「働くこと」をテーマにしたテレ東のドラマ枠「ドラマBiz」第3弾『ハラスメントゲーム』テレビ東京・月曜22:00〜)最終回「決戦の時は来た!!」。

第1話1円玉が再び
軟禁状態となっていた丸尾社長(滝藤賢一)をホテルから連れ帰ることに成功した秋津渉(唐沢寿明)。

しかし、会社売却の契約を迫る買収ファンド「ナスキーパートナーズ」代表・横手理市(加藤雅也)の攻撃は収まらなかった。

スーパーに「カスタマーハラスメント」軍団を送り込んだり、ネットで「全店閉店」のデマを流したり。

そして、横手の持つ最大の隠し球は「一円玉の写真」。一瞬、「なんじゃそりゃ?」と思ったけど、第1話メロンパンに異物していたやつか!

あの時は異物を混入させた社員と、その店の店長を守るため、異物混入事件自体は自主的に公表したものの、犯人に関しては「判明していない」と言及するにとどめていた。

確かに、犯人が自社の社員であると分かっていながら隠蔽していたことがバレたら大スキャンダルだ。

ショックを受けた丸尾社長は、

「たとえスーパーは諦めても、マルオーの名前だけは守る。それが創業家の役目なんだ」

と、横手との契約を締結することを決心する。

田中直樹、なんで出てこないんだ! 予算の関係か!?
最終回のサブタイトルは「決戦の時は来た!!」。

横手はラスボス感あふれる悪役ではあるものの、最終回前にポッと出てきたキャラクター。「決戦」する相手としては弱いかなと思っていたのが、これは対・横手ではなく、気弱でボンクラな社長との「決戦」なのだろう。

スーパー存続のため、社長を説得に当たる役員&社員たち。

スーパー業界が末期を迎えているから、自分の経営責任はないと主張する社長に対し、「(売上げを)維持しているスーパーはあります」と冷静に答える秋津。

「ウチも色々と手を打ってきたじゃないか
でも全部裏目に出た」

という社長に脇田常務(高嶋政宏)も、

「それは創業家の社長に対して、我々も遠慮があったからです」

と淡々と返す。

高村真琴(広瀬アリス)は涙ながらにスーパーの素晴らしさを訴え、社長を説得することを諦めかけている脇田に、ちょうちん持ちだった水谷(佐野史郎)が発破をかける。

主要キャラクターがそれぞれの個性を活かし、スーパーを守るために動く。いかにも最終回らしい展開。

そして、各店の店長たちが勢揃いして社長にスーパー存続を訴える感動のシーン……なのだが、ここはいまひとつ乗り切れなかった。

というのも、これまでに登場していたのは品川店の店長だけだったから。他の店長は「誰?」状態だ。

やはりここは、セクハラで騒いでいたパート(余貴美子)や、モラハラに悩んでいた店舗開発部長(黒谷友香)、アルハラで訴えられた広報部長(矢嶋智人)、リスハラを恐れる人事部長(石井正則)などなど、これまで秋津が救ってきた社員たちが大集合し、バーッとエピソードを回想してこそ感動の最終回ってものだろう。

そしてなにより、異物混入事件の原因となった練馬店店長(田中直樹)が出てこないのは明らかにおかしい!

……豪華ゲスト陣を、もう一回集める予算がなかったんだろうなぁ。テレ東ドラマの悲しさよ。

それでも、第1話で秋津が「最初は抵抗があった」と語っていたエプロンを締めて社長を説得するくだりなどはベタだけど感動させられる。

「スーパーはただ物を売る場だけの場所じゃないんですよ」
「ネットで何でも買えるけど、やっぱり手に取って誰かに、どれが美味しいの? どうやって使うのって尋ねて物を買う場所も必要なんです」

PayPay」の100億円キャンペーンのおかげで、普段「Amazon」ばっかり使っているのに、久々に実店舗へ足を運んでいる人も多いんじゃないかと思われるタイミングでこの言葉は胸に響く

確かに店員に説明を受けながらの買い物も、ネット通販と違った温かさがあってなかなかいいんだ。そして「PayPay」、全然当たらないんだ。

広瀬アリスの言葉にガッツポーズ
社員たちの言葉に心を動かされたのか、頑なに「創業家のプライド」に縛られていた丸尾社長も、自分の経営能力のなさに気付いたのか、脇田に社長の座を譲ることを決意。

横手に土下座をして、マルオースーパーから手を引くように頼んでいた脇田の元に登場した秋津が「契約はしない」と言い放つ。

社長就任が決まった脇田と秋津が酒を酌み交わし和解。

最後に、会社を去るのかなーと思われていた秋津も、地方店舗の店長として残ることを決め、伏線をキッチリ回収してのキレイな最終回だった。

若干、「こんなに活躍したのにまた地方かよ!」という気持ちもなくはないが。最後、一気に社長に抜擢されてめでたしめでたしというビジネス・ドラマがあってもいいと思うけどなぁ。

あのエプロン姿や、スーパー愛から、店長に戻るというのはキレイな終わり方だろう。

そして、秋津がコンプライアンス室を去り、さみしそうにしている高村に、

「今度は、オレを信じたら?」

なんて言い出したあの弁護士(古川雄輝)!

いつも現場についてきてはいるけど、大して役に立ってなかったボンクラが、ここでいい雰囲気出してキスとかしたら許さねえぞ! だいたい、最後まで名前、覚えられなかったよ! と思っていたところ、

「(笑)ないない!」

という高村の言葉でガッツポーズ。素晴らしい最終回でした!

次期は『花咲舞が黙ってない』っぽいドラマか?
さて、次期「ドラマBiz」は、周良貨・夢野一子の漫画『この女に賭けろ』を原作とした『よつば銀行 原島浩美がモノ申す!〜この女に賭けろ〜』。

うーん、池井戸潤の小説を原作としたドラマ『花咲舞が黙ってない』っぽい! やっぱり、あの枠を狙ってますな。

主演は真木よう子。脚本は『TIGER & BUNNY』『とと姉ちゃん』の西田征史ということで、これまた色々な意味で話題を呼びそうだ。

しかし、放送前に原作を読んでおこうと「Amazon」を調べたら、なんと絶版になっているようでプレミアム価格に! さ……再版してよ!(「Kindle」でも読めます)
(イラストと文/北村ヂン

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『ハラスメントゲーム』テレビ東京
原作:井上由美子『ハラスメントゲーム』河出書房新社刊)
脚本:井上由美子
演出:西浦正記、関野宗紀、楢木野礼
主題歌:コブクロ「風をみつめて」(ワーナーミュージック・ジャパン
音楽:エバン・コール
チーフプロデューサー:稲田秀樹(テレビ東京
プロデューサー:田淵俊彦(テレビ東京)、山鹿達也(テレビ東京)、田辺勇人(テレビ東京)、浅野澄美(FCC)
制作協力:フジクリエイティブコーポレーション
製作著作:テレビ東京

イラストと文/北村ヂン