第11週「マンペイ印のダネイホン!」 第61回 12月10日(月)放送より
脚本:福田 靖 
演出:渡邉良雄
音楽:川井憲次
キャスト:安藤サクラ長谷川博己、内田有紀、松下奈緒、要潤、大谷亮平
     桐谷健太、片岡愛之助、橋本マナミ松井玲奈、呉城久美、松坂慶子、橋爪功、瀬戸康史ほか
語り:芦田愛菜
主題歌:DREAMS COME TRUE「あなたとトゥラッタッタ♪」
制作統括:真鍋 斎

61話のあらすじ
無事に釈放された萬平(長谷川博己)と従業員たち。&世良(桐谷健太)。
だが、一度逮捕されたことによって会社としての信用が失われたと、専売局が塩の取引をしばらく取りやめると言って来た。
この際、塩製造はやめてダネイホンに専念したらどうかと福子(安藤サクラ)は萬平に提案し、社名が「たちばな栄養食品」になる。

朝がドラマだらけ
12月10日(月)、あさ7時50分ごろから日本テレビ「ZIP!」内で朝ドラマ「生田家の朝」がはじまった。
脚本はバカリズム、企画プロデュースと主題歌が福山雅治、出演はユースケ・サンタマリア尾野真千子というなかなか豪華なメンツ。
“7時50分ごろ”というのは朝の情報番組「ZIP!」の中の番組なので、多少の前後があるということらしい。月から金まで毎朝7分ほど、ユースケと尾野が演じる夫婦とふたりの子供たちが暮らす家で起こる出来事が描かれる(全13回予定)。
あさ7時15分からBSで朝ドラべっぴんさん」の再放送、7時30分からBSで朝ドラまんぷく」の早放送を見たあと日本テレビ「生田家の朝」を見て、8時から総合で「まんぷく」本放送というドラマ尽くしの朝になりそうな12月だ。
明らかに狙ってきていると思える日テレ朝ドラマ。
現代を舞台に、F2層の夫婦が主人公にして、ダイニングテーブルやソファを使ってない問題、無味無臭の家族の会話など、バカリズムの鋭いくすぐりが冴える。
対して、「まんぷく」は見る層を選ばない、お年寄りでも理解可能な、ゆったりとやさしい世界を展開していく。

まんぷく」第11週、61話、最初のシーン。
朝ごはんをみんなが食べていると、新たに会社に参加した真一さん(大谷亮平)がスーツを着て出勤してくる。気が急いて早く来てしまったという真一さん。
ものすごい既視感である。9週・54話、真一さんが早起きして、みんなが朝食をとっているときに出勤してきたら、突如進駐軍がやって来たのだった。
このパターン、また何かある……かと思ったら、専売局から塩の取引中止の電話が来た。
真一さん、スーツで朝食時間に出勤しないほうがいい気がする。

……とこんな感じで、楽しいことも事件なも、きわめてほのぼのと描く「まんぺいさん」じゃなかった「まんぷく」。
11週も、しつこいくらいに回想で、海に近い土地にやってきてゼロから塩作りをはじめた1年間のことを振り返ったうえで、塩を作る業者は何社もあるから、萬平の稀有な発明・ダネイホン作りに専念しようという流れとなる。

萬平たちが捕まっている間に、塩をつくる鉄板や大釜は錆だらけになっていた。
克子(松下奈緒)や忠彦(要潤)が手伝いに来てくれていたが、ダネイホンを作るだけで手一杯で、鉄板や大釜のケアにまで手が回らなかったようだ。
いやいや、そこは福子がちゃんと守ろうよっていう話にはならない。できないことはできなくていい。できることをやればいい。そんなやさしい世界なのだ。

61話で、得られる教訓は、このような「無理はしなくていい」のほかに、
「誰もやらないことをやる。それによって不当な搾取をされることを回避できる」
ということである。
まんぷく」はほのぼのドラマであると同時に、意外と骨太ドラマでもある。

女の本懐はイケメン婿に囲まれることと覚えたり
まんぷく」は「渡る世間は鬼ばかり」(脚本:橋田壽賀子)的な雰囲気もあると感じた61話。
「渡鬼」は最初、岡倉夫婦と5人の娘が中心で、娘たちが嫁にいった先の家庭まで描かれ、娘たちも親になり、子供たちがまた結婚して……とどんどんファミリーが大きくなっていく。
朝ドラも、主人公が終盤、姑になって、たいてい三世代くらいまで描かれるが、嫁時代が物語の中心であることが多い。
今回、福子が萬平の嫁として生きるところがやっぱり中心になっているが、その代わり、鈴(松坂慶子)がいる。
前にレビューで、鈴世代(五十代)以上の視聴者が多く、そちらが感情移入できるのはじつは福子よりも鈴なので、彼女の娘や婿ほか若者に対する苛立ちは視聴者の共感につながるというようなことを書いた。従来の朝ドラは、鈴世代が主人公に意地悪して、いわゆる敵キャラになることが多かった(嫁いびり)、そういうエピソードが喜ばれる時代ではなくなったのだと思う。

61話は、忠彦が描いた鈴の肖像画が仕上がり、まるで「観音様」と萬平たちに賞賛されて、鈴はごきげんになる。
公式ツイッターでは、松坂慶子が長谷川博己、要潤、大谷亮平に囲まれて微笑んでいる写真が公開された。

素敵な恋人や旦那様と出会う人生はもちろん素敵だが、さらにイケメンでやさしい婿(萬平が義母扱いを覚え始めた)に囲まれる人生後半こそ、女のネクストの夢、なのかもしれない。
まんぷく」で朝ドラがちょっと進化したような気がする。

進駐軍に捕まっている間、ふわふわのパンやおいしいコンビーフを食べていたという話が可笑しかった。
ストと文/木俣冬
(イラストと文/木俣冬)

連続テレビ小説まんぷく
NHK総合 月~土 朝8時~、再放送 午後0時45分~
BSプレミアム 月~土 あさ7時30分~ 再放送 午後11時30分~
◯1週間まとめ放送 土曜9時30分~

朝夕、本放送も再放送も オールBK制作朝ドラ
べっぴんさん」 BS プレミアムで月〜土、朝7時15分から再放送中。
60話

あさが来た」 月〜金 総合夕方4時20分〜2話ずつ再放送
土曜はおやすみ

イラストと文/木俣冬