「ご注文の仏像ができましたので送ります」

 こうした内容の不審電話が奈良市内の民家に相次いでいるとして、同市危機管理課が公式ツイッターで注意喚起しています。心当たりのない人に仏像を売りつける詐欺の恐れがある、というものです。有名なお寺の多い奈良の話かと思いきや、全国的にも相談や被害が相次いでいるようです。地元行政と警察、国民生活センターに聞きました。

全国的には山陽地区が多い

 奈良市危機管理課の投稿は12月11日。「不審電話発生情報」として「最近、奈良西警察署管内において『ご注文いただいていた木彫りの仏像ができあがりましたので送ります』『半年前に仏像をご注文いただいていましたが、受け取っていただけますか』等の不審電話が相次いでいます」「この種電話は、今後、仏像等高価な商品の送りつけ詐欺等に発展するおそれも考えられます」と注意を呼び掛ける内容です。

 同課担当者は「奈良西警察署から情報提供がありました。振り込め詐欺など、いろいろな手口の詐欺がありますが、手口を市民に知ってもらうのが一番の対策ということで投稿しました。今のところツイッターでの広報のみですが、相談が増えてくるようなら、FM放送などの手段も検討します」と話します。

 奈良西署生活安全課の担当者に聞きました。

Q.仏像を巡る不審電話は何件くらいあったのですか。

担当者「10月からの2カ月で計4件の相談ですが、12月6日、7日と続けてありました。警察に連絡する人は一部だと思われるため、実際はもっと多い可能性があり、警鐘を鳴らそうということになりました」

Q.実際に被害に遭った人は。

担当者「今のところ聞いていません

Q.奈良だから多いのかと思いましたが、以前もありましたか。

担当者「それは特にないと思います」

 全国的な傾向について、国民生活センター相談情報部の担当者に聞きました。

Q.奈良市で、仏像を巡る不審電話が相次いでいるそうです。全国的にも多いのでしょうか。

担当者「同様の電話が全国で、進行形であります。『仏像を注文いただいていました』と電話があり、『注文していません』と否定しても『忘れたんですか』と畳み掛けてきます。『仏像を注文されていたので、持っていきます』という電話もあるそうです。『覚えがない』と断ってもしつこくかかってくる、という相談が、全国から国民生活センターや消費生活センターに入っています。実際にお金を払ってしまった例もあります」

Q.どのくらいの相談がありますか。

担当者「不審電話や訪問などを合わせた『仏像』に関する相談は、2015年度189件、16年度327件、17年度364件です。ここ10年では、2011年度503件、12年度618件と特に多くの相談がありました。東日本大震災の影響で社会不安が高まる中、仏像販売の勧誘が盛んに行われたようです。『震災で仏像を売却したいという人がいる』という勧誘もあったそうです」

Q.相談者は高齢者が多いのでしょうか。

担当者「ここ10年の平均年齢は、およそ76歳です。高齢者の方で日中、在宅している人が多いということもありますが、高齢者の名簿が電話をかける側に出回っている可能性もあります」

Q.相談が多い地域はありますか。今回は奈良市で相次いでいるという情報で取材を始めました。

担当者「地域ブロック別の統計では、ここ10年の全国の相談件数3299件のうち、最も多いのは山陽(岡山、広島、山口の3県)で635件です。奈良を含む近畿2府4県は421件ですね。山陽地方がなぜ多いかは分かりません」

Q.仏像を巡る不審電話があった際や、訪問時、仏像を送りつけられた場合のアドバイスをお願いします。

担当者「いずれの場合も、きっぱりと断ることが大事です。電話の場合は『どこの業者か』と聞くと、電話を切ったという事例があります。動揺して隙を見せてしまうと、つけ込んでくるので注意しましょう。訪問時は、覚えがなければ家の中に入れないのが一番の対応です。

送りつけてきた場合は、受け取りを拒否してください。『運送業者さんに申し訳ない』と思うかもしれませんが、覚えがなければ、きっぱりと拒否してください。『家族が注文したのだろうか』と思って受け取らないように、通販などで何か注文したときには『○○がいつ来る』と家族間で情報共有することも大切です」

オトナンサー編集部

注意を呼び掛ける、奈良市危機管理課の公式ツイッター