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各界の著名人に“愛してやまないアーティスト”への熱い思いを聞くこの連載。第1回に登場してくれたのは、女優の川口春奈だ。音楽好きとしても知られる彼女だが、ヒップホップに関しては「どちらかと言えば苦手だった」という。そんな川口に、KREVAの音楽に出会ったときの衝撃、そして敬愛するKREVAの魅力についてたっぷり語ってもらった。

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“本物”って感じがしたんです

中学生の頃、当時のマネージャーさんがKREVAさんの大ファンだったんです。彼女はライブも皆勤賞で、「結婚するならKREVAさんみたいな人がいい!」みたいな人で……あるとき海外ロケに行く機会があって、マネージャーさんが滞在先のホテルでKREVAさんのライブDVDやアルバムをひたすら流していて。それが聴けば聴くほど気になったと言うか、耳から抜けなくて、気付いたらぐわあっとハマっていました。

それまでヒップホップとかラップって、ちゃんと聴いたことはないけど「ちょっとよくわかんない」という感じで、どちらかといえば苦手だったかも。その概念を変えてくれたのがKREVAさんでした。さかいゆうさんとのコラボ曲「生まれてきてありがとうfeat.さかいゆう」(2009年発表)を聴いたとき「何これ、めっちゃカッコいい!」って、ラップを聴いて初めて思ったんです。ただ韻を踏んでるだけじゃなくて、KREVAさんの曲ってとにかく歌詞がいいんですよね。強いメッセージ性と、耳に残る独特の言葉のセンスに「こんな歌詞、本当に賢くないと絶対書けないよな」って衝撃を受けました。実際KREVAさんは“慶應ボーイ”ですし。それから「スタート」「アグレッシ部」のように自分自身に言い聞かせるようなストイックな歌詞の曲を聴いて「この人は何か違う!」って……“本物”って感じがしたんです。それから、ファンの人たちに追いつこうと必死になって(笑)、過去のアルバムまでさかのぼって聴くようになりました。

早朝から並んで観たフリーイベント

初めてライブに行ったのは中学3年生のとき、確かアルバム「心臓」のツアーだったと思います。Zepp Tokyoのフロアでもみくちゃになりながらまず思ったのは「よく噛まないな、すごいな」ってこと(笑)。ラップって聞き取りづらいイメージだったけど、KREVAさんは音源もライブも言葉がキレイに聴こえてすっと入ってくるんです。それと、曲フリとかも面白くて。ライブって、曲だけじゃなくアーティストの人となりみたいなものもわかるじゃないですか。ライブの中に「ライミング予備校」ってコーナーを設けてラップについてわかりやすくお客さんに伝えたり、KICK THE CAN CREWのライブでも常に中心になってみんなを笑わせたり。そういう姿を見て親近感が湧いたし、人柄も含めてますます好きになっていきました。「愛・自分博」のライブDVDなんか擦り切れるほど観ましたよ。「愛・地球博」のパロディで、KREVAさんのお父さんがテープカットをする場面があって(笑)。全力で楽しませる姿勢がすごいですよね。

マネージャーさんの影響ですっかりファンになってから、私も周りの人にたくさんオススメしました。高校のクラスメイトだった俳優仲間に、学校で「とりあえず聴いてみな」ってKREVAさんのCDを貸したら私以上にハマっちゃって。学生時代、KREVAさんが出演するフリーイベントを観に行ったこともあります。「早く行って並ばないと一番前で観れない!」って。ちなみにその友達はKREVAさんと地元が一緒だったみたいで、今ではたまに飲みに連れて行ってもらったりするほど仲良くしていただいているようで。私よりも近い関係になっちゃいましたね(笑)。私も何度かKREVAさんとお仕事をご一緒していますが、いまだにライブ後の挨拶とかは行けなくて。緊張しちゃって、何をしゃべればいいのかわからないんです。いちファンとしてはライブが観られたらそれで満足なので、終演後はスーッて帰ります(笑)。

念願の共演を果たして

2013年にドラマ「金田一少年の事件簿」の撮影で香港に行ったとき、忘れられない出来事が起きました。偶然にもKREVAさんのアジアツアーの時期と重なっていて、同じKREVAさん好きの共演者と「まあ会えることはないだろうけど、同じ時期に香港にいるね」って話していたんです。そしたら、帰国の空港でKREVAさんにとても似ている人がいて。「え、まさか」と思いつつお声がけしたらやっぱりご本人で……あれは本当に驚きました。実はそれが初対面だったんですけど、とても優しく接してくださいました。その後KREVAさんが「金田一」にゲスト出演してくださったときには何か不思議な縁を感じましたね。ちょうどKREVAさんはデビュー10周年の節目のタイミングで、いろいろなことをやろうと思っていたときにドラマ出演のオファーがあったそうなんです。空港での出来事をKREVAさんも覚えていてくれて、うれしかったなあ。芝居での絡みは少なかったんですけど、共演者たちと一緒に、自分たちの撮影がない日も現場に行ってKREVAさんのお芝居を見てました。KREVAさんに出ていただけるなら、ぜひまたドラマなどで一緒にお仕事したいです。

その頃から俳優業にも挑戦されて、今や映画や舞台にも出演されていますよね。KREVAさんが2011年に始めた音楽劇「最高はひとつじゃない」も、もちろん観劇しています。ミュージカルなのでライブに似た雰囲気もありつつ、そこにお芝居の要素が加わると「ただただ絵になるなあ」って。「金田一」のときもそうだったけど、間の使い方が上手でオーラがあるんです。近年はお芝居以外にも、プロデュース業のような裏方的な分野でも活躍されてるし、マルチですよね……ただただすごいなって。同じ表現者とはいえフィールドが異なるので、私にとってはすべてが未知の領域なんです。音作り1つにしても「どこからアイデアが湧くんだろう」って、本当に計り知れないし、プレッシャーも抱えているんだろうなって思うこともあります。

昔のMCバトルの映像を観て「基準」を聴いて……無限ループです

近年も単独ライブはもちろん、行けるときはKREVAさんが出演する音楽フェスにも行って、ちゃんと追っかけてます。KICK THE CAN CREWのライブにも、活動再開後からちょくちょく行かせていただいています。KREVAさんって、作品ごとにビジュアルとかファッションが大きく変わるじゃないですか。それも面白いし、見ていて飽きないんですよね。楽曲についても同じで、新作が出るたびにアプローチが変わるから「どういう意図があってこのこの曲調なんだろう」と考察するのが楽しくて。最新アルバム「存在感」も面白い曲ばかりでした。楽曲自体はカッコいいんだけど歌詞が面白い「健康」とか、そのギャップが好きですね。個人的には、やっぱりがっつりラップしてる曲が好き。ライブで聴く「基準」は最高です! 歌詞がスクリーンにバーッと映って、スモークの中から出てきたKREVAさんがサングラスを取って歌い始めるんですけど、それが最高にカッコいいんです。「基準」を聴いたあと、KREVAさんが出ていた昔のMCバトルとかフリースタイルの映像を動画サイトで観て「この頃から変わってない! やっぱりカッコいい!」ってなって、もう1回「基準」に戻ったりして……無限ループですね(笑)。

三浦大知さんをはじめ、KREVAさんを入り口にして好きになったアーティストもたくさんいます。インタビューとかファンクラブ「KFC」の会報でKREVAさんが「今このアーティストがカッコいい」と発信している人は必ずチェックしますし。「KFC」の会報はオススメですよ。最近何があったとか、細かく書いてあるので。単純に好きな人だから、一挙一動が気になっちゃうんですよね。実は、街中でプライベートのKREVAさんをお見かけしたこともあります。本当にカッコよかった……! もう、泣きそうで声もかけられなかったです。頭がよくて作る音楽もカッコよくて憧れの人です!

プロフィール

1995年2月10日長崎県生まれ。雑誌「nicola」の2007年度モデルオーディションでグランプリを受賞し、専属モデルとしてデビュー。2009年に「東京DOGS」でドラマ初出演を果たす。2012年に「桜蘭高校ホスト部」で映画初主演を飾る。主な出演ドラマに「放課後はミステリーとともに」「GTO」「夫のカノジョ」「探偵の探偵」、出演映画に「好きっていいなよ。」「幕末高校生」「クリーピー 偽りの隣人」「一週間フレンズ。」など。2019年1月より放送される日本テレビ系ドラマ「イノセンス-冤罪弁護士-」に出演。また2019年に主演映画「九月の恋と出会うまで」の公開を控えている。

取材・文・構成 / 大橋千夏(音楽ナタリー編集部) 撮影 / moco.(kilioffice)