NHKで毎週日曜日夜に放映されている韓国時代劇ドラマ『オクニョ 運命の女(人)』。16世紀の朝鮮王朝を舞台にした同作に夢中になっている視聴者たちは多いはずだ。

“尾木ママ”の愛称で知られる教育評論家の尾木直樹氏も、以前、『週刊文春』のコラムで「深夜なのに高視聴率 韓国ドラマ『オクニョ』が待ち遠しいワケ」と題した“オクニョ愛”を論じていた。

主人公オクニョを演じるチン・ヨセンは今や、日本でもすっかり有名な女優にもなった。

(参考記事:【韓国現地情報と秘蔵写真も入手】時代劇『オクニョ』主役チン・セヨンとはどんな人物なのか)

そんな『オクニョ』の中で重要な役割を果たしているのが、主人公オクニョを支えるユン・テウォンだろう。

機転が効いて義のためなら大胆な行動にも打って出るユン・テウォンの姿は頼もしくもあるが、そもそもユン・テウォンを演じる俳優コ・スも韓国芸能界で確かな信頼を得ている俳優だ。

今年でデビュー20年目。韓国のテレビ各局が年末に実施する演技大賞や各種映画祭での受賞歴は数知れず、先日12月1日に韓国ソウルで行われた『MelON Music Award』ではプレゼンターも務めた。

東野圭吾原作の映画にも出演

その出番の前に時間を作ってもらい、『オクニョ』のエピソードや日本について訊いた。

「オクチュンファ(獄中花)は今から2年前の作品ですが、僕にとっては今でも感慨深い作品のひとつです。初めての時代劇ドラマでもありましたから」


(写真提供=SPORTS KOREA)『オクニョ』でユン・テウォン役を演じたコ・ス



『オクチュンファ』とは『オクニョ』の原題。韓国では2016年4月30日11月6日まで放送され、最高視聴率22.6%(ニールセンコリア調べ)を記録したヒット作だが、コ・スにとっても忘れられない作品だったという。

1998年、20歳のときに役者として芸能界デビューしたコ・スは、『ピアノ』(2001年)、『グリーンローズ』(2005年)、『クリスマスには雪が降るの?』(2009年)といったメロドラマで活躍。

ただ、東野圭吾原作の『白夜行』(2009年)や朝鮮戦争時の緊張状態を描いた『高地線』(2011年)、『マルティニークからの祈り』(2013年)などの印象が強く、映画俳優というイメージが強かった。

今年も日本では映画『天命の城』が公開されている。

朝鮮王朝が後金(のちの清)に降伏する屈辱的な歴史を描いた同作は、イ・ビョンホン、キム・ユンソン、パク・ヒスン、パク・ヘイルなど韓国映画界の実力派俳優たちが共演し、音楽も坂本龍一が手掛けるなどスケールの大きな作品だったが、その歴史スペクタクルでも存在感を発揮したコ・スにとって、『オクニョ』は7年ぶりのドラマで、しかも初めての時代劇ドラマだったということは意外だった。

「確かにここ数年はドラマよりも映画の活動のほうが多かったと思います。テレビドラマと映画とでは、媒体が持つ特性が異なりますし、制作過程も異なります。ただ、少々大袈裟な言い方になるかもかもしれませんが、文化芸術を支える根幹になっているという点においては、共通していると思うんです」

『オクニョ』で俳優たちが起こしたケミストリー=

ドラマ『オクニョ』でもそうだ。韓国の歴史ドラマが日本で受け入れられ好評を得ている事実に、文化芸術のチカラを感じるという。

「日本の視聴者のみなさんたちが『オクニョ』も受け入れてくださってありがたく思います。『チャングムの誓い』や『トンイ』など韓国の歴史ドラマがそうだったように、朝鮮王朝時代をモチーフにしながら、“典獄署(チョノクソ)”などこれまで韓国ドラマでは描かれなった題材などが興味深く映ったのかなぁとも思いますし、俳優たちそれぞれの演技がケミストリー(化学反応)を起こし、それがドラマを一層面白くしたのではないかと思います」


(写真提供=BH Entertainment)コ・ス


確かにその通りかもしれない。『オクニョ』では、“典獄署(チョノクソ)”だけではなく“体探人(チェタミン)”などこれまでの韓国歴史ドラマでは扱われなかった人々が取り上げられている。

役者たちのアンサンブルも秀逸。コ・ス演じるユン・テウォンの仇で劇中では憎たらしい悪女チョン・ナンジョン演じるパク・チュミすらも強烈な存在感を放っているのだから不思議だ。

そんな『オクニョ』の人気もあって、12月21日に東京でファンミーティングも行なうというコ・ス。

実に約8年ぶりの来日イベントらしく、そこで日本のファンたちとさまざまな交流を深めるというが、日本での活躍にも注目したい。

(文=慎 武宏)

(写真提供=BH Entertainment)コ・ス