、お腹が板のように硬くなってお腹の張りが持続する、激痛がある場合は「常位胎盤早期剥離」の可能性が考えられます。胎動が少なくなったと感じたり、少量の出血や吐き気を伴う場合もあります。これは、赤ちゃんに酸素や栄養を運ぶ胎盤が、お産前に突然はがれてきてしまうものです。対応が遅れると赤ちゃんとお母さんの命に関わります。急を要する状態ですので、至急通院している産院へ連絡し、受診をしましょう。
・腰痛や背中の痛み
小さなお腹の張りでも、回数が多いと早産の原因にもなりかねません。お腹の張りをあまり感じず、生理痛のような腰痛や背中の痛みを陣痛が起こる前に感じる人もいるようです。子宮は風船のような形をしていますが、風船の口にあたる部分を「子宮頸管」といいます。赤ちゃんが生まれる準備として、出産が近づくにつれてこの部分がやわらかくなり、お産近くになると長さも短くなって少しずつ子宮口が開いてきます。けれども、早いうちから頻繁に子宮収縮があると、それに伴い子宮頸管も短くなってきて、まだお産の時期ではないのに子宮口が開いてきてしまう恐れがあります。
・おりもの
目安としては、37週未満で1時間に数回と頻繁なお腹の張りがあること、併せて生理痛のような痛みも伴う、ピンク色のおりものやおりものに血が混じるものがみられるといった症状がある場合には切迫早産の恐れがあります。通院先に連絡し、医師の診察が必要か相談しましょう。妊婦健診の内診で子宮頸管が短めと指摘されている人や逆子と診断されている人など、切迫早産の兆候があったら早めに連絡するよういわれている人は特に注意が必要です。
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お腹の痛みを伴わなくても、いつもより頻回に張る、横になって休んでいてもお腹の張りが変わらない、またはかえって張る、出血があるなどの場合にはすぐに病院へ連絡をしましょう。 また、尿漏れのように下着が濡れる場合は破水の可能性もありますから、同じく病院で相談しましょう。
仕事中や職場でお腹の張りがひどいときは?
<対処法>お腹が張ってつらいときには、まずは安静にしましょう。自宅で家事をしているときであれば、いったん中断して横になって休みます。 仕事をしている妊婦さんも多いと思います。仕事中にお腹の張りを感じたら、特に立ち仕事のときにはまず座って安静にしましょう。デスクワークの人は、同じ姿勢を取り続けることでお腹が張ることもあるかもしれません。ときどきトイレに行くようにするなどして、休憩をこまめに取りましょう。医務室など、お昼休みに少しでも横になれるような場所で休めればなおよいですね。 いずれにせよ、無理は禁物です。日頃の生活の中で、お腹の張りの原因になっているものはないか考えて、周りに協力を求めたり、自分でも意識したりしながら改善していきましょう。 たいていはしばらく休めば治まるものですが、横になってもお腹の張りが続く場合にはトラブルや病気の可能性もあり、注意が必要です。
お腹の張りが突然なくなるのはなぜ?
臨月になると赤ちゃんが骨盤の中に下がっていくので、今までのようにお腹の張りを強く感じなくなる場合もあります。胎動があれば心配ありませんが、不安があれば検診時に医師や助産師に今がどんな状態かを訊いてみましょう。
お腹の張りがひどいときの寝方
お腹の張りがつらいときは、どんな寝方で休むのがよいのでしょうか?仰向けだと子宮が伸ばされ、張りを強く感じる人が多いかもしれません。また、大きくなった子宮が横隔膜や肺を圧迫するので、息苦しさを感じる人もいるでしょう。そんなときは少しでも緩むような横向きの姿勢を試してみましょう。「シムス位」といって身体を左側へ向けて横向きになるのもおすすめです。とはいえ、基本的には寝返りを打ちながら、より楽だと思う姿勢で休んで構いません。クッションや抱き枕などのグッズを使用しながら、自分にとってより楽な寝方を見つけましょう。

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