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 日本も都心部の住宅費は高いと言われている。狭いアパートでも駅に近いと高額な家賃となっているが、香港では更に深刻な問題を抱えているという。

 人口過密都市であることはもちろん、この都市に流入する膨大なマネーのおかげで、住宅費が高騰しているのである。

 もし不動産の持ち主ならば大喜びだろう。激狭のアパートを作っても借主はどんどん来るし、狭いスペースにテナントをぎゅうぎゅう詰めにしても、景気のいい香港ではきっと誰かが購入してくれる。

 その結果香港の最新の都市型アパートはどんどん狭くなっていった。
 当然のことながら借主から強い非難を受けている。

 家賃が異様に高いこともさながら、その広さが車一台分の駐車スペース程度しかないのだ。

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狭くて高い。香港の住宅事情

 こういった非常に狭いアパートはナノアパート、もしくはモスキートユニットと呼ばれている。

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ナノアパートは買い手市場
価格崩壊の兆しが見え、ナノアパートに「ノー」香港の慢性的な住宅不足の解決策として一気に脚光を浴びたナノアパートであるが、同じように急激に廃れるかもしれない。

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2018年、寝室2部屋のアパートの平均家賃/月
香港 42.3万円
ニューヨーク 32.3万円
パリ 39.5万円
ロンドン 27.3万円
シンガポール 22.3万円
東京 19.7万円
上海 15.2万円
ベルリン 13.1万円
マドリード 13万円
モスクワ 11.3万円
リオデジャネイロ 8.7万円
ニューデリー 3.9万円

 こうした法外な家賃について一部の香港人は、そこが世界で最も目覚ましい発展を遂げている都市であり、手足を広げた程度のスペースに家賃を払ってもらうのも致し方ない、と正当化している。

 一方で、部屋の狭さだけでなく、住宅問題や人口密度の高さによる健康被害やリスクなどについても不満を持つ人々もいる。

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香港に住んで7年、狭い部屋の問題の1つは換気が悪いこと。蒸し暑い部屋での目覚めが体にいいはずない。窓を開けるには空気が悪すぎるし、おかげですぐにカビる。香港の住宅事情は改善するべきだ。

年収1千万円を超えても親にお金を借りなければ住めない

 この街は羽振りがよく、人々はかなりの給料を稼いでいる。それでも、自力で住む場所を手に入れる余裕がない。

 金融業界で働くある若者は、住居のあまりの高さに両親からお金を借りねばならなかった。それでようやく購入した部屋は狭すぎて料理すらままならない。

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金融業界の連中すらちっぽけなアパートでぎゅうぎゅう詰め。月給は86万円。なのに家を買うために親に金を借りた。

 この状況に嫌気がさして、高すぎる家賃を節約し、同時に収入をえるために、家をシェアするような人もいる。

 7万5000円程度でルームメイトを募集したところ若い教師の借り手が見つかった。プライベートなスペースとして寝室はあるが、キッチンとリビングは共有スペースだ。

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キッチンとシャワーとリビングは、他人とシェアしなきゃいけない。

部屋の広さはニューヨークの車一台分の駐車スペース

 以下のインフォグラフィックは香港の部屋の狭さを解説したものだ。

 ご覧のとおり、部屋の広さはニューヨークの車一台分の駐車スペースとさして変わらない。なのに、価格は4000万~5500万円もする。

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 あまりに狭いために、ナノアパートで暮らすには、折りたたみ式ベッドや多目的家具のような専用の家具が必要になる。

 いろいろ工夫するのが好きなキャンプの愛好家など、こうした狭さがたまらないと感じる人もいるかもしれないが、大多数の人にとってはストレスの種でしかない。


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 海外掲示板redditでも香港の住宅の狭さは話題になっているようで、こんな画像が投稿されていた。料理の最初の準備はトイレの蓋を閉めることだろう。

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ナノアパートはまだましなほう?

 こうした”ナノアパート”などまだマシな方だ。余裕のない人たちは、こうした部屋をさらに細かく区分した”オリ”に月3万円以上の家賃を支払ってどうにか生活している。これが香港の住宅事情だ。

 bethというツイッターユーザーは、資金のある開発業者が貴重な土地をやたらと高く買って不動産価格を高騰させているために、中産階級ですら支払う余裕がないという香港の状況について説明している。

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天文学的に急騰する家賃を支払うため、香港には1室を20に区切った”オリ”に3万円の家賃を支払う人が大勢いる。

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香港は非常に小さい自治区。でもビジネスにはうってつけの都会だから、不動産への需要は非常に高い。

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不動産を取得するために、政府が競売にかけた空き地に開発業者が入札する。需要が旺盛なうえに、入札する開発業者は資金のある中国本土の業者だから、空き地には22億ドル(2500億円)もの価格がついたりする。

こうした費用を回収するために、不動産業者は香港の平均収入の20倍近い価格を家につける。つまり年収が500万円あったとすれば、その人が狙う家は1億円にもなるということだ。

唯一かつ実行可能な解決策は、規制と代替地利用計画の組み合わせだが、香港政府にはこの危機を維持するようなインセンティブが働いている。

香港は世界でももっとも自由な市場経済と評価されているが、政府が市場に介入しようとすれば、その評判を揺るがすことになる(最低賃金が導入されたときがいい例だ)。

この地位を失うということは、香港の富の源泉である国際的なビジネスからの関心も失うということだ。そういうわけで、住宅危機への対策はほとんどなされない。

この国の貧困はそのままに、人口700万人の中から100万人の億万長者が生まれた。だが、残り600万人の暮らしは? きっとオリの中だ。

 オリの中で暮らすという気の毒な状況の中、ナノアパートに付けられた高額な家賃を拒む動きが現れたのはいい兆候だろう。

 だが、価格の下がった部屋をかたっぱしから買い取って、また値段を上げて貸し出すような業者もいるだろうと懸念されている。

・激しく広がる貧富の差、香港の闇。にわとり小屋のような狭いアパートに住む貧困層の人々 : カラパイア

References:.distractify/ written by hiroching / edited by parumo

全文をカラパイアで読む:
http://karapaia.com/archives/52268720.html
 

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